スルドの声(反響) segunda rezar

桜のはなびら

文字の大きさ
上 下
153 / 215

顔合わせ(LINK:primeira desejo 116)

しおりを挟む
 阿波ゼルコーバの担当者井村さんとの初顔合わせは、インターネットを利用したモニター越しでの会見の場にて行われた。
 当初はこの形でのプレゼンも想定されていたが、姫田グループへのプレゼンにて受注は確定したため、挨拶の場としてセッティングされた。


 それぞれが接続すると、参加者の分だけ画面が分割されてしまう。
 ソルエスはまとまって、エンサイオ会場から繋がせてもらった。ソルエスからはプレゼン参加の四名に加え、代表のハルが参加する。

 
 エンサイオはバテリアとダンサーで分かれて行い、途中でミーティングを挟んで、その後ダンサーの練習場でダンサーとバテリア合同の練習となる。
 今日は最初に合同で練習していてもらい、普段バテリアが練習しているスタジオの方は開けてもらっていた。
 端末のセッティングができ、防音機能もあるので打ち合わせの用途にも適している。

 接続すると、開始時間までは少し余裕のある時刻だが、既に担当の井村さんは接続済みだった。
 安達さんは未だなので、紹介を受ける前に顔を合わせることになってしまった。
 とりあえずこちらからは口々に挨拶をすると、井村さんからもやや遅れて挨拶が返された。

 
 当初の流れは、実演部分は姫田グループへのプレゼン時に安達さんの方で録画されたものを井村さんと共有し、プレゼンを遠隔でリアルタイムで行うといったイメージだったが、遠隔でのやり取りは意外とタイムラグがあって、プレゼンだけだったとしても、この形式が決定の場となる状況にはならずに済んで改めてほっとした。

 
 尚、感謝祭にてサンバ隊のパフォーマンスを採用することは確定していても、説明は必要だったので、安達さんの方からプレゼン資料一式と、撮影してくださった動画は予め井村さんと共有してもらっている。

 
「観ましたよー! いやぁ、すごかった! 是非直接観覧したかったなぁ」
 

 なので、挨拶もそこそこに、井村さんが快活な笑顔を添えての言葉は、安達さんが送ってくれた実演動画のことだろう。

 
 ほどなく安達さんが接続し、全員が揃った。

 
 安達さんが姫田グループと阿波ゼルコーバ側を改めて紹介し、それを受ける形で、ハルがサンバパフォーマンス採用に関してと、本日の機会をいただいたことに関するお礼を述べ、ソルエス側の紹介をおこなった。

 ハルの言葉を待ってから、私たちは順番に、自己紹介とあいさつをさせてもらった。

 
「こちらこそ、素敵なご提案ありがとうございました! 感動しました! 先ほどもお伝えしましたが、いやー、素晴らしかった!」

 
 ストレートな誉め言葉が続く。
 調子のいいタイプというより、感情が表に現れやすいタイプのように思える。ならば、この言葉は素直な賞賛として発されているものと捉えて差し支えないだろう。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

ポエヂア・ヂ・マランドロ 風の中の篝火

桜のはなびら
現代文学
 マランドロはジェントルマンである!  サンバといえば、華やかな羽飾りのついたビキニのような露出度の高い衣装の女性ダンサーのイメージが一般的だろう。  サンバには男性のダンサーもいる。  男性ダンサーの中でも、パナマハットを粋に被り、白いスーツとシューズでキメた伊達男スタイルのダンサーを『マランドロ』と言う。  サンバチーム『ソール・エ・エストレーラ』には、三人のマランドロがいた。  マランドロのフィロソフィーを体現すべく、ダンスだけでなく、マランドロのイズムをその身に宿して日常を送る三人は、一人の少年と出会う。  少年が抱えているもの。  放課後子供教室を運営する女性の過去。  暗躍する裏社会の住人。  マランドロたちは、マランドラージェンを駆使して艱難辛苦に立ち向かう。  その時、彼らは何を得て何を失うのか。 ※表紙はaiで作成しました。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

ナースコール

wawabubu
青春
腹膜炎で緊急手術になったおれ。若い看護師さんに剃毛されるが…

サンバ大辞典

桜のはなびら
エッセイ・ノンフィクション
サンバチーム『ソール・エ・エストレーラ』の案内係、ジルによるサンバの解説。 サンバ。なんとなくのイメージはあるけど実態はよく知られていないサンバ。 誤解や誤って伝わっている色々なイメージは、実際のサンバとは程遠いものも多い。 本当のサンバや、サンバの奥深さなど、用語の解説を中心にお伝えします!

バレー部入部物語〜それぞれの断髪

S.H.L
青春
バレーボール強豪校に入学した女の子たちの断髪物語

スルドの声(嚶鳴) terceira homenagem

桜のはなびら
現代文学
 大学生となった誉。  慣れないひとり暮らしは想像以上に大変で。  想像もできなかったこともあったりして。  周囲に助けられながら、どうにか新生活が軌道に乗り始めて。  誉は受験以降休んでいたスルドを再開したいと思った。  スルド。  それはサンバで使用する打楽器のひとつ。  嘗て。  何も。その手には何も無いと思い知った時。  何もかもを諦め。  無為な日々を送っていた誉は、ある日偶然サンバパレードを目にした。  唯一でも随一でなくても。  主役なんかでなくても。  多数の中の一人に過ぎなかったとしても。  それでも、パレードの演者ひとりひとりが欠かせない存在に見えた。  気づけば誉は、サンバ隊の一員としてスルドという大太鼓を演奏していた。    スルドを再開しようと決めた誉は、近隣でスルドを演奏できる場を探していた。そこで、ひとりのスルド奏者の存在を知る。  配信動画の中でスルドを演奏していた彼女は、打楽器隊の中にあっては多数のパーツの中のひとつであるスルド奏者でありながら、脇役や添え物などとは思えない輝きを放っていた。  過去、身を置いていた世界にて、将来を嘱望されるトップランナーでありながら、終ぞ栄光を掴むことのなかった誉。  自分には必要ないと思っていた。  それは。届かないという現実をもう見たくないがための言い訳だったのかもしれない。  誉という名を持ちながら、縁のなかった栄光や栄誉。  もう一度。  今度はこの世界でもう一度。  誉はもう一度、栄光を追求する道に足を踏み入れる決意をする。  果てなく終わりのないスルドの道は、誉に何をもたらすのだろうか。

処理中です...