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聖女巡礼の旅
聖女巡礼(エドワード)
しおりを挟む彼女の部屋に行き、静かにノックする。
ドアを開けたのは、付き添っているエレンだった。
彼女の状態が気になると伝えると、何かを悟ったエレンは、笑顔で迎え入れてくれた。
他のメンバーはいない。
入室も許していなかったと言っていた。
理由は教えてもらえなかったが…理解はできる。
彼女が横たわる側に椅子が静かに置かれ、そこに座る。
そっと包み込むように手を握りしめ、魔力量の確認をしながら調節して流し込む。
ここに運び込んだ時よりは顔色も良くなっていたが…
まだ不足気味だ…
心配そうに見守るエレンが、呟くように声をかけて来た。
「準備していたポーションでは不十分だったようです。リシャール様が皇太子殿下に報告され、特別なポーションを送ってこられるとか。」
あのポーションでは不十分…
特殊な…
もしかしたら、もう一人の、あの女性が関係したものを送ってくるのでは…
この世界に彼女と一緒に現れ、別れさせられた仲の良さそうにしていた女性。
確かユウリ。
他の者達に知られるわけにはいかないだろうが、今回特別にポーションだけ…
なら、それの情報は特に注意が必要だろう。
ヤツが興味を持てば…
エレンに魔法陣を展開させて、『更なる強固な物にする』と伝えて多種多重に展開する。
認められた者しか入ることのないものを…
確認した後、エレンは少し席を外した。
その隙に伝達用の魔法陣が描かれた紙を二枚取り出して、吹き込む。
自分が調べたきた事。
そう、証拠を提示する事はできないが、ヤツが行った事や今後の予想と注意。この世界に現れた聖女ともう一人の女性の身に迫る危険性を吹き込み消えた。
多分もう届いただろう。
きっと対処してくれるはずだ。
彼ら二人なら…
彼女を危険性に巻き込まないようにと……
エレンが戻って来た時、サヤカの睫毛が揺れた。
目が覚めるだろう…
魔力は…もう大丈夫だ。
エレンが持って来たものから感じる…
あれで十分以上に回復できると確信した。
目が覚めて、エレンの方を見た彼女。
私の方を先に見て欲しかった…
私がまだ手を握っているのに気がつき、頬が紅潮している。
可愛い。愛しい…
にやけそうになる顔に力を込めて、平静さを保つよう努力して…
「大丈夫か?広範囲だったせいか、魔力が枯渇寸前だったようだ」
それだけ言って、手をそっと離した。
もっと触れていたいが…
エレンの視線が厳しい…
エレンが彼女にあの特別なポーションの瓶を渡した。
「飲んでください」
彼女は受け取り、いつもと同じように飲み出したが…瓶の中身がいつもと違う事に気がついたのだろう。
見える者には、彼女の全身に温かい光で包み込むように行き渡っている。
不思議な感覚だ…
これが彼女。ユウリの力なのだろう。
良い事なのだが、ヤツに気づかれると…
なんとも言えない…
「これは少し特殊なポーションです。ここだけの秘密にしておいてください」
そう言って、エレンが瓶を受け取った。
と言う事は、やはりエレンも知っているのだろうか。
彼女の種族的なものと、彼女自身の力で…
これで大丈夫だろう。
一旦退出した方がいい。
ゆっくり立ち上がり、出て行こうとしたら
「流石『魔人の国』ディール帝国最高魔術師である魔導士のエドワード・ディール様ですね。」
それだけ言って意味深に微笑まれた。
やはり、私と彼女の事は知っているのか…
パタンと静かに戸を閉めて、他の者達がいるであろう場所に向かった。
少し耳が熱い気もするが…
落ち着くだろう…
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