スルドの声(反響) segunda rezar

桜のはなびら

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バイアーナ、サラ

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 サラは『パシスタ』のほか、コステイロを身に付けないドレスで踊ったり、『バイアーナ』で参加したりと、手薄なポジションに積極的に入ってくれる『ソルエス』のユーリティリープレーヤーだ。
 今日は『バイアーナ』がジナひとりだけになってしまいそうだったので、サラは『バイアーナ』で参加していた。

 今日はふたりきりの『バイアーナ』同士で長いパレードとステージをやり切った戦友だ。新たな友情でも芽生えたのだろうか。
 サラは私の手からジナを守ろうと身体を張っている。

 なるほど、確かにサラの言う通り、早くもジナはよくわからないことを言うようになっている。もしくは同じことばかり喋っている。それも意味のない内容の。これが「できあがっている」と言うやつかもしれない。

 しかし、甘い。サラの持つグラスも空ではないか。ジナが壊れてしまったのなら、サラが受け止めなくては、ね。

 
「サラー。いぇー」

 
 ジナの真似をしながらからのグラスにワインを注いでやる。

 
「えー⁉︎」


 困ったような表情をしているサラ。それで逃れられるとでも?

 
「いぇー」

 笑顔で私のグラスをサラのものに重ねる。もちろん、私はノンアルコールだ。

 
 会話にすらなっていないやり取りながら、サラに何かが伝わったのか、こくこくとワインを飲んでいる。

 
「うわー、いのり魔性―」
「いのり、キャバクラに勤めたらすごい売り上げ叩き出しそー」
 
 横並びにいたみこととゆうがいじってくる。


 ゆうは童顔でかわいい。
 そんな幼い顔立ちのゆうから、キャバクラなんて言葉が出てきて一瞬どきりとしたが、ゆうももう中学生だ。

 ゆうの顔の印象は以前に見せてもらった小学生の頃とあまり変わっていない。
 幼稚園の頃からサンバを続けている実は大ベテランだが、その頃の写真と比べても変わってないまである。
 が、身体は順調に育っていて、知り合って数か月の私でさえ、初めて会った日よりも背が伸びてるのではと思うほどだ。精神面や知識面だって日に日に成長しているのだろう。


 みんな、この『ソルエス』に入って、一緒に練習したり、イベントに出たり。浅草サンバカーニバルでは、テーマを作ったり衣装を造ったりもする。
 時には意見がぶつかったり、揉めたりもするらしい。
 家族のような団体だけど、新しい人が入る一方、辞めていってしまうひともいる。
 老若男女、いろんな他人が集まって、笑ったり騒いだり、時には怒ったり泣いたりしながらも、一年一年を過ごしている。

 子どもたちの成長には目を見張るものがあるが、おとなのみんなだって等しく日々を重ねている。


 今、私はすごく楽しい。
 この楽しい場は、この場にいるみんなが創っている。

 その時間が積み上がって日々となり、月日となる。

 私にこんなにも楽しい時間をくれた『ソルエス』に、私もみんなが楽しめる時間を、機会を創っていきたい。そんな『ソルエス』に入りたいと思うひとを、増やしていきたいな。
 
 


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