スルドの声(反響) segunda rezar

桜のはなびら

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明日へ!(LINK:primeira desejo 131)

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 練習によって自信に根拠を持てた。

 なので!
 夕方からのフリータイムは憂いなく楽しめる!

 さあ、どこに行こう?

 今日は鳴門駅の近くのホテルをチームがとってくれている。
 多くの面々はこれからホテル前の居酒屋で飲むらしい。明日のパフォーマンスに影響ないと良いが、きっと慣れたものなのだろう。

 せっかくの鳴門だ。私は大渦を見に行きたかった。鳴門には有名な美術館があり、そこも見たかったが残念ながら閉館時間だ。せめて大渦は見ておきたい。

 マルガを含めた渡航時の同行メンバー七名に、るいぷる、にーなも加えて大渦を見にいくことになった。
 その後居酒屋に合流して夜ごはんを食べる流れだ。多分遅くまでやっているだろうから、いつ行っても合流できそうだ。



「ぎゃー! 喰われるー」
「るいぷる食べたら地球が吐くわ!」

 小三くらい騒いでいる大人たち。マルガも一緒になって「いぇー」と自撮りしている。

 うん。観光地は、はしゃいでこそ、よね。

「わー、私も入るー! ほら、がんちゃんもいこ! みんなも!」

「いえーーっ!」

 さすが『ソルエス』の特攻隊長。ひいが走る私を追い抜いてるいぷるとにーなに飛びつく。

「うあっ!」
「でかっ!」

「ちょっとひい! 自分の体重考えて!」
「わたし太ってないっ」
「いや、身長......」

「ひいって大型犬みたい」
「猪じゃない?」

「聞こえてっから‼︎」

 同じく観光でいらしたらしいご夫婦に写真を撮っていただいた。
 全員思い思いのポーズをとっている。言っても九人の大所帯だ。ちょっとした集合写真みたいになった。

 お礼にご夫婦を男性のスマートフォンで撮影する。返却し画像を確認した男性は「ありがとうございます」と笑顔を返してくれた。
「みなさん、タレントさんですか?」とは、半ばリップサービスだろうが、アイドルユニットのオフのように見えたという言葉に、特に年長の三人が殊の外喜んでいた。

「タレントではないですが、実は明日の『阿波ゼルコーバ』ファン感謝祭で踊るんです!」

 さすがにご夫婦がスタジアムに来場する予定だったという偶然は無かった。

「そのうち動画なんかもアップされると思うので、なんかの機会があったらぜひご覧になってください!」

 簡単な宣伝をしておいたが、あの言い方ではきっと具体的にイメージできたとしてチアダンサーのひとたちかな? と思われるくらいが精々だ。少なくとも、サンバとは思われてはいないだろう。
 
 ダンスと聞いてすぐにサンバがイメージの選択肢に現れるくらい、認知度が高まれば良いな。


 海峡でも、道中でも、大騒ぎの私たちはそのままのテンションで戻り、ホテル前の居酒屋に入った。
 そこでは、それ以上のハイテンションな大人たちが私たちを迎えてくれた。
 明日が本番だというのに、みんな大いに語り、笑い、騒いでいた。


 学生メンバーはほどほどの時間で部屋に戻った。
 今日はみんなひとり部屋だ。

 終日みんなと一緒にいた。ずっと喋っていた。

 急にひとりになると静寂が嫌に煩い。


 そんな静寂を、メッセージの受信を報せるささやかな音が破る。


 届いたのは父からのメッセージ。

 旅で体調を崩していないかと身体を気遣う内容。
 願子を頼む、と末子への不安と長子への依頼に信頼。

 そして、最後に明日は見に来てくれることが添えられていた。母も一緒だそうだ。


 そうか、来てくれるのか。
 良かった。


「良かったね。私たちふたりの演奏をお父さんとお母さんに観てもらおう! あしたがんばろーね」


 がんちゃんにも同様の内容のメッセージは届いていると思ったが、私の気持ちもがんちゃんに送った。

 すぐに、「うん、がんばる! 祷、一緒にがんばろう」と返信が来た。


 いよいよ明日か。
 短期間だったはずだが、長かった。という思いもある一方、あっという間だったようにも思えた。

 明日は明日出せる全部を、出し切ろう。
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