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実演(LINK:primeira desejo 101)
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さあ、演奏だ!
安達さんの拍手の中、スルドの縁をマレットで叩きカウントを取る。
カッ、カッ、カッ......。
気持ちゆっくり目のカウント音が響く。
その間にがんこも自分のスルドまで移動する。
ほづみもひいを引っ張ってパフォーマンスのために空けられているスペースまで来てポーズを取り固まった。
カッ、カッ、カッと、祷がマレットでスルドの縁を叩きカウントを取る。カウントはゆっくりだ。
ダンっ!
私がスルドを叩いた音を合図に、ほづみとひいが踊り出す。
ほづみが身につけていた身体を隠す布を脱ぎ捨て、それがひらりと舞い落ちる様子も演出的だ。
本当はひいも同じようにするはずだったが、勢いで出てきてしまったためか、布を身につけていなかった。一応、振りだけやっている。
ドンっ!
がんちゃんのスルドから大きい音が鳴る。
まずは『バツカーダ』だ。
メロディも歌もない、打楽器だけでの演奏だ。スローアップという、ゆっくりのリズムでしばらく演奏し、転換のポイントを打ってから、リズムが早くなるという構成を使う。
スロー部分ではダンサーはゆっくりとした移動や演技を、アップでは激しいダンスや、高速のサンバ・ノ・ぺで魅せる。
スルド二本による演奏となるので、私もがんこも、それぞれソロの技法も混ぜてリズムに厚みを持たせていた。
デン、ドン、デン、ドン。
ほづみとひいの、長い手足をしなやかに使ったスローなダンスは妖艶で美しい。
腰も使っていてセクシーで、笑顔にも妖しい魅力が宿っている。
デデッデ! ドンドン! デンドンデデドン!
リズムはゆっくりのままだが、刻む音を入れて綾を出す。
踊るふたりも、ゆっくりなリズムに合わせるようにゆったりとした優美な動きながら、細かい音にも目線や指先、時には揺れる髪などを使った表現で合わせていた。
トカカカカッカッ!
転調のキッカケのバリエーションが鳴らされると、ダンサーは一旦ポーズで止まる。
ドドドドッ! デデンデン! ドゥカカカッドンドン! デデン! ドドン!
早いリズムに変わり、ほづみとひいは激しく躍動感の溢れるダンスを踊った。
嬌声をあげたり、手を叩いたりしながら、観客である安達さんを盛り上げる。
フリーで踊っていたふたりが、どこで合図を交わしたのか、息を合わせてサンバ・ノ・ぺを踏んでいた。
ダンサーに負けてはいられない。
がんちゃんと私の呼と応のリズムの応酬も激しを増す。
駆け抜けるようなアップテンポは、勢いはそのままにキメへと入る。
ドゥカカカッドンドン! デン! ドン! デンッ‼︎
音も動きも、ピタッと止まった。
躍動感と音に包まれていたはずのこの場は、今は動くものも音もない静の空間のはずなのに、激しさの名残があるのは、この場にいる者の心に火を灯したからだろうか。
安達さんの拍手の中、スルドの縁をマレットで叩きカウントを取る。
カッ、カッ、カッ......。
気持ちゆっくり目のカウント音が響く。
その間にがんこも自分のスルドまで移動する。
ほづみもひいを引っ張ってパフォーマンスのために空けられているスペースまで来てポーズを取り固まった。
カッ、カッ、カッと、祷がマレットでスルドの縁を叩きカウントを取る。カウントはゆっくりだ。
ダンっ!
私がスルドを叩いた音を合図に、ほづみとひいが踊り出す。
ほづみが身につけていた身体を隠す布を脱ぎ捨て、それがひらりと舞い落ちる様子も演出的だ。
本当はひいも同じようにするはずだったが、勢いで出てきてしまったためか、布を身につけていなかった。一応、振りだけやっている。
ドンっ!
がんちゃんのスルドから大きい音が鳴る。
まずは『バツカーダ』だ。
メロディも歌もない、打楽器だけでの演奏だ。スローアップという、ゆっくりのリズムでしばらく演奏し、転換のポイントを打ってから、リズムが早くなるという構成を使う。
スロー部分ではダンサーはゆっくりとした移動や演技を、アップでは激しいダンスや、高速のサンバ・ノ・ぺで魅せる。
スルド二本による演奏となるので、私もがんこも、それぞれソロの技法も混ぜてリズムに厚みを持たせていた。
デン、ドン、デン、ドン。
ほづみとひいの、長い手足をしなやかに使ったスローなダンスは妖艶で美しい。
腰も使っていてセクシーで、笑顔にも妖しい魅力が宿っている。
デデッデ! ドンドン! デンドンデデドン!
リズムはゆっくりのままだが、刻む音を入れて綾を出す。
踊るふたりも、ゆっくりなリズムに合わせるようにゆったりとした優美な動きながら、細かい音にも目線や指先、時には揺れる髪などを使った表現で合わせていた。
トカカカカッカッ!
転調のキッカケのバリエーションが鳴らされると、ダンサーは一旦ポーズで止まる。
ドドドドッ! デデンデン! ドゥカカカッドンドン! デデン! ドドン!
早いリズムに変わり、ほづみとひいは激しく躍動感の溢れるダンスを踊った。
嬌声をあげたり、手を叩いたりしながら、観客である安達さんを盛り上げる。
フリーで踊っていたふたりが、どこで合図を交わしたのか、息を合わせてサンバ・ノ・ぺを踏んでいた。
ダンサーに負けてはいられない。
がんちゃんと私の呼と応のリズムの応酬も激しを増す。
駆け抜けるようなアップテンポは、勢いはそのままにキメへと入る。
ドゥカカカッドンドン! デン! ドン! デンッ‼︎
音も動きも、ピタッと止まった。
躍動感と音に包まれていたはずのこの場は、今は動くものも音もない静の空間のはずなのに、激しさの名残があるのは、この場にいる者の心に火を灯したからだろうか。
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