スルドの声(反響) segunda rezar

桜のはなびら

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ルイ

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 ルイがプチを取り出したポーチにはミッキーのキーチェーンが下げられていた。


「あれ、ほづみとひいはドナルドとデイジーを付けてたよね」

 
 なんせ世界のディズニーだ。
 ディズニーのキャラクターをつけている者が複数いてもさして珍しくはない。が、規格的に同じラインのキーチェーンに思えた。
 多種多様なグッズ展開がなされているであろうディズニー関連だ。同じシリーズが被るのは少し珍しいのではないかと思った。

 
「あ、うん。前に友だちとディズニー行ったとき、メンバーへのお土産で、同世代メンバーへは同じシリーズのキーチェーンを買ってきたの。ずっとつけてくれてて嬉しい」

 
 ルイは本当に嬉しそうに言っていた。

 二年前のことらしい。
 なんでも、当時いたルイを含めた同世代メンバーは、ほづみ、ひい、みこと、わゆ、みー、ゆうの六名。に対し、もらう側が同じ種類の取り合いや被りを避けたいといった想い、またはお揃いにしたいという想いなど、あらゆる要望クリアするために、ミッキー、ミニー、ドナルド、デイジー、ぷーさん、スティッチ、グーフィーをふたつずつ買ってきたのだそうだ。


 ディズニーのお土産は決して安くはなかっただろう。
 それを諸々の配慮を加え、人数分以上に買ってきたようだ。当時十四歳の中学生が。


 がんちゃんはルイのことを、少し硬い感じのある部分が自分と似ていると評していたが、色々と考えすぎてしまうところも似ている。


 その頃のルイは、同世代ダンサーのうち年長で既に大人のパシスタに混ざっていたほづみを除く六人の中でリーダー的な役割を担っていたが、ストイックなスタンスのあまり、求心力が伴わず空回りしていて、なんなら不仲と不仲の一歩手前の間くらいの微妙な空気感があったらしい。

 同じ年齢のひいやみことは、ダンサーとして恵まれた容姿と体格を持ち、センスにも溢れている。サンバ暦の長いルイにとっては、後輩であり教えるべき対象でありながら、凄まじい成長で肉薄してくる同じ年齢の後輩に、焦燥感を感じなかったとは思えない。
 類い稀なるセンスで頭角を表してきた飛ぶ鳥を落とす勢いのひいとみことは、同じ年齢でありながらルイとは差をつけられて評される状況に、歯痒さと悔しさを感じていたに違いない。

 そんな、同じ年齢の思春期の女性ならではの、ギクシャクとした関係性が、きっとあったのだろう。


 そのことを、ルイは自分に問題があったという側面を軸にして掻い摘んで話してくれた。

 自分にとっては良い情報とは言えない過去を、何でもないことのように話せるのも、がんちゃんに近いと思った。

 きっとルイは、その状況にきちんと向き合い、自分の駄目な部分もあらわにし、受け止め、乗り越えたのだろう。
 その、決して大きくはない身体と、身体に比例するかのように太いとは言えない柔く、まだ幼かった心で。

 
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