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幼女、気が付く
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え…?は…?
わたしは自分の身体をぺたぺた触ってみる。
胸は、ペタン、腕や脚は細くてまだ小さい。
真っ白で貧弱な身体は、まるで子供だ。
え、…子供?
私は大急ぎで近くにあった鏡に駆け寄る。
木製の枠に綺麗な彫刻が施された、美しい鏡だ。
そこには可愛らしい姿をした、五歳くらいの少女が立っていた。
大きな瞳、きれいな眉、すっと通った鼻筋。
形の整った唇。美しい輪郭…、真っ白な肌。
髪はふんわりとした色素の薄い金髪だ。
「鏡よ、鏡、世界で一番美しいのはだあれ?」
この姿だったらこう呟いても鏡が答えてくれそうなほど美しい。
鏡も白雪姫に出てきそうな高そうな鏡。
本当に答えてくれそうだ。
「もちろん一番美しいのはあなたです。」
そう後ろからかけられた声にびっくりして飛び上がる。
振り返ると白雪姫にも嫉妬されそうな美しい少年がドアの前に立っていた。
「ユリウスお兄様!!」
わたしは走ってユリウスお兄様に抱きついた。
そう、わたしはこの人を知っている。
さっき気が付いた筈なのに、何故か知っているのだ。
五歳まで過ごした記憶がしっかりと脳に刻まれていた。
「ふふ。こんなところで白雪姫ごっこでもしてたの?」
からかうように笑いながらお兄様が聞いてくる。
そんな表情もとても綺麗だ。
「ちがうの!だって…べつに…」
真っ赤になった顔を隠すためにお兄様の服に顔をうずめながらどうにかこうにか弁解しようとするけどなにも思い付かない。
事実だったし…。
「全然弁解になってないけど?」
ユリウスお兄様はさらに口調に笑いを含めながら尋ねてくる。
恥ずかしさで顔がさらに赤くなった。
お兄様のばか!
そう思いながら上目遣いでお兄様を盗み見ると、ニヤニヤしているお兄様と目があった。
「~!!違うったら違うもん!!お兄様なんてもう嫌い!!」
わたしは恥ずかしさで咄嗟にそう叫んでお兄様から離れると、同じ階の自分の部屋に走って鍵を閉めた。
お兄様のばかばかばか!察してくれたっていいのに…!!
?
自分のよくわからない感情、状況に、一回息をついて考える。
今のわたしは、エミリー・キャロライン・セシリア・サマーセット…。
くそ長い名前だ。
サマーセット家ヘレフォード子爵の長女、らしい。
今までの記憶がそう言っている。
ユリウスお兄様という呼び方も、さっきの態度も今までに何度もあったかのような違和感無く出てきた反応だった。
…実際に何回もあったみたい。
エミリーにとってお兄様は、安心して我が儘を言える、大事な人なのだ。
…待って、ユリウスお兄様…?サマーセット家…?ヘレフォード子爵……?
なんだか聞いたことあるような…。
まさか…そんな、ね…。
気のせいだろう。
「ねえ、おねえさま、なにしてるの?鍵あけてよ。」
そんなことを考えていると、ドアの外から声がかけられた。
「メアリー…。今開けるわ。」
ドアの外にいたのはエミリーを少し幼くしたような負けず劣らずの美しい少女だった。
妹だ。
私は自分の認識が揺らいでいくようなショックを感じた。
彼女は。
メアリー・キャロライン・アン・サマセット。
サマセット家の次女。
これで明らかになった。
ここは異世界で、前世にプレイしたことのある乙女ゲーム、「天界の街」の世界だと。
わたしは自分の身体をぺたぺた触ってみる。
胸は、ペタン、腕や脚は細くてまだ小さい。
真っ白で貧弱な身体は、まるで子供だ。
え、…子供?
私は大急ぎで近くにあった鏡に駆け寄る。
木製の枠に綺麗な彫刻が施された、美しい鏡だ。
そこには可愛らしい姿をした、五歳くらいの少女が立っていた。
大きな瞳、きれいな眉、すっと通った鼻筋。
形の整った唇。美しい輪郭…、真っ白な肌。
髪はふんわりとした色素の薄い金髪だ。
「鏡よ、鏡、世界で一番美しいのはだあれ?」
この姿だったらこう呟いても鏡が答えてくれそうなほど美しい。
鏡も白雪姫に出てきそうな高そうな鏡。
本当に答えてくれそうだ。
「もちろん一番美しいのはあなたです。」
そう後ろからかけられた声にびっくりして飛び上がる。
振り返ると白雪姫にも嫉妬されそうな美しい少年がドアの前に立っていた。
「ユリウスお兄様!!」
わたしは走ってユリウスお兄様に抱きついた。
そう、わたしはこの人を知っている。
さっき気が付いた筈なのに、何故か知っているのだ。
五歳まで過ごした記憶がしっかりと脳に刻まれていた。
「ふふ。こんなところで白雪姫ごっこでもしてたの?」
からかうように笑いながらお兄様が聞いてくる。
そんな表情もとても綺麗だ。
「ちがうの!だって…べつに…」
真っ赤になった顔を隠すためにお兄様の服に顔をうずめながらどうにかこうにか弁解しようとするけどなにも思い付かない。
事実だったし…。
「全然弁解になってないけど?」
ユリウスお兄様はさらに口調に笑いを含めながら尋ねてくる。
恥ずかしさで顔がさらに赤くなった。
お兄様のばか!
そう思いながら上目遣いでお兄様を盗み見ると、ニヤニヤしているお兄様と目があった。
「~!!違うったら違うもん!!お兄様なんてもう嫌い!!」
わたしは恥ずかしさで咄嗟にそう叫んでお兄様から離れると、同じ階の自分の部屋に走って鍵を閉めた。
お兄様のばかばかばか!察してくれたっていいのに…!!
?
自分のよくわからない感情、状況に、一回息をついて考える。
今のわたしは、エミリー・キャロライン・セシリア・サマーセット…。
くそ長い名前だ。
サマーセット家ヘレフォード子爵の長女、らしい。
今までの記憶がそう言っている。
ユリウスお兄様という呼び方も、さっきの態度も今までに何度もあったかのような違和感無く出てきた反応だった。
…実際に何回もあったみたい。
エミリーにとってお兄様は、安心して我が儘を言える、大事な人なのだ。
…待って、ユリウスお兄様…?サマーセット家…?ヘレフォード子爵……?
なんだか聞いたことあるような…。
まさか…そんな、ね…。
気のせいだろう。
「ねえ、おねえさま、なにしてるの?鍵あけてよ。」
そんなことを考えていると、ドアの外から声がかけられた。
「メアリー…。今開けるわ。」
ドアの外にいたのはエミリーを少し幼くしたような負けず劣らずの美しい少女だった。
妹だ。
私は自分の認識が揺らいでいくようなショックを感じた。
彼女は。
メアリー・キャロライン・アン・サマセット。
サマセット家の次女。
これで明らかになった。
ここは異世界で、前世にプレイしたことのある乙女ゲーム、「天界の街」の世界だと。
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