スルドの声(反響) segunda rezar

桜のはなびら

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買い物を終えて(LINK:primeira desejo 115)

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「パンデイロも買ったの?」

 
 がんちゃんが尋ねた。

 
「うん。がんちゃんも使って良いからね」
 
「うん、ありがとう。祷、買い物好きだよね」


 そう言うがんちゃんの目には、ほんの少しだけ呆れの色が滲んでいた。

 お......? これはこれで、なんと言うか......良いね。

 
「そう? 普通だよー。必要なものは必要だから買うんだし。必要ないものは買わないもの」
 
「そうかなぁ。今年もスタバのハロウィン限定のやつ買ってくれたけど、去年のあるよ? 必要、ではなくない?」


 ああ、がんちゃんは色々な角度から私を堪らない気持ちにさせてくれる。
 なんてできた妹なのだろう。かわいい。

 
「あー、まぁ……それは、考え方、切り口の問題だねー。単なる液体を入れる器としての機能のみを求めるなら、相応の素材で相応の形をしているものが唯一つあれば良い。それ以上は余剰イコール不必要ともいえる。けど、人生ってそういうものじゃないでしょ? 栄養だけ摂れれば良いなら点滴で充分ってことにはならないもんね。幸福感ってのが必要なの」
 
「そういうのはわかるよ。もらったのはかわいかったし、嬉しかったし」

 
 慎み深いがんちゃん、かわいいな。
 消費文明に毒されないがんちゃん。サスティナブルだな。うん、がんちゃんには是非とも持続可能であってほしい。


 大丈夫、安心して良いよ、がんちゃん。私は無尽蔵に買ったりはしないから。

 ただ、がんちゃんの笑顔は、歓びは、プライスレスだし、その年、その日、その瞬間のがんちゃんは一期一会だし、二度とは訪れない機会のすべてをできるだけ網羅するとしたら、それは、やはり、「必要」と言えるだろう。そう、「必要」の定義は絶対的である一方、人の数だけ存在する相対的な「必要」もあるのだ。

 しかし慎み深いがんちゃんを変に説得したくはなく、がんちゃんの言葉には笑顔で返しておいた。



 
 買い物など、言っても何時間もかかるものではない。
 商品数は多いが専門店ならではでカテゴリー自体は少なく、広いわけでもない店内は一通り見終えた。
 他のメンバーも同様のようで、少し倦怠気味な雰囲気が出始めたところでお店を出た。
 みんなも何かしらかの買い物はできたようだ。


 せっかくみんなで集まっているのだ。買い物に付き合ってもらったお礼に、帰り道の途中でカフェに寄りたいと考えていた。
 日暮里にあるスイス料理を出してくれるカフェだ。
 日暮里からも西日暮里からも若干距離があり、少し坂もあるが、今日は天気も良いし、大きなスルドを持ち運ぶ練習だと思えばちょうど良い。
 みんなも多少歩くことも含めてカフェに寄ることに賛同してくれた。

 
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