55 / 69
第52話 陸のドラゴン 海の龍
しおりを挟む
ボルツール公国は、ケインたちが住むステラ王国の北東側に位置し、大きな湖の畔に都が栄えた国。
ステラ王国の王妃の父方の遠縁に、このボルツール公国の歴代の当主がおり、それが縁でステラ王国との交易を続けている。
四方を山に囲まれ、小さな国内には大小合わせて20近い湖が存在し、その一つ一つに特徴を兼ね備えている。
その一つに、雷を放つ動物が春の終わりに一斉に雷を落とす湖があり、ここは塩が採れる場所でもある。海から遠く離れた内陸部で、海水と同じ成分を含む水が存在することは、ボルツール公国で長年謎とされていた。
その湖からは上質な塩が採れていたのだが、ここ最近、その質が落ちていると言う。
公国の研究者が原因解明に乗り出しているが、改善の兆しが何も見えない。その研究者たちが揃って口を揃えて言う言葉が、
「ドラゴンの鱗があれば…」
だった。
リヴァージュはどういう意味か分からず、国で数多くの本を執筆している祖父(母の父親)にその意味を聞いたことがある。
祖父が言うには、今は幻の生き物となってしまったドラゴンにはそれぞれ能力が違う数種類の個体が存在し、そのうち水のドラゴンと呼ばれる個体は汚れた水を浄化させたり、綺麗な水を地中から湧き起こしてくれる力があるそうだ。ただし、ドラゴン一匹の力ではそれは出来ず、ドラゴンとの信頼を築いた人間が一緒でなければドラゴンの能力を引き出すことができない。
ドラゴンは警戒心の強い生き物で、人間の前に現れるのも稀。ましてや契約を結べる人間は、過去に勇者と呼ばれた者しかおらず、それ以外では【ある人物】としか契約を結んでいない。
「その【ある人物】とは?」
リヴァージュの話を聞いていたエテ王子が、彼に訊ねた。
「世界を支配する女神だけです。ドラゴンは第二の世界を支配していた『知識の女神』が生み出した生物だと言われています。他にもグリフォン、ユニコーン、マーメイドなども『知識の女神』が生み出したそうですよ」
「生み出した…って、どうやって?」
「それはわかりません。どのように生み出したのか、何も資料が残されていません」
リオを見ると、彼も首を横に振った。
どの国でも『知識の女神』と『戦いの女神』の資料は少なく、当時の人物が書き残した文献も、今は王立研究院の遥か奥に封印され、限られた人しか閲覧を許されていない。
「あの~……」
なにやら難しい話をしており、話についていけないケインは、遠慮しながら小さな声で話を遮った。
「どうしたの、ケイン」
「ドラゴンの鱗って、海水も湧き上がらせることができるんですか?」
「水のドラゴンだから、可能じゃないのか?」
「でも、俺のオルシアは真水しか出せませんよ。ヴァーグさんのアクアも、俺に向かって水を吹きだす時、真水なんです」
「確かに、オルシアもアクアも真水は出せるけど、海水を出した所は見たことないわね」
「それは本当ですか?」
「ええ。村の井戸はオルシアの鱗を使って貯めた貯水施設から送られてくる水です。海水を出せるのなら、わたしは真っ先に頼んでいたわ。作りたい物があるから」
「だったら、本人に聞いてみますか?」
「「「本人???」」」
エテ王子、リオ、リヴァージュの三人が同時に首を傾げた。
ケインは首から下げていた銀色の小さな筒の様な物を取り出し、口に咥えると、空に向かって息を吹き込んだ。
何の音もせず、ただ小さな銀色の筒に息を拭き続けている光景は異様に感じる。
だが、しばらくすると大きな影が中庭にいるケインたちを覆った。
見上げると、そこにはケインが契約しているドラゴン・オルシアが大きな翼で羽ばたいていた。
「もぉ~~!! 突然飛んでいくんだもの。びっくりしました……あら?」
中庭に走ってきたカトリーヌが目にしたのは、上空で羽ばたいているオルシアを、ポカーンと口を開いて固まっているリヴァージュの姿だった。
エテ王子とリオはケインが持っている小さな銀色の筒に興味があるようで、ケインに飛びついていた。
ヴァーグは何をしていいのか分からず、ただ苦笑いを浮かべているだけだった。
ドラゴンの言葉は【スキル 聞き耳頭巾】を持っているヴァーグとケインしか分からない。このスキルを持っていないと、ただドラゴンがガウガウ鳴いているにしか聞こえない。
先にオルシアに聞きたい事をまとめ、ケインが代わりに質問した。
ドラゴンと普通に話しているケインも凄いが、その横で時には頷き、時には新たな質問をするヴァーグは、聞きながら話しながら、質問と返答を紙に書き起こすスピードがとても速かった。少し覗き込んだリオは、箇条書きに簡単に書かれた単語と、よくわからない記号の様な物を合わせて、ヴァーグ独特のメモの内容に、少しだけ眩暈がした。
(研究者でも、こんなに細かく書かないぞ…)
ヴァーグのメモで一番驚いたのは、次の質問に移るまでの短い間で、書き留めた単語と記号を、一文に書き換えている所だ。きっと話しやすくするために一瞬で一文が浮かんだのだろう。次の質問に移っても、また少しの間が空くと、今の質問とその前の質問を同時に書き留めている。
「えっと……オルシアが言うには、ドラゴンと言っても色々な種族がいて、オルシアは陸のドラゴンらしいです」
「陸のドラゴン?」
「簡単に言えば、人間に密着したドラゴン…?……でしたっけ?」
かなりあやふやな答えを出すケインは、隣に座るヴァーグに話を振った。
「この世界には陸のドラゴンと海のドラゴンがいて、陸のドラゴンは人間が生活するのに必要な火や水などを与えてくれる。逆に海のドラゴンは人間に危害を加えるドラゴンと呼ばれ、嵐を起こしたり、高い波を陸地に押し寄せたりする能力を持っているそうです。稀に陸のドラゴンの中から危害を加える気性の荒いドラゴンも誕生するけど、気性の荒いドラゴンはすぐに人間の手によって滅ぼされてしまうようです。逆に海のドラゴンにも稀に人間と密着する者も生まれるそうです」
「じゃ…じゃあ、海水を出す事が出来るドラゴンは……」
「海のドラゴンだそうです。因みに海のドラゴンの事は【海の龍】と呼ばれ、ドラゴンは人間の味方、龍は人間の敵と、過去の人は区別していたそうです」
「ボルツール公国にある海と同じ成分の湖は【龍】が作ったのか?」
「何故、海のない山に囲まれたボルツール公国に海と同じ成分の水があるのかは、オルシアも分からないそうです。色々な国に行ったことあるけど、その国々でドラゴンに会ったのは妻のシエルだけだそうです」
ヴァーグの説明にオルシアが何度も何度も頷いていた。それだけで真実を語っている事を物語っている。
「最も、オルシアたち親子は人間から隠れるように暮らしていたので、人間の世界の事はよくわからないそうですよ。沢山の仲間の命を人間の手で滅ぼされたことで、人間を嫌っていたそうです」
「じゃあ、なんでケインと契約を結んだんだ?」
「俺がドラゴンと共存したいって望んだから。それに、俺より先にヴァーグさんがアクアと契約を結んでて、オルシアが俺の望みを叶えてくれたから、今度はオルシアの望みを叶えてほしいって言われて契約を結んだんです」
「ケインの願いって?」
「あの時、日照りが続いて村の井戸が枯れ始めたんです。作物も育たなくて、村全体が危機に陥っていた。そんな時、オルシアに出会って、村の水不足を解消してくれたんです。オルシアも驚いていましたよ。戦い以外で契約を結ぶ人間は今までいなかったって」
「なんでドラゴンはケインを選んだんだ?」
エテ王子の言葉に、オルシアはケインに頬ずりをした。
その行動1つで何を言いたいのかよくわかる。オルシアとケインの間には、言葉に出来ない深い絆が結ばれているのだろう。
(コロリスとヴァンも、お互いに必要としているようだし…)
ごく身近に伝説上の生き物と言われていたグリフォンと契約を結んでいる人物がいることだし、なにも疑問に思うことはないか…とエテ王子はそれ以上の追及をやめた。
オルシアは【陸のドラゴン】と【海の龍】の他にも【人工的に作られたドラゴン】の話もしてくれた。
【人工的に作られたドラゴン】は『戦いの女神』が作り出した体の固い地を這うドラゴンで、それに人が乗って移動することもできる。口からは炎を吐き、数十メートル先の建物を破壊する力を持っていると言う。
ただ、他のドラゴンと違い、自らの意思はなく、生命力を感じなかった。
オルシアの説明に、ヴァーグは心当たりがある。
(もしかして……戦車?)
実物を見ていないので断定はできないが、武器を生み出す知識があるのなら、戦車を生み出すこともできるだろう。現在、このステラ王国には最低限の武器しか残されていない。それは戦うことを拒んだ証拠だ。
「あの、一つ聞いてもいいですか?」
「なんですか?」
「歴代の女神はどの国にいたのですか?」
「南に位置する海の向こうにある『サウザンクロス帝国』に居ました。海に浮かぶ小さな島国ですが、『創世の女神』が降臨された場所でもありますので、女神を崇拝する信者の聖地とされています。今は島の北側をサウザンクロス帝国、南側をジャルパツ王国が支配しています。ジャルパツ王国は『戦いの女神』が皇帝の正妃になった時、女神に反発していた当時の皇帝の弟が築き上げた国です」
「この国は元々どこに所属していたんですか?」
「ステラ王国も、独立するまではサウザンクロス帝国の一部でした。やはり戦いの女神に反発していた皇帝の弟がこの国を築きました。ボルツール公国も塩が採れる関係で帝国の一部でしたが、同じように女神に反発していた皇帝の従弟が独立する形で国を築きました」
ヴァーグは次から次へと出てくる歴史に、ほぉほぉと相槌を打ちながら聞き入っていた。
女神はこの国の成り立ちやこの世界の歴史を一切教えてくれなかった。教えたくなかったのかもしれないが、攻めて自分が住む国の歴史ぐらいは教えてほしかった。
(ま、パソコンで調べれば一発でわかっちゃうけどね)
あまりパソコンでこの世界の事を調べないヴァーグは、歴史そのものに興味がないようだ。
問題は、質が落ちたボルツール公国の塩だ。国の特産であり、貴重な収入源を失うわけにはいかない。
同時に塩の塊の中から見つかった【雷の結晶】も調べなくてはならない。雷を落とす動物が関係しているのなら、それも含めて一度ボルツール公国に行った方がいいのだろうか。
「リヴァージュ従兄さん、塩の質は急に落ちたんですか?」
「芸術祭の前辺りから…かな。湖で採れる塩の量も減ってきている。湖の水量は変わりないのだが…」
国の研究員たちもお手上げの状態のこの状況。きっと何か手を加えたらもっと質が落ちるのではないかと、怖気づいて何もできないのが現状だ。
「リヴァージュさん、お塩はどうやって採取しているんですか?」
「秋の始まりから冬の終わりまで、湖の湖岸に塩の塊が流れ着くんです。その塊を採取し、加工場で砕いて不純物を取り除いて製品として出荷しています」
「それは秋から冬しか採取できない…ってことですか?」
「塩は人工的に作れませんので、塊が流れ着く時期に回収し、加工は一年を通して行っています」
「……」
ヴァーグは何かを思いついたのか、顎に手を添え少し俯いた。
彼女が思い出していたのは前の世界で行われていた塩の作り方だ。塩の作り方が色々あり、海水を大きな窯で煮詰めて取り出す方法や、砂地に海水を巻き、天日干しで海水を蒸発させ、残った塩をかき集めて不純物を取り除く方法など、過去に調べたことがある。どれも物語を書く時に何かの参考になれば…と学生時代に調べたことだ。
天日干しだと天候が大きく左右する。さすがにビニールハウスはお勧めできない。これは村だけの技術に留めておきたい。
大きな窯で煮詰めるには強力な火が必要だ。ボルツール公国にどれだけの火力が出せる釜土やコンロがあるのかは分からない。
だからと言って、マリアの会社のように工場を建てるわけにもいかない。それこそパソコンを使って建設するのは村から出してはいけない技術だ。
大きな窯と強力な火さえ確保できれば……。
「ヴァーグさん?」
ケインが声を掛けると、ヴァーグは顔を上げ、リオを見た。
「え?」
突然見つめられたリオは、急にうろたえ始めた。
次にヴァーグはオルシアを見上げた。
「我(われ)の力が必要か?」
オルシアにはヴァーグが手を貸してほしい事を読み取ったようだ。
「一つ聞きたいんだけど、オルシアはどうやって水を浄化させるの?」
「我の息を吹きかければ水は浄化する」
「その浄化って、海水を真水に変えてしまう?」
「その通りだ。我は陸のドラゴン。人間の生活に必要な水に変えることができる」
「じゃあ無理か……」
「何かいい案でも?」
「いい案かは分からないけど……」
ヴァーグははっきりと言葉を発しなかった。頭の中では行けるだろうと思ったことでも、それが現実となることはない。
「例えばなんだけど、オルシアの鱗を使った水の中に大量の塩を入れると、その海水の水質はどうなる? 質の悪い塩だと全体的に質は落ちる?」
「平均を取るだろう。我の最高品質の水を100として、そこに50の品質の塩を入れる。出来上がった塩水は50以上の質はあるが、100までは行かないだろう」
「そうだよね…」
前の世界で錬金術のゲームをやった事があるヴァーグは、使う素材の質が出来上がる製品の質を左右させることは理解している。いかに高品質の素材を手に入れられるかがゲームの重要性だった。
「だが、我の鱗を使い水を湧き起こし、そこに質の高い塩を入れ、さらにシエルの鱗を使えば、出来上がった品質を保つ事が出来るだろう。むろん、我の鱗を使うのだから、水は無限に沸き起こる」
「【水の結晶】でも同じことはできる?」
「結晶だといずれは水は尽きる。併用して使ってはどうだ。村の結晶は最高品質の水を出す。大きな入れ物に結晶を割り、水を湧き起こしたら我の鱗を入れる。そこに質の高い塩を入れ、シエルの鱗も入れる。結晶の水ならば多少質の落ちた塩でもカバーできるだろう。最高品質とまでは行かないが、人間たちが言う高品質である事に間違いない」
「なるほど」
これならいけるかもしれない。ヴァーグの頭の中に何かがひらめいた。
大きな窯はゲンに頼むとして、あとは強力な火の確保だ。
「リオさん、温泉宿から見つかった【炎の結晶】はどれぐらいの威力がありますか?」
「質は最高品質ですが、あの結晶1つには大きな火力は望めません。火の石に加工すれば一日は燃え続けるはずです」
「じゃあ、連日燃やすこともできますか?」
「やってみないとわかりませんが、あの結晶を使って大きい火の石を作れば、5日は燃やせるものが作れるはずです」
「作ることは可能ですか?」
「可能です。ですが、火の石を使う材料が不足していまして…。今年の夏、材料の一つを栽培する畑が干害にあいまして、研究院に収められる量が減ってしまったのです。結晶の発見は嬉しい事でしたが、肝心の材料の一つが手に入りにくくなってしまい、急には作れません」
「畑ってことは、作物なんですか?」
「はい。遠い昔は食用として栽培されていたそうですが、調理方法が分からないので、栽培農家が処分の為に火をつけた所、長時間燃え続けたそうです。そこで研究院で、【炎の結晶】と【鉄】の二つで熱を発するのなら、燃える素材を組み合わせれば火を起こすことが出来るだろうと思い、この三つを組み合わせて火の石を作ることに成功しました。分量を変えれば短時間から長時間まで燃え続ける事が出来ます」
「それって、なんですか?」
栽培する作物の中に、長時間燃え続ける物なんかあったっけ?と、ヴァーグは不思議に思った。
リオはウエストポーチから、小さな麻袋を取り出し、その中身をテーブルの上に広げた。
彼が取り出した【燃える作物】はヴァーグがよく知るある食べ物だった!
<つづく>
ステラ王国の王妃の父方の遠縁に、このボルツール公国の歴代の当主がおり、それが縁でステラ王国との交易を続けている。
四方を山に囲まれ、小さな国内には大小合わせて20近い湖が存在し、その一つ一つに特徴を兼ね備えている。
その一つに、雷を放つ動物が春の終わりに一斉に雷を落とす湖があり、ここは塩が採れる場所でもある。海から遠く離れた内陸部で、海水と同じ成分を含む水が存在することは、ボルツール公国で長年謎とされていた。
その湖からは上質な塩が採れていたのだが、ここ最近、その質が落ちていると言う。
公国の研究者が原因解明に乗り出しているが、改善の兆しが何も見えない。その研究者たちが揃って口を揃えて言う言葉が、
「ドラゴンの鱗があれば…」
だった。
リヴァージュはどういう意味か分からず、国で数多くの本を執筆している祖父(母の父親)にその意味を聞いたことがある。
祖父が言うには、今は幻の生き物となってしまったドラゴンにはそれぞれ能力が違う数種類の個体が存在し、そのうち水のドラゴンと呼ばれる個体は汚れた水を浄化させたり、綺麗な水を地中から湧き起こしてくれる力があるそうだ。ただし、ドラゴン一匹の力ではそれは出来ず、ドラゴンとの信頼を築いた人間が一緒でなければドラゴンの能力を引き出すことができない。
ドラゴンは警戒心の強い生き物で、人間の前に現れるのも稀。ましてや契約を結べる人間は、過去に勇者と呼ばれた者しかおらず、それ以外では【ある人物】としか契約を結んでいない。
「その【ある人物】とは?」
リヴァージュの話を聞いていたエテ王子が、彼に訊ねた。
「世界を支配する女神だけです。ドラゴンは第二の世界を支配していた『知識の女神』が生み出した生物だと言われています。他にもグリフォン、ユニコーン、マーメイドなども『知識の女神』が生み出したそうですよ」
「生み出した…って、どうやって?」
「それはわかりません。どのように生み出したのか、何も資料が残されていません」
リオを見ると、彼も首を横に振った。
どの国でも『知識の女神』と『戦いの女神』の資料は少なく、当時の人物が書き残した文献も、今は王立研究院の遥か奥に封印され、限られた人しか閲覧を許されていない。
「あの~……」
なにやら難しい話をしており、話についていけないケインは、遠慮しながら小さな声で話を遮った。
「どうしたの、ケイン」
「ドラゴンの鱗って、海水も湧き上がらせることができるんですか?」
「水のドラゴンだから、可能じゃないのか?」
「でも、俺のオルシアは真水しか出せませんよ。ヴァーグさんのアクアも、俺に向かって水を吹きだす時、真水なんです」
「確かに、オルシアもアクアも真水は出せるけど、海水を出した所は見たことないわね」
「それは本当ですか?」
「ええ。村の井戸はオルシアの鱗を使って貯めた貯水施設から送られてくる水です。海水を出せるのなら、わたしは真っ先に頼んでいたわ。作りたい物があるから」
「だったら、本人に聞いてみますか?」
「「「本人???」」」
エテ王子、リオ、リヴァージュの三人が同時に首を傾げた。
ケインは首から下げていた銀色の小さな筒の様な物を取り出し、口に咥えると、空に向かって息を吹き込んだ。
何の音もせず、ただ小さな銀色の筒に息を拭き続けている光景は異様に感じる。
だが、しばらくすると大きな影が中庭にいるケインたちを覆った。
見上げると、そこにはケインが契約しているドラゴン・オルシアが大きな翼で羽ばたいていた。
「もぉ~~!! 突然飛んでいくんだもの。びっくりしました……あら?」
中庭に走ってきたカトリーヌが目にしたのは、上空で羽ばたいているオルシアを、ポカーンと口を開いて固まっているリヴァージュの姿だった。
エテ王子とリオはケインが持っている小さな銀色の筒に興味があるようで、ケインに飛びついていた。
ヴァーグは何をしていいのか分からず、ただ苦笑いを浮かべているだけだった。
ドラゴンの言葉は【スキル 聞き耳頭巾】を持っているヴァーグとケインしか分からない。このスキルを持っていないと、ただドラゴンがガウガウ鳴いているにしか聞こえない。
先にオルシアに聞きたい事をまとめ、ケインが代わりに質問した。
ドラゴンと普通に話しているケインも凄いが、その横で時には頷き、時には新たな質問をするヴァーグは、聞きながら話しながら、質問と返答を紙に書き起こすスピードがとても速かった。少し覗き込んだリオは、箇条書きに簡単に書かれた単語と、よくわからない記号の様な物を合わせて、ヴァーグ独特のメモの内容に、少しだけ眩暈がした。
(研究者でも、こんなに細かく書かないぞ…)
ヴァーグのメモで一番驚いたのは、次の質問に移るまでの短い間で、書き留めた単語と記号を、一文に書き換えている所だ。きっと話しやすくするために一瞬で一文が浮かんだのだろう。次の質問に移っても、また少しの間が空くと、今の質問とその前の質問を同時に書き留めている。
「えっと……オルシアが言うには、ドラゴンと言っても色々な種族がいて、オルシアは陸のドラゴンらしいです」
「陸のドラゴン?」
「簡単に言えば、人間に密着したドラゴン…?……でしたっけ?」
かなりあやふやな答えを出すケインは、隣に座るヴァーグに話を振った。
「この世界には陸のドラゴンと海のドラゴンがいて、陸のドラゴンは人間が生活するのに必要な火や水などを与えてくれる。逆に海のドラゴンは人間に危害を加えるドラゴンと呼ばれ、嵐を起こしたり、高い波を陸地に押し寄せたりする能力を持っているそうです。稀に陸のドラゴンの中から危害を加える気性の荒いドラゴンも誕生するけど、気性の荒いドラゴンはすぐに人間の手によって滅ぼされてしまうようです。逆に海のドラゴンにも稀に人間と密着する者も生まれるそうです」
「じゃ…じゃあ、海水を出す事が出来るドラゴンは……」
「海のドラゴンだそうです。因みに海のドラゴンの事は【海の龍】と呼ばれ、ドラゴンは人間の味方、龍は人間の敵と、過去の人は区別していたそうです」
「ボルツール公国にある海と同じ成分の湖は【龍】が作ったのか?」
「何故、海のない山に囲まれたボルツール公国に海と同じ成分の水があるのかは、オルシアも分からないそうです。色々な国に行ったことあるけど、その国々でドラゴンに会ったのは妻のシエルだけだそうです」
ヴァーグの説明にオルシアが何度も何度も頷いていた。それだけで真実を語っている事を物語っている。
「最も、オルシアたち親子は人間から隠れるように暮らしていたので、人間の世界の事はよくわからないそうですよ。沢山の仲間の命を人間の手で滅ぼされたことで、人間を嫌っていたそうです」
「じゃあ、なんでケインと契約を結んだんだ?」
「俺がドラゴンと共存したいって望んだから。それに、俺より先にヴァーグさんがアクアと契約を結んでて、オルシアが俺の望みを叶えてくれたから、今度はオルシアの望みを叶えてほしいって言われて契約を結んだんです」
「ケインの願いって?」
「あの時、日照りが続いて村の井戸が枯れ始めたんです。作物も育たなくて、村全体が危機に陥っていた。そんな時、オルシアに出会って、村の水不足を解消してくれたんです。オルシアも驚いていましたよ。戦い以外で契約を結ぶ人間は今までいなかったって」
「なんでドラゴンはケインを選んだんだ?」
エテ王子の言葉に、オルシアはケインに頬ずりをした。
その行動1つで何を言いたいのかよくわかる。オルシアとケインの間には、言葉に出来ない深い絆が結ばれているのだろう。
(コロリスとヴァンも、お互いに必要としているようだし…)
ごく身近に伝説上の生き物と言われていたグリフォンと契約を結んでいる人物がいることだし、なにも疑問に思うことはないか…とエテ王子はそれ以上の追及をやめた。
オルシアは【陸のドラゴン】と【海の龍】の他にも【人工的に作られたドラゴン】の話もしてくれた。
【人工的に作られたドラゴン】は『戦いの女神』が作り出した体の固い地を這うドラゴンで、それに人が乗って移動することもできる。口からは炎を吐き、数十メートル先の建物を破壊する力を持っていると言う。
ただ、他のドラゴンと違い、自らの意思はなく、生命力を感じなかった。
オルシアの説明に、ヴァーグは心当たりがある。
(もしかして……戦車?)
実物を見ていないので断定はできないが、武器を生み出す知識があるのなら、戦車を生み出すこともできるだろう。現在、このステラ王国には最低限の武器しか残されていない。それは戦うことを拒んだ証拠だ。
「あの、一つ聞いてもいいですか?」
「なんですか?」
「歴代の女神はどの国にいたのですか?」
「南に位置する海の向こうにある『サウザンクロス帝国』に居ました。海に浮かぶ小さな島国ですが、『創世の女神』が降臨された場所でもありますので、女神を崇拝する信者の聖地とされています。今は島の北側をサウザンクロス帝国、南側をジャルパツ王国が支配しています。ジャルパツ王国は『戦いの女神』が皇帝の正妃になった時、女神に反発していた当時の皇帝の弟が築き上げた国です」
「この国は元々どこに所属していたんですか?」
「ステラ王国も、独立するまではサウザンクロス帝国の一部でした。やはり戦いの女神に反発していた皇帝の弟がこの国を築きました。ボルツール公国も塩が採れる関係で帝国の一部でしたが、同じように女神に反発していた皇帝の従弟が独立する形で国を築きました」
ヴァーグは次から次へと出てくる歴史に、ほぉほぉと相槌を打ちながら聞き入っていた。
女神はこの国の成り立ちやこの世界の歴史を一切教えてくれなかった。教えたくなかったのかもしれないが、攻めて自分が住む国の歴史ぐらいは教えてほしかった。
(ま、パソコンで調べれば一発でわかっちゃうけどね)
あまりパソコンでこの世界の事を調べないヴァーグは、歴史そのものに興味がないようだ。
問題は、質が落ちたボルツール公国の塩だ。国の特産であり、貴重な収入源を失うわけにはいかない。
同時に塩の塊の中から見つかった【雷の結晶】も調べなくてはならない。雷を落とす動物が関係しているのなら、それも含めて一度ボルツール公国に行った方がいいのだろうか。
「リヴァージュ従兄さん、塩の質は急に落ちたんですか?」
「芸術祭の前辺りから…かな。湖で採れる塩の量も減ってきている。湖の水量は変わりないのだが…」
国の研究員たちもお手上げの状態のこの状況。きっと何か手を加えたらもっと質が落ちるのではないかと、怖気づいて何もできないのが現状だ。
「リヴァージュさん、お塩はどうやって採取しているんですか?」
「秋の始まりから冬の終わりまで、湖の湖岸に塩の塊が流れ着くんです。その塊を採取し、加工場で砕いて不純物を取り除いて製品として出荷しています」
「それは秋から冬しか採取できない…ってことですか?」
「塩は人工的に作れませんので、塊が流れ着く時期に回収し、加工は一年を通して行っています」
「……」
ヴァーグは何かを思いついたのか、顎に手を添え少し俯いた。
彼女が思い出していたのは前の世界で行われていた塩の作り方だ。塩の作り方が色々あり、海水を大きな窯で煮詰めて取り出す方法や、砂地に海水を巻き、天日干しで海水を蒸発させ、残った塩をかき集めて不純物を取り除く方法など、過去に調べたことがある。どれも物語を書く時に何かの参考になれば…と学生時代に調べたことだ。
天日干しだと天候が大きく左右する。さすがにビニールハウスはお勧めできない。これは村だけの技術に留めておきたい。
大きな窯で煮詰めるには強力な火が必要だ。ボルツール公国にどれだけの火力が出せる釜土やコンロがあるのかは分からない。
だからと言って、マリアの会社のように工場を建てるわけにもいかない。それこそパソコンを使って建設するのは村から出してはいけない技術だ。
大きな窯と強力な火さえ確保できれば……。
「ヴァーグさん?」
ケインが声を掛けると、ヴァーグは顔を上げ、リオを見た。
「え?」
突然見つめられたリオは、急にうろたえ始めた。
次にヴァーグはオルシアを見上げた。
「我(われ)の力が必要か?」
オルシアにはヴァーグが手を貸してほしい事を読み取ったようだ。
「一つ聞きたいんだけど、オルシアはどうやって水を浄化させるの?」
「我の息を吹きかければ水は浄化する」
「その浄化って、海水を真水に変えてしまう?」
「その通りだ。我は陸のドラゴン。人間の生活に必要な水に変えることができる」
「じゃあ無理か……」
「何かいい案でも?」
「いい案かは分からないけど……」
ヴァーグははっきりと言葉を発しなかった。頭の中では行けるだろうと思ったことでも、それが現実となることはない。
「例えばなんだけど、オルシアの鱗を使った水の中に大量の塩を入れると、その海水の水質はどうなる? 質の悪い塩だと全体的に質は落ちる?」
「平均を取るだろう。我の最高品質の水を100として、そこに50の品質の塩を入れる。出来上がった塩水は50以上の質はあるが、100までは行かないだろう」
「そうだよね…」
前の世界で錬金術のゲームをやった事があるヴァーグは、使う素材の質が出来上がる製品の質を左右させることは理解している。いかに高品質の素材を手に入れられるかがゲームの重要性だった。
「だが、我の鱗を使い水を湧き起こし、そこに質の高い塩を入れ、さらにシエルの鱗を使えば、出来上がった品質を保つ事が出来るだろう。むろん、我の鱗を使うのだから、水は無限に沸き起こる」
「【水の結晶】でも同じことはできる?」
「結晶だといずれは水は尽きる。併用して使ってはどうだ。村の結晶は最高品質の水を出す。大きな入れ物に結晶を割り、水を湧き起こしたら我の鱗を入れる。そこに質の高い塩を入れ、シエルの鱗も入れる。結晶の水ならば多少質の落ちた塩でもカバーできるだろう。最高品質とまでは行かないが、人間たちが言う高品質である事に間違いない」
「なるほど」
これならいけるかもしれない。ヴァーグの頭の中に何かがひらめいた。
大きな窯はゲンに頼むとして、あとは強力な火の確保だ。
「リオさん、温泉宿から見つかった【炎の結晶】はどれぐらいの威力がありますか?」
「質は最高品質ですが、あの結晶1つには大きな火力は望めません。火の石に加工すれば一日は燃え続けるはずです」
「じゃあ、連日燃やすこともできますか?」
「やってみないとわかりませんが、あの結晶を使って大きい火の石を作れば、5日は燃やせるものが作れるはずです」
「作ることは可能ですか?」
「可能です。ですが、火の石を使う材料が不足していまして…。今年の夏、材料の一つを栽培する畑が干害にあいまして、研究院に収められる量が減ってしまったのです。結晶の発見は嬉しい事でしたが、肝心の材料の一つが手に入りにくくなってしまい、急には作れません」
「畑ってことは、作物なんですか?」
「はい。遠い昔は食用として栽培されていたそうですが、調理方法が分からないので、栽培農家が処分の為に火をつけた所、長時間燃え続けたそうです。そこで研究院で、【炎の結晶】と【鉄】の二つで熱を発するのなら、燃える素材を組み合わせれば火を起こすことが出来るだろうと思い、この三つを組み合わせて火の石を作ることに成功しました。分量を変えれば短時間から長時間まで燃え続ける事が出来ます」
「それって、なんですか?」
栽培する作物の中に、長時間燃え続ける物なんかあったっけ?と、ヴァーグは不思議に思った。
リオはウエストポーチから、小さな麻袋を取り出し、その中身をテーブルの上に広げた。
彼が取り出した【燃える作物】はヴァーグがよく知るある食べ物だった!
<つづく>
0
お気に入りに追加
101
あなたにおすすめの小説
【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?
つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。
平民の我が家でいいのですか?
疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。
義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。
学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。
必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。
勉強嫌いの義妹。
この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。
両親に駄々をこねているようです。
私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。
しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。
なろう、カクヨム、にも公開中。
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
(完)私の家を乗っ取る従兄弟と従姉妹に罰を与えましょう!
青空一夏
ファンタジー
婚約者(レミントン侯爵家嫡男レオン)は何者かに襲われ亡くなった。さらに両親(ランス伯爵夫妻)を病で次々に亡くした葬式の翌日、叔母エイナ・リック前男爵未亡人(母の妹)がいきなり荷物をランス伯爵家に持ち込み、従兄弟ラモント・リック男爵(叔母の息子)と住みだした。
私はその夜、ラモントに乱暴され身ごもり娘(ララ)を産んだが・・・・・・この夫となったラモントはさらに暴走しだすのだった。
ラモントがある日、私の従姉妹マーガレット(母の3番目の妹の娘)を連れてきて、
「お前は娘しか産めなかっただろう? この伯爵家の跡継ぎをマーガレットに産ませてあげるから一緒に住むぞ!」
と、言い出した。
さらには、マーガレットの両親(モーセ準男爵夫妻)もやってきて離れに住みだした。
怒りが頂点に到達した時に私は魔法の力に目覚めた。さて、こいつらはどうやって料理しましょうか?
さらには別の事実も判明して、いよいよ怒った私は・・・・・・壮絶な復讐(コメディ路線の復讐あり)をしようとするが・・・・・・(途中で路線変更するかもしれません。あくまで予定)
※ゆるふわ設定ご都合主義の素人作品。※魔法世界ですが、使える人は希でほとんどいない。(昔はそこそこいたが、どんどん廃れていったという設定です)
※残酷な意味でR15・途中R18になるかもです。
※具体的な性描写は含まれておりません。エッチ系R15ではないです。
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
【完結】間違えたなら謝ってよね! ~悔しいので羨ましがられるほど幸せになります~
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
「こんな役立たずは要らん! 捨ててこい!!」
何が起きたのか分からず、茫然とする。要らない? 捨てる? きょとんとしたまま捨てられた私は、なぜか幼くなっていた。ハイキングに行って少し道に迷っただけなのに?
後に聖女召喚で間違われたと知るが、だったら責任取って育てるなり、元に戻すなりしてよ! 謝罪のひとつもないのは、納得できない!!
負けん気の強いサラは、見返すために幸せになることを誓う。途端に幸せが舞い込み続けて? いつも笑顔のサラの周りには、聖獣達が集った。
やっぱり聖女だから戻ってくれ? 絶対にお断りします(*´艸`*)
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2022/06/22……完結
2022/03/26……アルファポリス、HOT女性向け 11位
2022/03/19……小説家になろう、異世界転生/転移(ファンタジー)日間 26位
2022/03/18……エブリスタ、トレンド(ファンタジー)1位
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる