スルドの声(反響) segunda rezar

桜のはなびら

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 がんちゃんとキョウさんはほどなくして戻ってきた。時間にしたら数分くらい。
 がんちゃんにとっては果てしない時間に感じただろうか? それとも、一瞬だったかな?

 がんちゃんの顔には、既に悲壮な表情は無く、嬉しそうな笑顔ってほどわかりやすくはなかったが、気持ち柔らかな印象だった。
 むしろキョウさんの方がちょっと強張った顔をしている。あれは緊張? いや、照れているのかな? だとしたら、上々の結果に終わったものと思えた。
 
 入ってきたがんちゃんをずっと見ていたから、目が合うのも必然だろう。
 戦いを終え、おそらく満足する戦果を得たであろう妹に、私は微笑んだ。がんちゃんは軽くうなずいたように見えた。

 
 照れ隠しなのか、早歩きで歩いて行くキョウさんに、小走りでついていくがんちゃん。かるがもみたいでかわいい。
 
 
 さて、今日は山場がもうひとつ。

 阿波ゼルコーバファン感謝イベントの企画に関する姫田グループへのプレゼンについて。
 ハルには概要は伝えてある。今日のミーティングで状況についてメンバーに報告する予定になっていた。

 ミーティングはハルがマイクを持ち、立って話す。メンバーは車座になってフロアに直接座って聴く構図だ。
 
 ミーティングではハルの方から計画の概要について簡単に説明をしてくれた。


 J3リーグ所属のプロサッカーチーム『阿波ゼルコーバ』のファン感謝イベントでのパフォーマンス。

 場所は徳島。

 イベントの日程は決まっている。

 獲得するためにはプレゼンの段階を経なくてはならず、プレゼンの実施日も決まっている。もう今週の話だ。

 相手はスポンサーである『姫田グループ』の担当者で、『姫田グループ』の本社ビルにて行う。


 まだ確定ではないが、遠方のイベントになるため、予定の調整をお願いしていた。

 そして。

 計画の発案者であり、この計画の仕切り役として私が紹介された。
 続けてコメントを求められる。

 私は立ち上がり、ハルの隣に行きマイクを受け取った。

「お疲れ様です。
概要は今ハルが伝えてくれましたが、サッカーチームのファン感謝イベントで、『ソルエス』がサンバで参加できないかを提案させてもらっています。
あくまでもサッカーチームや選手が主役で、うちは盛り上げ役としての役割になると思いますが、提案内容にはサンバ隊のショーの部分も盛り込みます。徳島のサンバチームやサンビスタにも協力してもらって、盛り上がるイベントになるようにハルやウリにも手伝ってもらいながら進めています。話が具体的になったら改めて発信しますね。
まずは、『姫田』へのプレゼン、頑張ってきます。
ご存知の方もいるかもしれませんが、『姫田』は私たちの家とちょっと関係があります。が、強力なパイプがあるわけではないので、そこは実力で! なんとかします!
プレゼン時には実演もする予定で、ほづみとひいに踊ってもらいます」

 ほづみとひいが座ったまま、その場で頭を下げた。
 メンバーからは拍手が送られる。ほづみは笑顔で手を振っていた。
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