異世界で聖女活動しています。〜シスコン聖女の奮闘記〜

文字の大きさ
上 下
90 / 193

障壁の向こう(エドワード)

しおりを挟む
父である皇帝。呼び出されたのは父の個人的な部屋であった。
重要な内容であるから、謁見室とか父の…そう、皇帝陛下の執務室かと思いきやだ。

ドアをノックし、入室許可をもらい兄達と入る。
侍従達は廊下で待機だ。
皇族であるから、自分達の家である城内であっても、皇族住居スペースまでついてくる。
何かあればいけないからな。

ついて来るのは、侍従であり護衛の者達だ。
自分にもついているが、兄達にもついている。
特に、ヒト族であるキャラハンには自分達よりも多めだ。
私とオーリスには各一人。キャラハンには二人ついていた。

室内に入ると、のほほんと植物の手入れをしている父、皇帝陛下がいた。

片手にはジョロを持って、植物に語りかけながら水やりをしていたようだ。

「おー、よく来たな。それと、エドワードお帰り。神殿はどうだった?」
「ただいま戻りました。それについて報告とご相談が。」
「親子で個人スペースの部屋なんだから、いつも通りで良いよ。」

そう言って、水やりを一旦やめ、テーブルに着くように促された。

父自らお茶を入れられる。
皇帝で、多くの者達に傅かれ、色々と尽くされる身であるが、実際の父は何でも自分ででき、時間があれば自分でしたがるのだ。
側付きである専属執事はその事を理解して、必要な事だけ手伝いいつも見守っている。
このような個人スペースの場合だけだがな…


「ありがとうございます。相変わらず、父上の茶はいい香りがして美味しい。」
「そうかそうか…これは今年採れた茶葉だ。我が国のな…で、報告と相談とは?」

父は嬉しそうに微笑みながら、そう促してきた。

微笑んでいても、この父は鋭くよく言う腹黒い性格もしている。
見た目だけで行動してはいけない人物だ。

「実は…」

そう切り出して、兄達に告げた内容をそのまま伝えた。
障壁の件と今後巡礼メンバーと対応しなければいけない『扉』の件だ。
魔塔の内部を一掃しようかと考えている事も告げた。

「なるほど。障壁の件はすぐさま対応が必要だな。魔塔の件もだが…オズワルド。」
「はい。」

父の護衛件専属執事筆頭だ。
スラットした美丈夫であるが、ソードマスターでもある。

「魔塔の一掃をしてもらえるか?どうもネズミが多いようだ。」
「魔塔だけではよろしいのですか?他の巣穴も掃除してきますが?」
「あぁ、頼む。あくまでネズミだけだ。そうだな…ついでにネコでも放っておいてくれるか?」

そう言いながら、クスッと笑っていた。

父が魔塔の方を片付けてくれるなら、自分達は障壁の方を重点的に対応したらいいだろう。

「障壁の方は任せよう。好きなモノを使えば良い。だが、気をつけるんだよ。」
「はい、ありがとうございます。」

「ふふっ…で、君の愛しいものは、私の娘になる者にはいつ会わせてもらえるんだい?」
「私達も紹介はされてませんね。」
「そうだな。巡礼メンバーと聖女様としての紹介はあったが、愛しい者としての紹介はまだだったな。」

そう言いながら、兄達は茶化してきた。
こうなると、もう適当に相手をするしかない。
少し行儀が悪いが、お茶を啜るように飲みながら、応じていった。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

踏み台(王女)にも事情はある

mios
恋愛
戒律の厳しい修道院に王女が送られた。 聖女ビアンカに魔物をけしかけた罪で投獄され、処刑を免れた結果のことだ。 王女が居なくなって平和になった筈、なのだがそれから何故か原因不明の不調が蔓延し始めて……原因究明の為、王女の元婚約者が調査に乗り出した。

番から逃げる事にしました

みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。 前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。 彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。 ❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。 ❋独自設定有りです。 ❋他視点の話もあります。 ❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた

兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

処理中です...