スルドの声(反響) segunda rezar

桜のはなびら

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気構え、心構え

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 ルイの母であるマルガとも、今度みんなでカラオケ行きたいねーみたいな話が出ていた。

 果たされないままの約束が増えていくなんて、学生でも社会人でも良くあることだろう。
 社交辞令の意味合いの薄い学生の約束は、濃淡はあれどその時点に於いてはやりたかったことのひとつではあるはずだ。
 ひとつひとつ、少しずつでも叶えていきたい。
「消化」ではなく、ちゃんと思い出の一ページになるように。
 
 そんな話をルイとアリスンにしたら、ふたりとも大いに賛成してくれた。
 
 元々オープンではあるが硬さもあるルイだったが、航路の後半に差し掛かる頃には、ルイは積極的に自分の話をしてくれるようになっていた。

 ルイは二十歳の年にハイーニャコンテストに出るための研鑽を、計画立てて実施してきているのだという。

 ハイーニャとは、正式名称『ハイーニャ・ダ・バテリア』が示す通り、『バテリアの女王』としての立ち位置を担う、エスコーラにひとりのみ存在する特別なダンサーだ。
 女王はバテリアの前に立ち、バテリアを鼓舞するように踊る。

『ソルエス』では、ハイーニャの資質として、ダンサーとしての技術の高さに加え、他から模範とされるような女王としての品格、バテリアの支持を得ていることが求められている。

 
 十代の前半から明確な目標を掲げ、計画を立て、都度修正しながらも実施してきているルイ。
 こういうひとは、いつか必ずゴールにたどり着くものだ。歩みさえ止めなければ。

 成長が楽しみながんちゃんの同世代がここにもいたことに、何故か頼もしさを覚えた。

 
 ダンサーとは言え、バテリアの女王なのだから、私たちバテリアにも関わることだ。
 ハイーニャと言う存在のことは認識していたし、役割や意味合いも把握していたが、そういうルーツを持つあくまでも一パートとしてしか捉えていなかった。

 年若いハイーニャ候補でさえ、ここまで考えているのだ。
 ハイーニャと言う存在と、それを担う者の並々ならぬ決意や覚悟や想い。これはバテリアの一員として知っておくべきだろう。
 さらに言えば、サンバのエスコーラに於ける様式も、エスコーラに所属する身としては知っておきたい。

 エスコーラの象徴足る『バンデイラ』。これは「旗」と言う意味で、国で言う国旗に相当する旗(バンデイラ)である象徴旗のことを、『パビリャオン』という。
 それを持つ『ポルタ・バンデイラ』と、ポルタをエスコートする『メストリ・サラ』のペアを『カザウ』という。
 このカザウも、見た目は一パートだが、先述の通り大事な意味を持っている。
 ちなみに『バンデイラ』つまり『パビリャオン』は、カザウだけが触ることを許されていて、エスコーラの代表である『プレヂデンチ』ですら安易には触れられないのだ。

 サンバやエスコーラの文化・様式について、意味を知るだけでなく、背景を含めた意図を識ることが必要だろう。

 
 スルドのワークショップはいくつか調べていたが、サンバ文化に関するワークショップなどを調べてみても良いかもしれない。
 勿論メンバーの中にも造詣の深いものは多いだろうから、機会を見つけて教えてもらおう。
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