スルドの声(反響) segunda rezar

桜のはなびら

文字の大きさ
上 下
97 / 215

サンバ文化振興計画

しおりを挟む
 サンバという文化について、私には思うところがある。


 私がエスコーラに所属して識ったサンバのダンス。それは格好良く美しいものとして私の中に入ってきた。
 サンバの曲や歌はどうか。気持ちを昂らせ、またはしっとりと聴かせる曲たちは、広く聴かれている他ジャンルの楽曲と比較して、特別聴きにくいとか、癖があるというものではなく、違和感なく聞くことができた。

 現代のこの国の文化にて、流行っていたり人気があったりする音楽やダンスなどに対し、良いと思える私が、サンバのダンスや楽曲もまた違和感なく好ましいと思えているのだ。
 同等の価値観であろう平均的な日本人に、受け容れてもらえないとは思えない。

 要は見せ方、伝え方なのだと思う。
 単純に、一般的な日本人にとって、馴染みのある音楽やダンスに溶け込ませて知らせることができたら、ハードルは下がるのではと思った。或いは、興味を持たせた後で、「これ、実はサンバなんだ」と認識させるのも良い。


 別の切り口もある。
 例えば独特なデザインのエスコーラTシャツ。これをもう少し普段遣いのできるようデザインをアジャストし、ファッションの分野からサンバ文化を染み込ませていく。
 例えばパゴーヂという飲食と音楽とダンスが融合できる文化は、クラブなどで日常的に音楽やダンスをアルコールと共に楽しめるひとたちへの選択肢、ジャンルのひとつとしてカスタマイズする。

 サンバという多彩な側面を持つ文化を、特異なものとして紹介するのではなく、敷居の高い遠い異国の文化のまま、飛び込んでくるひとが現れるのを待つのでもなく、日本国内で馴染みのある文化や遊びのなかに、溶け込ませることによる浸透と広がりにて、サンバを楽しむひとたちを増やせるのではないかと思っている。
 その仕掛けを展開していきたいと思っている。


 実際に、具体的な動きを少しずつ、進めて行こうと手を進めていた。


 新しいエスコーラシャツの作成にはアイデア出しには関わらせてもらった。
 それを足掛かりに、一般ユーズドへの展開を狙ったグッズ販売としての側面も持つアパレル部門の立ち上げ許可をハルにもらい、デザイン素案やマーケティングは進めながら、デザイナーのルイぷるやコピーライターとアイジ、広告代理店でクリエイティブディレクターを務めるジアンの手を借りながら、形を作るスタートを切った。

 国内で流行している楽曲やダンスのサンバアレンジや、サンバの楽曲のロックアレンジ、ダンスのヒップホップアレンジなど、ミックスやフュージョンの計画も進めていた。

 マイナーなものを周知させるという意味では、町興しのスキームも応用できる。
 キャラクターを立てるのはどうだろうか。
 グッズ販売による周知と収益への効果はもちろん、着ぐるみによるパフォーマンスはサンバパフォーマンスと相性が良さそうだ。


 あらゆる切り口から、同時進行で、サンバへの認知を高める活動、認識を深める取り組みを累ねていく。
 イメージとしては、それぞれに百の手順が必要な百ある有効な手段。手を順次打ち続け、途絶えたものに備え随時十の手段を追加し続ける。
 それくらいして、ようやく異文化を日常に浸透させられると思っている。膨大で、果てしない。
 打つ手を止める行為は停滞ではなく後退に等しいと考えていた。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ナースコール

wawabubu
青春
腹膜炎で緊急手術になったおれ。若い看護師さんに剃毛されるが…

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

ポエヂア・ヂ・マランドロ 風の中の篝火

桜のはなびら
現代文学
 マランドロはジェントルマンである!  サンバといえば、華やかな羽飾りのついたビキニのような露出度の高い衣装の女性ダンサーのイメージが一般的だろう。  サンバには男性のダンサーもいる。  男性ダンサーの中でも、パナマハットを粋に被り、白いスーツとシューズでキメた伊達男スタイルのダンサーを『マランドロ』と言う。  サンバチーム『ソール・エ・エストレーラ』には、三人のマランドロがいた。  マランドロのフィロソフィーを体現すべく、ダンスだけでなく、マランドロのイズムをその身に宿して日常を送る三人は、一人の少年と出会う。  少年が抱えているもの。  放課後子供教室を運営する女性の過去。  暗躍する裏社会の住人。  マランドロたちは、マランドラージェンを駆使して艱難辛苦に立ち向かう。  その時、彼らは何を得て何を失うのか。 ※表紙はaiで作成しました。

坊主女子:スポーツ女子短編集[短編集]

S.H.L
青春
野球部以外の部活の女の子が坊主にする話をまとめました

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

スルドの声(共鳴2) terceira esperança

桜のはなびら
現代文学
何も持っていなかった。 夢も、目標も、目的も、志も。 柳沢望はそれで良いと思っていた。 人生は楽しむもの。 それは、何も持っていなくても、充分に得られるものだと思っていたし、事実楽しく生きてこられていた。 でも、熱中するものに出会ってしまった。 サンバで使う打楽器。 スルド。 重く低い音を打ち鳴らすその楽器が、望の日々に新たな彩りを与えた。 望は、かつて無かった、今は手元にある、やりたいことと、なんとなく見つけたなりたい自分。 それは、望みが持った初めての夢。 まだまだ小さな夢だけど、望はスルドと一緒に、その夢に向かってゆっくり歩き始めた。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...