スルドの声(反響) segunda rezar

桜のはなびら

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 確認すべきことはすべて終えた。
 いよいよ本題だ。


「がんちゃん、イベント出たいよね?」


 がんちゃんの答えは、「出たいけど」「無理だよ」「もう良いよ」と言ったものだった。
 私の問いが、当初出る予定だったイベントのことを指していると思ったようだ。
 確かに出てはいけないと判断された理由が無くなったのだから、再交渉の余地はある。しかしがんちゃんは、そこに再度挑む気はないらしい。その気持ちはよくわかる。おそらくあの母は、自ら下した決定を自分から覆すことはないだろう。

「祷は次のイベントでるの?」

 やはりがんこは次のイベントのことを言っていた。
 まだ入会したてということもあり、そのイベントは私も出演者としては出ず、スタッフで手伝いに行こうと思っていた。デビューはがんちゃんと揃えたい。
 がんちゃんもスタッフとして出るつもりのようなので、まずは姉妹揃ったスタッフデビューを済ませておこう。

 そんな話をしたところ、がんちゃんは納得したようだが、一方不思議そうな顔もしていた。
 どうも私が言っている「イベントに出たいか?」という問いが、次のイベントのことを指しているわけではないことをなんとなく察したのかもしれない。


「がんちゃんが出たがっていたイベントが『ソルエス』にとってのオープンイベントとしては今期最後らしいね」

 がんちゃんが頷く。その顔に少し悔しそうな表情が浮かんだ。

「てことは、しばらく『ソルエス』のスケジュールは空くんじゃない?」


 予定そのものが何も無くなるわけではないが、出演スケジュールは無くなる。

「イベントないなら、作っちゃえば良いと思わない?」

 がんちゃんは不思議そうな顔をしてこちらをみていた。

「ソルエスショーを開催するとか?」

 以前『ソルエス』は自らが主催のショーを開催していたそうだ。最近メンバーが充実して来ているので、また開催しようかという意見が出始めている。


「まあ、それもひとつだよね」

 聞いた限りの『ソルエスショー』は、実際にやるとなると準備に半年はかかるが、大掛かりなものにしなければ実現性は高い。
 しかし今回は別のやり方を進めたい。がんちゃんのデビューイベントは、できればクライアントからのオーダーに応える形で、きちんとチームに出演料が入るイベントにしたい。元々がんちゃんが出ようとしていたイベントと同様に。
 これは損なわれたものと同等のものを用意したいと思う私のエゴだが、そういう細かいこだわりは、計画を推進する意欲にも直結するから大事だと思う。

「そもそもイベントってどうやって出られるって思う?」

「お祭りとかの主催者から呼んでもらって?」

「そう。お祭りの主催者が、お祭りを盛り上げたい、観客に喜んでもらいたい、来客を増やしたいという目的を果たすために、相応しい団体を呼ぶの。ちゃんと出演料を払って」

 出演料の発生が、自己満足と他者満足の境界を分けていると思っている。
 がんちゃんには、世間が費用を払うに能うプレイヤーのひとりとしてその場にいたのだという体験をさせたかった。


「これが依頼が発生する原理原則。言い換えると、サンバ隊を呼ぶというニーズの大元ね。
これって、別に限定された範囲のことではないよね」


 お祭りやイベントは、別に地域のものに限らなくて良いし、依頼は待っているだけでなくても良い。

「地域主体でも、企業が主体でも、あらゆるイベントやお祭り、フェスなどどんなものでも、ひとを呼びたいという目的があればサンバはニーズに沿う可能性があって、それをこちらから提案しに行っても良いんじゃない?」

 つまり、こちらからアプローチをかけ、案件を獲得するということだ。
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