異世界で聖女活動しています。〜シスコン聖女の奮闘記〜

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聖女巡礼の旅

聖女巡礼(エドワード)

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部屋を出て、廊下を歩きながら借りている自分の部屋へと向かう。その間彼女との楽しい時間を思い返していた。
時々張り詰めた表情をする彼女。この世界に渡って来た時から一度も彼女の心からの笑顔は見た事が無かった。
一緒に渡って来た女性。双子の妹と引き離された時は特に表情が硬かった。
たまに咲いた花々を眺めて微笑む時もあったが、心を癒やされるほどの表情を見せる事はなかったんだ。
聖女として皆に膝まずかれ、何かと気にされ、世話を受けても、心を開いてくれているようには決して見えなかった。
姉妹はこの世界に、この世界の住民の犠牲者と言っても良い。だからと言って…
やっと出会った自分の愛しい人。
側にいて見守り、時には魔法を行使して守って来たが…
今までは、彼女の本当の意味で側にいる実感がなかった。
何か…そう、心の壁と言うものだろう。一線を引かれていたんだ。それが、さっきの笑顔。

この世界では精霊や妖精も当たり前にいるし、魔物や魔獣といった害するものも存在する。昔訪れた聖女が『ファンタジーの世界』だと言って喜んでいたとされている。自分がいた世界では有り得ないものや、出来事が多く存在していると。特に魔法は驚きだとも言っていたらしい。
彼女に教えた魔法。それを操る彼女の姿が何とも微笑ましかった。
きっと一時的だが妹の事も、不安も忘れる事が出来たのだろう。

「また、教える機会が有れば、色々と教えて喜ばしたいな…」

シーンと静まりかえった廊下。ギィーツと音を立ててドアを開ける。
そのまま衣服を、魔法を操り脱ぎながら片付けていく。
そして、歩きながら浴室に行き、浴槽に湯を張って体を沈めた。

巡礼の旅とは言え、メンバーだけで移動してはいない。護衛の騎士や世話をする侍女や侍従達も少なからずいる。調理人もだ。聖女様が困らないようにとの配慮が主だが、他国から来た者が選ばれていると言う事もあるのだろう。この国の皇子も随行してるしな。
自分は魔法を使って自分の世話は出来るからと、侍従達の世話は全て断っていた。

「はぁ~~~~」

浴室内に溜息が響く。
筋肉がほぐれていく感じがして、心のしこりも…

さて、どうするべきか…
この地域の浄化が終われば、皆んなに上手く言ってシュタルク領に寄って行けるように手配すべきか…
そうすれば、妹に会えるだろう。
だが、危険性は高い。
特にその妹君にだ。
なら、危険回避で次の予定地にそのまま行くべきか…

あの大馬鹿者が、要らぬ行動をするから、こう色々と考えねばならないのか!!
人としてしてはいけないとされる、非人道的な事を平気で行う愚か者達。
これを気に粛清を考え、情報をかき集めさせているのだが、奴らとて馬鹿ではない。
我が国の魔法に関して多いに影響力のある機関。そう、魔塔内部をどうしていくかだ。

魔塔の住民の全てが愚かではない。
研究が好きすぎて、普通では考えられない事を平気で考え行動する一部の大馬鹿者がいると言うだけだ。

ザバッと音をたてながら湯船から立ち上がり、栓を抜き排水しながら外に出る。
そして自分に浄化と風と火の魔法をうまく組み合わせて体全体を乾かした。
湯船に浸かりたかったのは、気分転換のためだ。体を洗う目的ではない。洗っても良いが、今の気分は浄化魔法を自分にかければ十分だった。

真っ白で、ふわふわの生地のローブに身を包み、浴室から出る。
ソファーに向かい、グラスと酒の入った瓶をテーブルの上に置いた。

グラスに氷魔法で出した氷を入れ、酒を注ぐ。
この国で作られた特産品。
そのまま原液で飲んでも、氷で薄めても美味しく飲める逸品だ。
芳醇な香を楽しみ一口味わうと、喉越しが自分の好みに合っていた。
カランとグラスの中の氷の音。

窓から見えるのは、いつもと変わらない夜空だった。
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