異世界で聖女活動しています。〜シスコン聖女の奮闘記〜

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聖女巡礼の旅

聖女巡礼(フェリックス•ロザリアン)

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弟は、儀式参加で魔力枯渇を引き起こし、倒れたと聞いた。
国を出たとはいえ、この国の皇子の一人。
部屋は城内に残してあった。
医師を呼び、治療し落ち着くと、父上に『聖女の側で同行し観察させてもらいたい。後、もう現れた異世界人を魔塔に研究材料として連れて行きたい』と申し出てきた。
『聖女の力』と、『異世界人』の能力と生態を研究するべきだと。
今後の人類において必要なことだと熱弁してきた。

言いたい事もわかる。今後の人類において必要な能力であるなら解明したいというその気持ちなど。だが、神から告げられ授けられた儀式で召喚したとはいえ、この世界においての大罪行為の一つとも言える『拉致』を、この世界の者達が必要だからと行ったのだ。
彼女達に非はない。こちらの都合だ。
それを、一人は聖女であるから観察で、もう一人は聖女でなく転移者。異世界人だから、研究材料として寄越せとは…

許せるはずがない!!
しかも、もう一つの問題がある。
聖女でないと判定された者は、あの『竜人の国』アステード王国公爵家次期当主の『番』と判明している。
下手したら、国家間の紛争にもなり得る。それは大いに困る。
瘴気問題で、扉の脅威もあるというのに…
それと、弟以外から無理難題で求められても困る。
あの時、友人に頼んで秘薬を譲り受け、その薬を使用して姿を変え、隠匿した。
この件に関しては、彼女には申し訳なかったが、正解だった。
それに、彼女の側には番である彼がいる。

そこまでの詳しい情報は今は私の胸にしまっておく必要があるが…

弟の訴えをあらゆる言葉を駆使して叩き伏せ、父に上申した。
父も私の意見に同意し、弟の願いは却下されたが…

だがあの執着だ。諦めきれず、探し求める可能性もある。
注意が必要だと、実の弟、巡礼メンバーにも選ばれているリシャール・ロザリアンに伝え頼んでおいた。
彼は信用できる同母腹の弟。同じく同行メンバーに選ばれた、秘薬を譲ってくれた友人。そして、彼女を隠すことに協力してくれている友人二人と、彼女の護衛やその他でアステード王国からあの儀式の時にも参加された王弟殿下ジャディール•アステードに連絡した。彼女の番であるあの男。アルホンス•セイクリオンは王弟殿下の側近でもあるからだ。彼からアルホンス殿に伝えてくれるはずだ。

どれも極秘にし、伝える際にはどれにも特殊結界を張っておいた。
後は…

自分ができる全てを使うのみ。
国政も担わなくてはいけない。

夜空に浮かぶ二つの月。

「どうかあの者達を御守りください。」

月を眺めながら、神に祈った。


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