神狩りの不死人〜ダークファンタジーの世界に召喚されて死ねない体に創り替えられました〜

序章

鳴動する洞窟の中で

温かい。まるで母親の胎内で微睡んでいるかのように、薄っすらとした意識の中で、私は全身を包む液体の温度を感じていた。

『……へ来て』

私の意識を揺り起こすように、どこかから声が聞こえた気がした。私を包む液体が、その声に合わせて波打っている。

『お願い、こっちへ来て』

声が鮮明に聞こえるようになり、徐々に意識が覚醒してくる。

「グボボ…、ゴホッゴホッ…」
思い出したかのように息を吸おうとしたら、空気の代わりに生暖かい液体を思いっきり飲み込んでしまった。
慌ててもがいていると、なんとか顔を水面から出すことができた。地面に足を着けて立つことができているが、胸のあたりまで水深があるようだ。あたりを見渡してみたが、全体的に暗く、自分がどこにいるのか分からなかった。自分の浸かっている液体が、わずかに赤く光っていて、世界を赤と黒に二分している。

『こっちへ来て』

また、声がする。どこかで聞いたことがあるような…!?どこで!?誰の声!?
思い出そうとすると、頭がズキズキと痛んだ。

『こっちへ』

声とともに、水面が波打つ。そのたびに赤い光が揺れて、影も揺れる。
私は、自分の存在が曖昧になってしまうような焦燥を覚え、声のする方へ、波の誘う方へ、赤い光が強くなる方へと、吸い寄せられていった。