スルドの声(反響) segunda rezar

桜のはなびら

文字の大きさ
上 下
107 / 215

プレゼンターがんこ(LINK:primeira desejo 94)

しおりを挟む
 プレゼンターとしてがんこを呼ぶと、緊張した面持ちの妹は元気な声で返事をし、勢いよく立ち上がった。
 硬さが身体を覆っているような印象は拭えないが、初々しく微笑ましい。
 ひとは感情の生き物だ。単なる数値での判断ではなく、感覚の良し悪しも拠り所にしてひとが判断をするのならば、感情を完全に切り離すのは難しい。
 長けているなどの印象を持たれるよりも、内容を聞き取り理解する上でさほどの影響がないのであれば、好感が持て、応援したくなるような印象を与えた方が良いだろう。

 簡単な自己紹介を終えたがんこは、一旦言葉を区切って深呼吸をする。

 ああ、初々しくて良いなぁ。

「この企画は、『阿波ゼルコーバ』のファン感謝祭に来られるファンの方を対象に、感謝祭内のパフォーマンスにて、選手の普段見られない姿などを楽しんでいただくことで、ファン感謝祭の効果を高めることを目的としています」

 あぁ、真面目なこと言ってるぅ。
 かわいー。
 まあ台本通りなのだけど。

 さて、安達さんはどうだろう?
 頷きながら資料を見、話すがんちゃんを見る。
 良い聴き手だと思った。

「ファン満足度を高めることで得られる具体的な効果は四つです。
ファンのチームへの帰属意識を高める。
満足したファンによる発信による二次的、三次的な広報効果とブランディング効果。
イベント自体の成功による次回以降のイベントへの期待値を高め、商業的成功がよりしやすくなる土台を作る効果。イベント自体の経費減と収益増に繋がります」

 うわぁ、数字で説明してるぅ!
 プレゼンっぽいー。
 かーわいー。
 まあ、台本通りなのだけど。


 プレゼンの内容は、『阿波ゼルコーバ』やスポンサーである『姫田グループ』にもたらしうる効果について伝え、具体的な手法として、サッカーやサッカー選手と親和性のあるサンバという文化を用いてファン感謝祭を盛り上げるというもの。
 予算感と経済効果については根拠も具体的に示す。
 もちろん、大前提として披露するものが観客に楽しんでもらえるものになっていること。

 この辺りがわかりやすく網羅されているのだ。
 安達さんの反応の良さは、聞き手への配慮だけではないと思えた。

 資料と語りで、数値の根拠などは理解してもらえたはずだ。
「楽しさ」に関しても説得力は持たせてある。
 ただし、「楽しさ」は理屈の部分もあるにはあるが、つまるところは感情が動くかどうかだ。これは机上の資料だけでは足らない。
 だからこそ用意した実演にて、「実感」してもらわなくては。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

ポエヂア・ヂ・マランドロ 風の中の篝火

桜のはなびら
現代文学
 マランドロはジェントルマンである!  サンバといえば、華やかな羽飾りのついたビキニのような露出度の高い衣装の女性ダンサーのイメージが一般的だろう。  サンバには男性のダンサーもいる。  男性ダンサーの中でも、パナマハットを粋に被り、白いスーツとシューズでキメた伊達男スタイルのダンサーを『マランドロ』と言う。  サンバチーム『ソール・エ・エストレーラ』には、三人のマランドロがいた。  マランドロのフィロソフィーを体現すべく、ダンスだけでなく、マランドロのイズムをその身に宿して日常を送る三人は、一人の少年と出会う。  少年が抱えているもの。  放課後子供教室を運営する女性の過去。  暗躍する裏社会の住人。  マランドロたちは、マランドラージェンを駆使して艱難辛苦に立ち向かう。  その時、彼らは何を得て何を失うのか。 ※表紙はaiで作成しました。

ナースコール

wawabubu
青春
腹膜炎で緊急手術になったおれ。若い看護師さんに剃毛されるが…

バレー部入部物語〜それぞれの断髪

S.H.L
青春
バレーボール強豪校に入学した女の子たちの断髪物語

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

太陽と星のバンデイラ

桜のはなびら
現代文学
〜メウコラソン〜 心のままに。  新駅の開業が計画されているベッドタウンでのできごと。  新駅の開業予定地周辺には開発の手が入り始め、にわかに騒がしくなる一方、旧駅周辺の商店街は取り残されたような状態で少しずつ衰退していた。  商店街のパン屋の娘である弧峰慈杏(こみねじあん)は、店を畳むという父に代わり、店を継ぐ決意をしていた。それは、やりがいを感じていた広告代理店の仕事を、尊敬していた上司を、かわいがっていたチームメンバーを捨てる選択でもある。  葛藤の中、相談に乗ってくれていた恋人との会話から、父がお店を継続する状況を作り出す案が生まれた。  かつて商店街が振興のために立ち上げたサンバチーム『ソール・エ・エストレーラ』と商店街主催のお祭りを使って、父の翻意を促すことができないか。  慈杏と恋人、仕事のメンバーに父自身を加え、計画を進めていく。  慈杏たちの計画に立ちはだかるのは、都市開発に携わる二人の男だった。二人はこの街に憎しみにも似た感情を持っていた。  二人は新駅周辺の開発を進める傍ら、商店街エリアの衰退を促進させるべく、裏社会とも通じ治安を悪化させる施策を進めていた。 ※表紙はaiで作成しました。

処理中です...