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入城(LINK:primeira desejo 90)
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大手町駅の改札を出た私たちは、それぞれまあまあの大きい荷物を持って目的の出口へと向かっていた。
がんちゃんと私はスルド、ほづみとひいは衣装の入った大きいコストコのショッピングバッグだ。大きさもだが、羽根が嵩張る上繊細な扱いが必要なため、容量の大きいバッグというか袋は必須だ。ちなみに少し羽根ははみ出している。
大手町の出口はたくさんある。
向かうと言っても、私が先導しみんながついてくるって構図だ。
向かうは『姫田グループ』本社。
実は私はここに来るのは初めてではない。
自分の家のルーツなどあまり気にしたことはなかったが、どんなものなのだろうという好奇心はあった。
進学したばかりでまだ就活には早かったが、伝手を使って『株式会社姫田(旧姫田林業)』に入った先輩に繋いでもらい、OG訪問をさせてもらったのだ。
BtoBの会社ではないから、一般のひとの認知度は小売業やメーカーなどに比べれば低いが、最近は新卒学生獲得やIR活動でテレビコマーシャルや電車内のポスター広告、デジタルサイネージ広告なんかも出していて、社名は多少知られるようになっていた。
その認知度、浸透度からすると、この自社ビルの存在感は、それなりに驚きを与えるのも頷ける。
「これがっ......がんちゃんち、か......」
ひいはなにやら間違えているが。
「ふぇー、すごいねー」
尚感嘆の声をあげ、きょろきょろしているひい。
がんちゃんもやや圧倒されている様子だが、それ以上にひいが騒いでいるので、がんちゃんは頷くだけだ。
頷くしかできないのだとしたら、少し飲まれているかもしれない。
敷地からエントランスに向かう長いエスカレーターに乗る。エレベーターを降りた先に広がるのは広大なロビーと、カウンターが果てしなく長い受付だ。
ここでもひいはきょろきょろし、がんちゃんは気圧された様子を見せている。
こんなのはただの箱だ。
入れるものが多ければその分箱が大きくなる。ただ、それだけのこと。
なにも圧倒される必要ないことを示すように、コンビニでジュースを買うくらいの気軽さで手続きをしてみせた。
規模や雰囲気なんて緊張するほどのものではないと思ってくれたら良いのだけど。
ロビーにはまばらだがそれなりにひとが滞在していた。
彼らの中にはこちらに気を向けている者もいる。
スルドケースも衣装を入れたバッグも大荷物で目立つ。羽根もはみ出ているし。
さらにがんちゃんとひいには制服のまま来てもらった。
学校終わりでそのまま来てもらったというのもあるが、多少あざくとも高校生が大人を相手に一生懸命プレゼンや実技を披露するにあたり、高校生であることを全面に押し出すなら、アイコンとしては制服が一番わかりやすい。それにシンプルにかわいい。
まあそんなこんなで、オフィスにあっては異質な私たちは注目される。
そう、注目される、目を引くのはこちらの方なのだ。
相手を圧倒するのはこちらだ。
時間を見ると十七時四十五分。約束の十五分前。
少し早いが会社や部署によっては終業の時間と重なる。エレベーターが混む可能性もあるので、受付は済ませ目当ての階まで行っておこう。
壁際にある入館証を発券する端末に、事前に担当の安達さんから送ってもらったメールに添付されていたコードを読み込ませ、人数分の入館証を発券し、手渡した。
「いこう。こっちだよ」
駅の自動改札機のような機会に入館証をかざし、私たちはエレベーターホールへと進んだ。
がんちゃんと私はスルド、ほづみとひいは衣装の入った大きいコストコのショッピングバッグだ。大きさもだが、羽根が嵩張る上繊細な扱いが必要なため、容量の大きいバッグというか袋は必須だ。ちなみに少し羽根ははみ出している。
大手町の出口はたくさんある。
向かうと言っても、私が先導しみんながついてくるって構図だ。
向かうは『姫田グループ』本社。
実は私はここに来るのは初めてではない。
自分の家のルーツなどあまり気にしたことはなかったが、どんなものなのだろうという好奇心はあった。
進学したばかりでまだ就活には早かったが、伝手を使って『株式会社姫田(旧姫田林業)』に入った先輩に繋いでもらい、OG訪問をさせてもらったのだ。
BtoBの会社ではないから、一般のひとの認知度は小売業やメーカーなどに比べれば低いが、最近は新卒学生獲得やIR活動でテレビコマーシャルや電車内のポスター広告、デジタルサイネージ広告なんかも出していて、社名は多少知られるようになっていた。
その認知度、浸透度からすると、この自社ビルの存在感は、それなりに驚きを与えるのも頷ける。
「これがっ......がんちゃんち、か......」
ひいはなにやら間違えているが。
「ふぇー、すごいねー」
尚感嘆の声をあげ、きょろきょろしているひい。
がんちゃんもやや圧倒されている様子だが、それ以上にひいが騒いでいるので、がんちゃんは頷くだけだ。
頷くしかできないのだとしたら、少し飲まれているかもしれない。
敷地からエントランスに向かう長いエスカレーターに乗る。エレベーターを降りた先に広がるのは広大なロビーと、カウンターが果てしなく長い受付だ。
ここでもひいはきょろきょろし、がんちゃんは気圧された様子を見せている。
こんなのはただの箱だ。
入れるものが多ければその分箱が大きくなる。ただ、それだけのこと。
なにも圧倒される必要ないことを示すように、コンビニでジュースを買うくらいの気軽さで手続きをしてみせた。
規模や雰囲気なんて緊張するほどのものではないと思ってくれたら良いのだけど。
ロビーにはまばらだがそれなりにひとが滞在していた。
彼らの中にはこちらに気を向けている者もいる。
スルドケースも衣装を入れたバッグも大荷物で目立つ。羽根もはみ出ているし。
さらにがんちゃんとひいには制服のまま来てもらった。
学校終わりでそのまま来てもらったというのもあるが、多少あざくとも高校生が大人を相手に一生懸命プレゼンや実技を披露するにあたり、高校生であることを全面に押し出すなら、アイコンとしては制服が一番わかりやすい。それにシンプルにかわいい。
まあそんなこんなで、オフィスにあっては異質な私たちは注目される。
そう、注目される、目を引くのはこちらの方なのだ。
相手を圧倒するのはこちらだ。
時間を見ると十七時四十五分。約束の十五分前。
少し早いが会社や部署によっては終業の時間と重なる。エレベーターが混む可能性もあるので、受付は済ませ目当ての階まで行っておこう。
壁際にある入館証を発券する端末に、事前に担当の安達さんから送ってもらったメールに添付されていたコードを読み込ませ、人数分の入館証を発券し、手渡した。
「いこう。こっちだよ」
駅の自動改札機のような機会に入館証をかざし、私たちはエレベーターホールへと進んだ。
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