スルドの声(反響) segunda rezar

桜のはなびら

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打ち上げでのコミュニケーション

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 ジナとサラはグラスを持ったまま元の席へと戻っていった。ジナは上機嫌で、しかし足元はおぼつかない。それをサラがフォローしている。
 何やら楽しそうで良かった。

 
 島は学生メンバーだけの状態になった。ほどなくして、バンドメンバーのタロとKHOが、同じくバンドメンバーの大人たちに連れられて離脱した。
 彼らはルイとアリスンの同級生で学校でも軽音部で同じバンドに所属している。
 貴重な男子学生が場を離れ、島は女子学生のみとなる。全員未成年のためお酒は入っていないが、それなりには騒がしい。
 
 話題の中心はまずは今日のパフォーマンスの内容となる。
 
 ゆうは足が痛くて困ったことを話すと、同じ年齢のみーが「かわいそー」と、あまりかわいそうじゃない感じで言っている。ゆうがえなの肩を軽くはたく。
 仲が良いんだろうな。
 
 ずっとついてきてくれた母娘のことも話題になった。ルイが感激していて、パレード中はステージで準備をしていたカントーラのアリスンに、パレードの様子を嬉しそうに話し、がんちゃんも「あのこかわいかったよねぇ」と顔を綻ばせていた。
 
 私にとっては初のイベント体験だ。パレードの中、ステージの脇という演者の熱狂を間近に感じられるという意味では特等席ともいえるポジションで体感できた感想、感動を素直に伝えると、みんな喜んでくれた。
 
 ゆうやみーよりも更に年少のえなとしおの母親が、そろそろ帰るためにそれぞれの娘を呼びに来た。母親二人もスタッフとして参加し、打ち上げに参加していた。
 周囲の島は騒がしくなりつつある。お酒が程よく入ってきているのだろう。
 
 これ以上大人たちのお酒が深くなって埒が明かなくなる前に、と私とほづみは一旦自分たちの席を離れ、各島に行って一通り乾杯して回った。
 
「スタッフお疲れ様! 色々とありがとー」
「この時期でもまだまだ暑いよねぇ。給水助かったよ!」
 
 ヂレトールのサエコとバテリアリーダーのメイがいる島では殊更感謝され、もてなしてもらえた。
 飲みの場では仲良く飲んでいる二人だが、演奏に関してはお互いの立場でぶつかることもある。本気で意見を伝えあえる関係性なのだろう。
 
 きっとこのチームは、そこここでそう言った関係性ができているように見えた。もちろん、すべてがすべてそんなにきれいな関係性を築けているわけではないのだろうが、芯なる部分、軸たる部分については、リレーションとコミュニケーションがきちんととれている。だから、規模の強弱で言えば他チームと比較して「強い」とは言い切れないのかもしれないが、組織としての「勁さ」がある。
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