異世界で聖女活動しています。〜シスコン聖女の奮闘記〜

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聖女巡礼の旅

聖地巡礼

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浄化巡礼もかなり進んで、もう後わずかだ。
ここまで結構大変だった。

浄化していくごとに魔獣が凶暴化していくように感じたし、被害も相当なものだった。
村や町が地図から消えた所も実際ある。
本当、冗談かと思うぐらいに潔く綺麗さっぱり消えた場所もあれば、再建不能な状態までになった場所などだ。
結果として、浄化しても、しばらくは…数十年単位で人が住めそうにない感じだ。

そして、ついに、目の前に見えるもの。

扉と言っていたから、一瞬普通のドアを想像していた。
間違いではないんだけど…でも、全然違う。


何と言うか…重装間?ゴテゴテしい??
そう、ドアの前。門扉を司るアーチ上の前に石像。
そう、ガーゴイルが二体守るように鎮座していた。
いかにもって感じの、厳つい造りの門だ。

両側に引く感じの引き戸なのか、中央に僅かだが隙間が見えて、そこから奥が少しだけ見えている?覗けている気がする。
暗い空間の歪みのようなドロドロとした感じだ。

「あれが例の扉です。この四、五日前から隙間が見え出しまして、時には大きな獣の咆哮が聞こえたり、鈍い光が見えたりしております。」

そう淡々と述べるのは、発見された当初から監視目的で駐屯していた騎士団の団長と副団長だった。

リシャール達は、あらかじめ報告は受けていたようだが、実物を見て驚愕していた。
このメンバーで一番強いとされている魔術師・魔導士のエドワードも、過去の情報などを駆使してどうするか考えあぐねていた。

魔素溜まりなら、皆んなが守ってくれた中、私が手を入れて浄化の力で全てうまくいっていたが、この扉の場合は?
あの見えない扉の中に私の手を入れる?
噛みつかれたらどうしよう…
もしくは引き摺り込まれたら…

「過去の聖女様がこの扉に対してどう浄化したとかありますか?」

今までも、過去の文献を開いた時間に読み解いてはいたけれど…
詳しい資料らしいのは見てない気がする。
うん、記憶にない。

「神より賜れし力でとはありますが…神からの啓示とかは?」

はて?

こてりと首を傾げてみる。
あの時見たのが啓示?
でも、詳しい事は…

「取り敢えずは、この周辺の魔獣討伐と魔素溜まりの浄化を重点的に行いましょう」



そう言って、取り敢えずの計画は決定した。

今回止めてもらっている場所は王城。
魔人の国、ディール帝国の王城内に設けられている貴賓室だ。
メンバーであり、魔術師・魔導士のエドワード以外はこの貴賓室を各部屋一人づつで貸しきっていた。
エドワードは、この『魔人の国』ディール帝国第三皇子。自室が勿論あるから今は別行動と言ってもいいだろう。
父親や兄弟達と報告や相談などを行っていると思われた。

いつも側にいて、彼なりに気さくに接してくていたから、ついつい忘れそうになる。
そういえば、メンバーの人達も、何気に高位身分持ちだった。

食事の後、そっと中庭に抜け出す。
空には二つの月が登っていた。
夜風にあたりながら、今までの事を思い返す。
この世界にやって来た当時の事から、妹との事。
浄化で旅を続けて来ての出来事などだ。

「後もう少しなんだけどな…どうしたら良いんだろうか…」

噴水の近くまで歩いて来たようだ。
月が水面に映っている。
そして、不安そうな自分の顔…

あれからいく日も過ぎていき、髪も伸びてしまっている。
手入れはしてくれていたけれどね…

顔も、家庭的に問題はあったとしても学生であった時と違って見えた。
それだけで、時間の経過が感じられる。

噴水の淵に腰掛けて上を見上げる。
風が通り過ぎるように吹き、どこかで植っていた植物の花びらであろうものがふわっと舞っていた。

「サヤカ、夜風に当たると風邪をひきますよ。」

そう言って、暖かく感じられるものを肩にかけられた。
現れたのは、エドワードだった。
いつもの服装ではなく、夜ということもあるが、この国の服に身を包み、私の肩には彼が羽織っていただろう上着がかけられた。
そっと摘んで身を包み込むようにする。
温かく、ほのかに彼の香りがして安心した。

「不安ですか?」
「うん。どうしたら良いのか良くわからないの。あの時見たのは…エドワードも見たと思うんだけど、情報が不十分な感じで…」
「そうですね…あす、少し教会に行きませんか?私と一緒に。もしかしたら何か分かるかもしれませんから…」
「教会?」
「はい。我が国にも過去の聖女関連の協会がいくつか点在しています。その中の一つが近くにありますから。」

そう言って、『ついでに我が国も観光として見てまわりましょう。』と言ってくれた。
私が余りにも緊張してしまっているからだろう。
そんな悠長な時間を取ることは出来ないであろうに、あえてその時間を捻出してくれたようだ。

素直に頷き、そのまま部屋まで送りとどけてくれた。

「それでは、明日。」

そう言って、額に優しいキスを贈られた。

「おやすみなさい。」

そう言って別れ、そのまま眠りについた。

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