スルドの声(反響) segunda rezar

桜のはなびら

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がんちゃんの想いと決意 (LINK:primeira desejo66、67)

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 ハルの言ったことを要約すると、医者として容易に推奨はできないが、がんちゃんがなにを大事に思い、どうしたいのか。その選択を可能な限り適切なものにするための情報提供を行い、その上でがんちゃんが決めた決断は尊重するしバックアップもする。
 ただし、あくまでも未成年であるから、両親の承諾は得ること。
 そして、これはチームの代表としての言葉だろうか、そこまでして出した決断ならば、その結果の責任は取ると言っているのだ。

 その想いは熱く、真摯であった。

 だから、想いを受け取ったがんちゃんも、真剣な表情で考えている。

 やりたい、出たい、という気持ちだけで安易に結論を出したりはしない。
 がんちゃんは一生懸命考えている。
 人生と欲求とリスクの率と重要度を天秤に乗せているのだろう。
 感情や気持ちは重要な要素だが、感情や気持ちで決めるのではなく、それもまたひとつの情報、条件として精査する。
 がんちゃんがそういう感覚で物事を判断し決断するようになっているとしたら、がんちゃんは日々成長している。頼もしい限りだ。

 リスクも、周囲への影響も、がんちゃんが多角的に考えて出した結果なら、私は尊重するし、全面的に援護しよう。


 かくして、がんちゃんが出した結論は。

 やっぱり出たいというものだった。


 がんちゃんは、考えて結論を出す、だけでは終わらせていなかった。
 その結論を出すために、起こりうるリスクをケアするために、キョウさんにも相談し、その日までの過ごし方や練習の仕方など、その結論の正当性を補強する計画を作っていた。

 やっぱりがんちゃん、成長している。


 がんちゃんの計画を聞いたハルも、満足そうに微笑み、その結論を受け入れてくれたらしい。


 さあ、残るは両親からの承諾だ。

 がんちゃんは自分を低く見積もっている。
 両親から然程大切にされていないと。そんな自分ならば、特に気にされることもなく承諾は得られるだろうという目論見があるようだった。

 そこは少し難しい。両親の、特に母親の本質を理解していないと間違える。
 母の感覚を、思惑を、溺愛とネグレクトのラインで考えるべきではないのだ。
 そういう意味では、母は娘を愛してはいるのだと思う。無関心でもなければ、大切にしていないわけではない。


 母の価値観。母の思う在り方。これを当てに行かないとならないのだ。

 がんちゃんもそのことは充分すぎるほど理解しているはずなのだが。
 自分が軽んじられているという見誤った思い込みで、精彩を欠いた判断をしてしまったのか。


 がんちゃんの、諦めたような顔など見たくはなかったのに。

  
 
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