スルドの声(反響) segunda rezar

桜のはなびら

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みこと

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 バテリアの立ち位置にスルドを置く。
 ダンサーたちも思い思いに休憩をしていた。

 さて、今日は誰にしようかな。


 普段の練習では、平日ということもあり、練習後は急いで片付けや着替えをして撤収という流れになる。メンバー間の交流はしにくい。
 他のエスコーラやブロコでは、エンサイオの後は必ず飲み会をするところもあるそうだ。
 そういう意味では、『ソルエス』は練習に対してストイックで、日常的にはメンバー間の交流はしにくいチームと言えた。

 それでも練習を通してバテリアのメンバーとは自然とやりとりは生まれる。自主練やパート練の機会もあるので、関係性は作りやすかった。
 一方、ダンサーとはなかなか接点が持ちづらい。
 毎エンサイオの休憩などのちょっとした機会を使って、少しずつ交流を深めていこうと思っていた。
 ちなみにがんこはもう全員の名前と顔は一致しているらしい。早く本当の身内になるには、全員のことを知っていないと失礼だと思ったのだそうだ。

 まじめ!

 覚える方法として、予約システムで見られる登録名簿の写真と名前を暗記したらしい。
 なので実際に会話ができているひとはまだまだごく僅かだ。

 うーん、なんかズレてるがんちゃん。かわいいけど残念。


 私もがんちゃんと同様、できれば早くメンバーの顔と名前を覚えたい。人となりも理解したいと思っている。
 がんちゃんのようにお勉強方式ではなく、少しの機会でも交流を持ちながら、関係を築いていけたらなと思っていた。


 壁際に並べられているチェアに座ってスマホを見ているのは、確かみことだ。がんちゃんや柊と年齢が一緒と聞いている。がんちゃんの良き友となりそうな同年代メンバーのことは何となく把握していた。

「おつかれさま」

「あ、おつかれさまです」

 声をかけると、みことはスマホから顔をあげ、こちらを見て挨拶を返した。

「ごめんね、邪魔しちゃった?」

「いえ。つむつむしてただけなので」

 それはプレイの邪魔だったんじゃ?
 けれどみことは画面を閉じ、会話の態勢をとってくれた。

「あの、がんこちゃん大丈夫ですか?」

 しかも、がんちゃんの心配をしてくれている!
 なんて良い子だ。
 がんちゃんの様子だと、おそらくみこととはまだ友人関係と呼べるほどの関係性は築けていないだろうに。

「痛みは引いてきているみたい。でもまだ絶対安静中なんだ」

「そうなんだ。次のイベント出るの楽しみにしてたって聞いて。早く治ってほしい」

 良い子‼︎

「うん、そうだね。ありがとう、がんちゃんを心配してくれて。みことが気にしてくれてるって知ったらきっとあの子の励みになるよ」

「えっ、わたしが言ってたこと伝えるの? 恥ずかしいからそれはやだなー」

 みことは言いながら笑っている。
 二言三言交わしただけだが砕けた感じになってきた。
 もうちょっと色々と話せそうだ。



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