スルドの声(反響) segunda rezar

桜のはなびら

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夜中のおしゃべり

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 私とがんちゃんは宿泊費節約のためツインの部屋をとっていた。ほづみとひい、マルガとルイも同じようにしている。

 このホテルがビジネスホテルかシティホテルかはよくわからないが、国際的なホテルのランクで言えばエコノミークラスだ。
 いわゆる普通クラスのホテルだが客室は広く、二十五平米はありそうだった。ベッドがふたつ置いてあるとは言え六人が入っても余裕がある。
 ただ、椅子がたくさんあるわけではないので、ベッドを使用する私とがんちゃんの勧めでみんなふたつのベッドの上にゆるく輪になるような配置で座り込んだ。


 腹ごなしが目的なのだから、ノンカフェインのドリンクだけで話そうと言っていたのに、既にいくつかのスナック菓子がパーティー仕様で開けられている。
 これでは食べきるしかないじゃない。

 
「そんでカレシとはどうなん?」

 
 さすがひい。いきなりぶっこむ。
 みことは彼氏持ちか。まああの見た目だ。人気はあるだろう。いても全然不思議ではない。

 
「あー、別れた」

 
 そうか、別れたのか。新規登録情報が早々と最新情報に更新された。

 
「はや!」
 
「あんな仲良かったのに」
 
「ね、イベント観に来てくれたりさ。良く迎えにも来てくれてたし、すごく大事にされてたじゃない」
 
「んー、なんか重くて」

 
 わからなくもない。みことの見た目はかなり目を引くレベルだ。
 本人は何の意識をしていなくても、余程ちやほやされてきた男子以外にとってはいわゆる高嶺の花となるだろう。

 話を聴いていると、案の定彼氏の方から告白されて付き合うことになったようだ。

 見せてもらった写真には、仲良く顔を寄せて写っているふたり。
 今風の男の子でちょっと可愛らしい感じだ。お似合いともいえるが、ルッキズム的な価値観で見ればまあ凡庸。みこととは格差を感じられずにはいられない。
 それでもみことの方は、見た目のつり合いなんて概念すらなく、当時恋人は居なく、恋人が欲しいと思っていて、比較的仲の良い男子からの告白に、断る理由はあまりないなと言う理由で受け入れたという背景があった。

 始まりこそ深い思慮に基づいたものではなかったけれど、彼氏・彼女と言う関係を前提に日々を積み重ねれば、自ずと芽生え育まれるものもあったはずだ。当のみことはつり合いなんて気にしていなかったのだから。
 しかし彼氏の方が、望外の恋人の獲得に、周りからの冷やかしやらやっかみやらも加え、いくらでも選択肢を持つみことをある意味心配し、ある意味では管理したくなっていった。
 その結果、あらゆる選択肢を持つみことは、あっさり関係の解消を決意し、実行したという流れだ。
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