スルドの声(反響) segunda rezar

桜のはなびら

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眩しい昼下がり

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 暑い季節は過ぎていたが、その分西陽が眩しい季節でもある。

 大きな窓から入り込む陽射しが強いからか、この時期のこの時間になると窓のロールスクリーンをおろすルールになっているのか、スタッフさんが全窓のロールスクリーンを下ろしている。
 窓際の私の席でも、「失礼します」と声をかけて作業をしていった。

 スタッフさんと入れ替わる様に人影が近づくのに気付き、読んでいた本から顔を上げた。


「ごめん、待たせちゃった?」
 
「ううん、さっき来たばっかりだよ」

 
 デートの待ち合わせ、等ではない。
 
 ファミリーレストランのボックス席で本を読みながら季節のパフェをほぐしていた私の正面に荷物をおろし、ほづみは座った。

「なに頼む?」
 私は言いながら、読んでいた本を閉じカバンにしまった。
 
「それ良いね。わたしもそれにしよー」
 
 ほづみは慣れた様子でタッチパネルを操り、季節のパフェとドリンクバー、タッチパネルを見たまま「ポテトいる?」と私に訊き、私が頷く前にポテトやらなにやらこまごまとしたものを注文した。
 注文を終えると、「飲み物取ってくるね、ななにかとってくる?」とドリンクバーに向かった。
 ほどなく、私がお願いしたウーロン茶とコーンポタージュ、ほづみ自身のコーラを小さなトレイに乗せたほづみが戻ってきた。
 
「お昼食べた?」
 
「うん」
 
「あ、じゃああまりおなか空いてない? 頼みすぎたかな?」
 
「ううん、大丈夫だよ。ほづみはお昼食べてないの?」
 
「食べたけど、なんかおなか空いちゃって」
 無邪気な笑顔だ。
 ほづみはひいや年少の者の前ではしっかりしていて頼りがいのあるお姉さんといった感じだが、同年代や年上には感情豊かで素直に甘えたり尊敬したりするので、後輩力も高い。あらゆる人に好かれ、可愛がられるタイプだ。
 
「私もちょっとおなか空いてるからちょうど良いよ」
 昼下がりから夕方に差し掛かる時刻は確かにおなかが空いてくる。ダイエットしているわけでもないし、軽食を軽くつまみながら楽しく話せれば、建設的で生産性の高い時間となろう。
 
「いのりならそう言ってくれると思った。いのりと一緒だといつもいつのまにか小皿パーティーみたいになってるよね」ほづみはまた笑う。
 
 そういわれるとそうかも。
 年が同じほづみとは、最近練習などの『ソルエス』絡み以外の場でも会うようになっていた。話したい時は気軽に利用できるファミリーレストランやカフェを使うことが多い。

 ふたりでファミリーレストランに来ると、あれもこれもといつの間にかいろんなものを頼みがちだった。それでも残したりしたことはない。
 ふたりとも体型は細い方だと思うが、食が細いタイプではなかった。

 
 ポテトとほうれん草のソテーが届いた。
 
「食べよう! うまー」

 
 何の変哲もないメニューだが、ほづみはおいしそうに頬を緩めている。私もポテトをつついた。

 
「これはずっと食べちゃうね。話、始めないと食べてばかりになっちゃう。食べながら話そう?」
 
「そうだね」

 
 ほづみが促してくれた。本当にやり易い。話し易い。

 
 
 ほづみに相談したいことがあると連絡したのは昨日だった。

 ほづみは即都合をつけてくれた。
 私もできれば早く動きたかったので、翌日都合をつけてもらえたのはありがたかった。そのままの勢いでほづみが場所も取ってくれたのだった。
 
 
「ほづみにちょっと助けてもらいたいことがあって……」

 
 ほづみはポテトを食べながらも、前のめりになって聴いてくれた。
 
 
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