スルドの声(反響) segunda rezar

桜のはなびら

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就寝

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 さて、私も寝よう。

 目を閉じたまま少し集中しようと試みた。が、できない。
 寝がけにがんちゃんがあんな刺激的なこと言うから。
 はっきり言って、心が沸き上がるくらい嬉しかった。
 ちょっと興奮しすぎてすぐには眠れそうにない。
 がんちゃんは隣で呑気に寝息を立てている。

 無理に寝よう寝ようと思えば思うほど、眠気は遠ざかっていくものだ。
 自然に身を任せ、しばらくは思考に委ねてみよう。


 今日は楽しかったな。

 
 ほづみやひいだけでなく、ルイとアリスン、みことともたくさん話せた。
 個々でも話せてお互いの解像度を上げられたと思うが、がんちゃんも交えて大勢で話せたことが、私にとっては宝物のような思い出になってくれた。

 部屋でのトークは、そのほとんどの時間がなんの実りもないくだらない話だった。
 誰もが笑顔だった。なんなら、終始大笑いしていた。
 私にとっては宝物となった、なんでもない時間。
 きっとみんなにとっても、掛け替えのない思い出のひとつになれていそうで、なんだか暖かな気持ちになれた。
 
 本当に。とても楽しかった。
 
 こんな日が続けば良いのになと思う。

 
 旅先という非日常な背景はあるも、行為自体はひとが集まれさえすれば、いつでも、どこでも可能なことだ。
 何ら特別ではない行為ですら、とても楽しかったのだ。
 きっとやろうと思えばいつだって楽しい日になる。
 必要なのは仲間だけ。

 
 先ほど語り合ったみんなの顔を思い浮かべた。

 思い浮かぶ表情はみんな笑顔だ。

 先ほどの場にいなかったメンバーの顔も思い浮かべた。

 彼らもまた、楽しそうにサンバを踊り、楽器を演奏する笑顔の表情だった。

 
 みんなの居場所。
 みんなが居たいと思える場所。
 入りたい場所。戻りたい場所。
 
 
 改めて、『ソルエス』という場への敬意と感謝を。そして、その場を創ることへの参画を、思った。
 サンバという文化を、携わることで得られる歓びと興奮と愉しさと感動を、思った。

 享受するだけではない。私から何ができるだろうか。
 やりたいこと、やってみたいことはたくさんある。
 どうやるか、具体的に少しずつ考え、そして行動に移していきたい。

 期待に溢れる未来しかないのは、きっと相当に幸せなことだ。
 それを当たり前とは思わず、噛み締めるように過ごさせてもらおう。

 まずは明日だ。

 明日はスタジアムのある鳴門まで移動だ。明日の練習も宿泊も鳴門で行うことになる。

 明日は新たなサンビスタとの出会いがある。
 明日は初めての編成でスルドを鳴らせる。
 午後はフリータイムだ。遠出は無理だろうが徳島を観光しよう。
 
 
 きっと明日も楽しい日になる。
 楽しみだ。
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