177 / 215
ルイの気持ちが込められたもの
しおりを挟む
ルイは微笑みながらじゃがりこを齧っていた。
ルイが超えてきたものを思うと、かつて関係が冷えようとしていた同輩が、プレゼントした物を未だに身に着けていることに対して零れた先ほどの笑顔の意味が、特別なものであると理解できた。
尚、余ったキーホルダーのうちいくつかは、その時、特に助けられた女性ダンサーに渡したらしい。
ひとつは、その時期メインして使っていた瑠璃色の衣装をオーダーで製作してくれた、日頃お世話になっているフリーのサンビスタ。
ひとつは、ルイと同じく創設メンバーの娘で、子どもの頃からダンサーとして『ソルエス』に所属し、ルイとは姉妹のように過ごしていたジアン。
彼女は今はチームの旗である『バンデイラ』を司る『ポルタ・バンデイラ』という重要な立ち位置のダンサーだ。
ポジションが変わっても、姉妹のような関係性は変わらず、ある日通話口で、泣いていることを悟られないようただ無言でいたルイに、ジアンは何も言わず、通話を切らず、ただ無言で付き合ってくれたのだという。
ひとつは、成り行きと流れで結果として悩みの相談に乗ってくれたルイと同じ名を持つるいぷる。
ジアンの職場の後輩であるるいぷるはジアンによく懐いていて、妹的立場を自認しているルイにとっては複雑な心境になる相手だった。
誰に対しても垣根なく次々と仲良くなっていく姿に、同世代との関係作りもうまくいかなかったルイはコンプレックスを刺激され、正直言えば苦手意識を持っていた。
だから、悩みの相談なんて、するはずはなかった。
けれど、いつのまにかお互いの境遇を話すに至り、双方が相手のために涙するというよくわからない状況になったのだそう。
その後、ある練習時に、るいぷるのちょっとした話題の振りにて、ぎすぎすした空気なんかなかったように、ルイはひいやみことと世間話に興じ、年少組三人やほづみも加わって和気藹々とした雰囲気を作ることができた。
学生メンバー同士の関係性は、それをきっかけに明確に良くなった。
ルイは密かに、るいぷるの作戦だったと思っていた。そのお礼として、渡したのだそうだ。
当時ルイが仲間たちに配ったものの話を、隣の隣で聴いていたアリスンは羨ましそうな顔をしていた。
「その頃はいのりもがんちゃんも、アリスンも有働くんと名波くんも居なかったから。次行くときはみんなの分も買ってくるね」
ルイは今では『ソルエス』のバンドメンバーでもあるタロとKHOを、サンバネームではなく学校での呼び方で呼んでいた。アリスンを含めた四人は、学校では軽音部で同じバンドのメンバーなのだ。
もう二年経っている。同じシリーズのキーチェーンがまだ販売されているのかはわからないがその気持ちが嬉しかった。
「それは嬉しいなぁ。でも、ディズニーならみんなで行くって手もあるよね」
「あ、それ良い! 受験始まる前に行きたいなぁ!」
「行きたい! 実はあんまいったことないの」とアリスンも乗り気だ。ディズニープリンセスにもいそうなアリスンだが、彼女ならいつか、ハリーポッターのテーマパークでもできたら、すごく似合いそうだ。
大人数になればなるほど、予定を合わせるのは大変だ。
まして、学生は行事が多すぎる。加えて、定期的に人生の大事がやってくる。
高校受験が視野に入ってくる中学生組、大学受験が控える高校生組、就活が始まる大学生組。学生と言う範囲でくくるなら、さらに下に小学生組もいる。
幸い、それぞれの層の年齢がある程度揃っているため、最重要な進学や就職に関するイベントに動き始めるのはもう少しだけ先のこと。やるなら近い内だ。
こうやってまたひとつ、やりたいことが増えてゆく。
ルイが超えてきたものを思うと、かつて関係が冷えようとしていた同輩が、プレゼントした物を未だに身に着けていることに対して零れた先ほどの笑顔の意味が、特別なものであると理解できた。
尚、余ったキーホルダーのうちいくつかは、その時、特に助けられた女性ダンサーに渡したらしい。
ひとつは、その時期メインして使っていた瑠璃色の衣装をオーダーで製作してくれた、日頃お世話になっているフリーのサンビスタ。
ひとつは、ルイと同じく創設メンバーの娘で、子どもの頃からダンサーとして『ソルエス』に所属し、ルイとは姉妹のように過ごしていたジアン。
彼女は今はチームの旗である『バンデイラ』を司る『ポルタ・バンデイラ』という重要な立ち位置のダンサーだ。
ポジションが変わっても、姉妹のような関係性は変わらず、ある日通話口で、泣いていることを悟られないようただ無言でいたルイに、ジアンは何も言わず、通話を切らず、ただ無言で付き合ってくれたのだという。
ひとつは、成り行きと流れで結果として悩みの相談に乗ってくれたルイと同じ名を持つるいぷる。
ジアンの職場の後輩であるるいぷるはジアンによく懐いていて、妹的立場を自認しているルイにとっては複雑な心境になる相手だった。
誰に対しても垣根なく次々と仲良くなっていく姿に、同世代との関係作りもうまくいかなかったルイはコンプレックスを刺激され、正直言えば苦手意識を持っていた。
だから、悩みの相談なんて、するはずはなかった。
けれど、いつのまにかお互いの境遇を話すに至り、双方が相手のために涙するというよくわからない状況になったのだそう。
その後、ある練習時に、るいぷるのちょっとした話題の振りにて、ぎすぎすした空気なんかなかったように、ルイはひいやみことと世間話に興じ、年少組三人やほづみも加わって和気藹々とした雰囲気を作ることができた。
学生メンバー同士の関係性は、それをきっかけに明確に良くなった。
ルイは密かに、るいぷるの作戦だったと思っていた。そのお礼として、渡したのだそうだ。
当時ルイが仲間たちに配ったものの話を、隣の隣で聴いていたアリスンは羨ましそうな顔をしていた。
「その頃はいのりもがんちゃんも、アリスンも有働くんと名波くんも居なかったから。次行くときはみんなの分も買ってくるね」
ルイは今では『ソルエス』のバンドメンバーでもあるタロとKHOを、サンバネームではなく学校での呼び方で呼んでいた。アリスンを含めた四人は、学校では軽音部で同じバンドのメンバーなのだ。
もう二年経っている。同じシリーズのキーチェーンがまだ販売されているのかはわからないがその気持ちが嬉しかった。
「それは嬉しいなぁ。でも、ディズニーならみんなで行くって手もあるよね」
「あ、それ良い! 受験始まる前に行きたいなぁ!」
「行きたい! 実はあんまいったことないの」とアリスンも乗り気だ。ディズニープリンセスにもいそうなアリスンだが、彼女ならいつか、ハリーポッターのテーマパークでもできたら、すごく似合いそうだ。
大人数になればなるほど、予定を合わせるのは大変だ。
まして、学生は行事が多すぎる。加えて、定期的に人生の大事がやってくる。
高校受験が視野に入ってくる中学生組、大学受験が控える高校生組、就活が始まる大学生組。学生と言う範囲でくくるなら、さらに下に小学生組もいる。
幸い、それぞれの層の年齢がある程度揃っているため、最重要な進学や就職に関するイベントに動き始めるのはもう少しだけ先のこと。やるなら近い内だ。
こうやってまたひとつ、やりたいことが増えてゆく。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

ポエヂア・ヂ・マランドロ 風の中の篝火
桜のはなびら
現代文学
マランドロはジェントルマンである!
サンバといえば、華やかな羽飾りのついたビキニのような露出度の高い衣装の女性ダンサーのイメージが一般的だろう。
サンバには男性のダンサーもいる。
男性ダンサーの中でも、パナマハットを粋に被り、白いスーツとシューズでキメた伊達男スタイルのダンサーを『マランドロ』と言う。
サンバチーム『ソール・エ・エストレーラ』には、三人のマランドロがいた。
マランドロのフィロソフィーを体現すべく、ダンスだけでなく、マランドロのイズムをその身に宿して日常を送る三人は、一人の少年と出会う。
少年が抱えているもの。
放課後子供教室を運営する女性の過去。
暗躍する裏社会の住人。
マランドロたちは、マランドラージェンを駆使して艱難辛苦に立ち向かう。
その時、彼らは何を得て何を失うのか。
※表紙はaiで作成しました。



太陽と星のバンデイラ
桜のはなびら
現代文学
〜メウコラソン〜
心のままに。
新駅の開業が計画されているベッドタウンでのできごと。
新駅の開業予定地周辺には開発の手が入り始め、にわかに騒がしくなる一方、旧駅周辺の商店街は取り残されたような状態で少しずつ衰退していた。
商店街のパン屋の娘である弧峰慈杏(こみねじあん)は、店を畳むという父に代わり、店を継ぐ決意をしていた。それは、やりがいを感じていた広告代理店の仕事を、尊敬していた上司を、かわいがっていたチームメンバーを捨てる選択でもある。
葛藤の中、相談に乗ってくれていた恋人との会話から、父がお店を継続する状況を作り出す案が生まれた。
かつて商店街が振興のために立ち上げたサンバチーム『ソール・エ・エストレーラ』と商店街主催のお祭りを使って、父の翻意を促すことができないか。
慈杏と恋人、仕事のメンバーに父自身を加え、計画を進めていく。
慈杏たちの計画に立ちはだかるのは、都市開発に携わる二人の男だった。二人はこの街に憎しみにも似た感情を持っていた。
二人は新駅周辺の開発を進める傍ら、商店街エリアの衰退を促進させるべく、裏社会とも通じ治安を悪化させる施策を進めていた。
※表紙はaiで作成しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる