201 / 215
思い出と想いと
しおりを挟む
私は、完璧な姉を目指していたから。
がんこが、思うように望むように生きられたら良いと思っていた。
そのためなら、なんだってしようと思っていた。
そこに私のエゴも欲も必要ない。
がんちゃんが「善い」と思える人生を歩む。それがすべてだった。
たとえその想いが、家族を否定し、私を拒絶するものであったとしても。
理性ではいつもそう考えていた。
だけど、そんな時いつも思い出すのは、幼かった日々。
がんこと過ごした日々のことだった。
一緒に川を見に行った。
一緒に夏祭りも行った。花火も見た。
一緒に公園で遅くまで遊んだ。
一緒に桃鉄もやった。九十九年に挑戦しようとして、二十年で挫折した。
一緒にシールも集めたし、夏休みに姉妹だけで祖父母の家に行く大冒険もした。
チョコタルトを作った。しらたま団子も作った。卓球をやった。かわいい文房具を買いに行った。アイドルグループの歌を一緒に歌った。それなりにケンカもあった。近所の猫にこっそり餌をあげた。私の友達とがんちゃんの友達みんなでオリジナルの鬼ごっこをやった。滅多に降らない雪が積もったときは雪だるまと雪うさぎと雪いもむしを作った。
スライドのように思い浮かぶ場面場面が次々と重なる。
挙げていけばきりがないほどの想い出たち。
湯水のように湧いて出てくる思い出と、思い出がつれてくる感傷を、まとめて理性で塗りつぶし、蓋をしてきたのだ。
だけど。
サンバとの出会いががんこの意識を少し変えてくれた。
私を避けなくなったがんこ。
同じ趣味を、同じサークルへの所属を、許容してくれたがんこ。
今ではほづみとひいの姉妹のように、仲の良い姉妹と言える関係にまでなっている。
私の理性の蓋なんて脆いものだった。
がんちゃんと同じ趣味に取り組み、一緒に練習したり買い物に行ったりする日々のなんて幸せなことか。
今が輝いていればいるほど、失われた数年間が泣きそうになる程口惜しい。
今の輝きが眩しく煌めいているのがとても尊く、それを未来へと繋いでいけることが泣きそうになる程嬉しい。
今を失うことなんて、もうできそうにない。
たとえがんちゃんが望んでも。仮にその方ががんちゃんにとって良かったとしても。
私は私のために、それを手放したくないと思ってしまうだろう。
大丈夫。
私は私に言い聞かせる。
私ががんちゃんの人生にとって、益になれば良いのだ。永劫に。
私にならできるよ。
根拠のない自信だけれど、いつだって目標や夢に根拠なんてないものだ。
それを計画と行動で根拠に仕上げていく。常日頃やっている得意分野ではないか。
私はできる。
ライフステージが進むに従い、生活が分たれることはあるだろう。
それでも私は、ずっとがんちゃんにとって伴走、または伴奏の相手足る姉でいたい。
いつしか生まれた新たな祈りをマレットに込めた。
がんこが、思うように望むように生きられたら良いと思っていた。
そのためなら、なんだってしようと思っていた。
そこに私のエゴも欲も必要ない。
がんちゃんが「善い」と思える人生を歩む。それがすべてだった。
たとえその想いが、家族を否定し、私を拒絶するものであったとしても。
理性ではいつもそう考えていた。
だけど、そんな時いつも思い出すのは、幼かった日々。
がんこと過ごした日々のことだった。
一緒に川を見に行った。
一緒に夏祭りも行った。花火も見た。
一緒に公園で遅くまで遊んだ。
一緒に桃鉄もやった。九十九年に挑戦しようとして、二十年で挫折した。
一緒にシールも集めたし、夏休みに姉妹だけで祖父母の家に行く大冒険もした。
チョコタルトを作った。しらたま団子も作った。卓球をやった。かわいい文房具を買いに行った。アイドルグループの歌を一緒に歌った。それなりにケンカもあった。近所の猫にこっそり餌をあげた。私の友達とがんちゃんの友達みんなでオリジナルの鬼ごっこをやった。滅多に降らない雪が積もったときは雪だるまと雪うさぎと雪いもむしを作った。
スライドのように思い浮かぶ場面場面が次々と重なる。
挙げていけばきりがないほどの想い出たち。
湯水のように湧いて出てくる思い出と、思い出がつれてくる感傷を、まとめて理性で塗りつぶし、蓋をしてきたのだ。
だけど。
サンバとの出会いががんこの意識を少し変えてくれた。
私を避けなくなったがんこ。
同じ趣味を、同じサークルへの所属を、許容してくれたがんこ。
今ではほづみとひいの姉妹のように、仲の良い姉妹と言える関係にまでなっている。
私の理性の蓋なんて脆いものだった。
がんちゃんと同じ趣味に取り組み、一緒に練習したり買い物に行ったりする日々のなんて幸せなことか。
今が輝いていればいるほど、失われた数年間が泣きそうになる程口惜しい。
今の輝きが眩しく煌めいているのがとても尊く、それを未来へと繋いでいけることが泣きそうになる程嬉しい。
今を失うことなんて、もうできそうにない。
たとえがんちゃんが望んでも。仮にその方ががんちゃんにとって良かったとしても。
私は私のために、それを手放したくないと思ってしまうだろう。
大丈夫。
私は私に言い聞かせる。
私ががんちゃんの人生にとって、益になれば良いのだ。永劫に。
私にならできるよ。
根拠のない自信だけれど、いつだって目標や夢に根拠なんてないものだ。
それを計画と行動で根拠に仕上げていく。常日頃やっている得意分野ではないか。
私はできる。
ライフステージが進むに従い、生活が分たれることはあるだろう。
それでも私は、ずっとがんちゃんにとって伴走、または伴奏の相手足る姉でいたい。
いつしか生まれた新たな祈りをマレットに込めた。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説

ポエヂア・ヂ・マランドロ 風の中の篝火
桜のはなびら
現代文学
マランドロはジェントルマンである!
サンバといえば、華やかな羽飾りのついたビキニのような露出度の高い衣装の女性ダンサーのイメージが一般的だろう。
サンバには男性のダンサーもいる。
男性ダンサーの中でも、パナマハットを粋に被り、白いスーツとシューズでキメた伊達男スタイルのダンサーを『マランドロ』と言う。
サンバチーム『ソール・エ・エストレーラ』には、三人のマランドロがいた。
マランドロのフィロソフィーを体現すべく、ダンスだけでなく、マランドロのイズムをその身に宿して日常を送る三人は、一人の少年と出会う。
少年が抱えているもの。
放課後子供教室を運営する女性の過去。
暗躍する裏社会の住人。
マランドロたちは、マランドラージェンを駆使して艱難辛苦に立ち向かう。
その時、彼らは何を得て何を失うのか。
※表紙はaiで作成しました。

ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

サンバ大辞典
桜のはなびら
エッセイ・ノンフィクション
サンバチーム『ソール・エ・エストレーラ』の案内係、ジルによるサンバの解説。
サンバ。なんとなくのイメージはあるけど実態はよく知られていないサンバ。
誤解や誤って伝わっている色々なイメージは、実際のサンバとは程遠いものも多い。
本当のサンバや、サンバの奥深さなど、用語の解説を中心にお伝えします!

太陽と星のバンデイラ
桜のはなびら
現代文学
〜メウコラソン〜
心のままに。
新駅の開業が計画されているベッドタウンでのできごと。
新駅の開業予定地周辺には開発の手が入り始め、にわかに騒がしくなる一方、旧駅周辺の商店街は取り残されたような状態で少しずつ衰退していた。
商店街のパン屋の娘である弧峰慈杏(こみねじあん)は、店を畳むという父に代わり、店を継ぐ決意をしていた。それは、やりがいを感じていた広告代理店の仕事を、尊敬していた上司を、かわいがっていたチームメンバーを捨てる選択でもある。
葛藤の中、相談に乗ってくれていた恋人との会話から、父がお店を継続する状況を作り出す案が生まれた。
かつて商店街が振興のために立ち上げたサンバチーム『ソール・エ・エストレーラ』と商店街主催のお祭りを使って、父の翻意を促すことができないか。
慈杏と恋人、仕事のメンバーに父自身を加え、計画を進めていく。
慈杏たちの計画に立ちはだかるのは、都市開発に携わる二人の男だった。二人はこの街に憎しみにも似た感情を持っていた。
二人は新駅周辺の開発を進める傍ら、商店街エリアの衰退を促進させるべく、裏社会とも通じ治安を悪化させる施策を進めていた。
※表紙はaiで作成しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる