194 / 215
準備(LINK:primeira desejo 132)
しおりを挟む
入り時間はパフォーマンス開始時刻の遅くても二時間前には設定されることが多い。今日に関しては更に余裕がある。
ダンサーほどには衣装やメイクに時間を要しないバテリアにとっては、空き時間の過ごし方もひとつの課題だが、どんなに時間に余裕があろうが、その時間は意外とあっという間に訪れるものだ。
時間の経過と比例するように緊張感が高まっていく控室内。
黙々と準備に集中するダンサーたちの邪魔にならぬよう、がんちゃんと一緒に今日やる楽曲をスマートフォンで小さめの音量で流し聴いていた。
先に着替えてしまっても良いのだが、着替えは一瞬で終わる。本番をピークに持っていくなら、できれば直前に近い時間に準備を終え、心身ともに本番に挑むといった風情に整えたい。
ほかのバテリア女性メンバーも、メイクをしたり帽子にファンキーなウィッグをつけたりと準備を進めている者も居る一方、まだのんびりとスタジアムで買った軽食を食べている者も居る。
そうこうしているうちに準備を完全に終えた状態を指す「完スタ」まで一時間を切っていた。
未だ余裕はある、が、せっかくだから舞台用にメイクを整えてみようか。
「がんちゃん、今日は舞台映えするメイクでいこう」
がんちゃんにもメイクを促す。
「どうやるの?」というがんちゃんに、立体感を出すためのハイライトとシェーディングを自分の顔に入れてやり方を見せる。
がんちゃんは通常のメイクセットしか持っていない。今使用した道具を貸すと、がんちゃんも私の顔と鏡の中の自分の顔を見比べながらメイクを始めた。
少したどたどしさはあるもののうまく顔全体が引き締まるように陰影を出すことができた。
続いて、ポイントを少し濃いめに仕上げる。アイブロウは長く濃く、アイラインはダブルで引く。
今回のバテリアは深紫色を基調としたデザインのロングシャツに同色のリボンを巻いた中折れハットだ。
いつもの明るく派手なTシャツと違い、クールでとがった印象となる。脱着時にメイクが付く心配のない前閉じのシャツというのもありがたい。
軸となるカラーの深紫に合わせるようにパープルのアイラインを入れた。がんちゃんも同じカラーだ。
続いて、血色がよく見えるチークを入れる。
リップまでパープルはやりすぎだろう。ここは強めのレッドにしておく。がんちゃんはオレンジ系が似合うかな? と思ったが、ここはせっかくなのでアイライン同様に姉妹で揃えよう。うん、白い肌にレッドが良く映えていて美しい。
がんちゃんの幼さの残る顔立ちに妙な妖艶さが漂って、これはこれでアリだね!
ダンサーほどには衣装やメイクに時間を要しないバテリアにとっては、空き時間の過ごし方もひとつの課題だが、どんなに時間に余裕があろうが、その時間は意外とあっという間に訪れるものだ。
時間の経過と比例するように緊張感が高まっていく控室内。
黙々と準備に集中するダンサーたちの邪魔にならぬよう、がんちゃんと一緒に今日やる楽曲をスマートフォンで小さめの音量で流し聴いていた。
先に着替えてしまっても良いのだが、着替えは一瞬で終わる。本番をピークに持っていくなら、できれば直前に近い時間に準備を終え、心身ともに本番に挑むといった風情に整えたい。
ほかのバテリア女性メンバーも、メイクをしたり帽子にファンキーなウィッグをつけたりと準備を進めている者も居る一方、まだのんびりとスタジアムで買った軽食を食べている者も居る。
そうこうしているうちに準備を完全に終えた状態を指す「完スタ」まで一時間を切っていた。
未だ余裕はある、が、せっかくだから舞台用にメイクを整えてみようか。
「がんちゃん、今日は舞台映えするメイクでいこう」
がんちゃんにもメイクを促す。
「どうやるの?」というがんちゃんに、立体感を出すためのハイライトとシェーディングを自分の顔に入れてやり方を見せる。
がんちゃんは通常のメイクセットしか持っていない。今使用した道具を貸すと、がんちゃんも私の顔と鏡の中の自分の顔を見比べながらメイクを始めた。
少したどたどしさはあるもののうまく顔全体が引き締まるように陰影を出すことができた。
続いて、ポイントを少し濃いめに仕上げる。アイブロウは長く濃く、アイラインはダブルで引く。
今回のバテリアは深紫色を基調としたデザインのロングシャツに同色のリボンを巻いた中折れハットだ。
いつもの明るく派手なTシャツと違い、クールでとがった印象となる。脱着時にメイクが付く心配のない前閉じのシャツというのもありがたい。
軸となるカラーの深紫に合わせるようにパープルのアイラインを入れた。がんちゃんも同じカラーだ。
続いて、血色がよく見えるチークを入れる。
リップまでパープルはやりすぎだろう。ここは強めのレッドにしておく。がんちゃんはオレンジ系が似合うかな? と思ったが、ここはせっかくなのでアイライン同様に姉妹で揃えよう。うん、白い肌にレッドが良く映えていて美しい。
がんちゃんの幼さの残る顔立ちに妙な妖艶さが漂って、これはこれでアリだね!
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説

ポエヂア・ヂ・マランドロ 風の中の篝火
桜のはなびら
現代文学
マランドロはジェントルマンである!
サンバといえば、華やかな羽飾りのついたビキニのような露出度の高い衣装の女性ダンサーのイメージが一般的だろう。
サンバには男性のダンサーもいる。
男性ダンサーの中でも、パナマハットを粋に被り、白いスーツとシューズでキメた伊達男スタイルのダンサーを『マランドロ』と言う。
サンバチーム『ソール・エ・エストレーラ』には、三人のマランドロがいた。
マランドロのフィロソフィーを体現すべく、ダンスだけでなく、マランドロのイズムをその身に宿して日常を送る三人は、一人の少年と出会う。
少年が抱えているもの。
放課後子供教室を運営する女性の過去。
暗躍する裏社会の住人。
マランドロたちは、マランドラージェンを駆使して艱難辛苦に立ち向かう。
その時、彼らは何を得て何を失うのか。
※表紙はaiで作成しました。

ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

サンバ大辞典
桜のはなびら
エッセイ・ノンフィクション
サンバチーム『ソール・エ・エストレーラ』の案内係、ジルによるサンバの解説。
サンバ。なんとなくのイメージはあるけど実態はよく知られていないサンバ。
誤解や誤って伝わっている色々なイメージは、実際のサンバとは程遠いものも多い。
本当のサンバや、サンバの奥深さなど、用語の解説を中心にお伝えします!

スルドの声(嚶鳴) terceira homenagem
桜のはなびら
現代文学
大学生となった誉。
慣れないひとり暮らしは想像以上に大変で。
想像もできなかったこともあったりして。
周囲に助けられながら、どうにか新生活が軌道に乗り始めて。
誉は受験以降休んでいたスルドを再開したいと思った。
スルド。
それはサンバで使用する打楽器のひとつ。
嘗て。
何も。その手には何も無いと思い知った時。
何もかもを諦め。
無為な日々を送っていた誉は、ある日偶然サンバパレードを目にした。
唯一でも随一でなくても。
主役なんかでなくても。
多数の中の一人に過ぎなかったとしても。
それでも、パレードの演者ひとりひとりが欠かせない存在に見えた。
気づけば誉は、サンバ隊の一員としてスルドという大太鼓を演奏していた。
スルドを再開しようと決めた誉は、近隣でスルドを演奏できる場を探していた。そこで、ひとりのスルド奏者の存在を知る。
配信動画の中でスルドを演奏していた彼女は、打楽器隊の中にあっては多数のパーツの中のひとつであるスルド奏者でありながら、脇役や添え物などとは思えない輝きを放っていた。
過去、身を置いていた世界にて、将来を嘱望されるトップランナーでありながら、終ぞ栄光を掴むことのなかった誉。
自分には必要ないと思っていた。
それは。届かないという現実をもう見たくないがための言い訳だったのかもしれない。
誉という名を持ちながら、縁のなかった栄光や栄誉。
もう一度。
今度はこの世界でもう一度。
誉はもう一度、栄光を追求する道に足を踏み入れる決意をする。
果てなく終わりのないスルドの道は、誉に何をもたらすのだろうか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる