39 / 215
同じ道で (LINK:primeira desejo60)
しおりを挟む
エンサイオにはそれぞれで向かうことにしていたが、今日はたまたまがんちゃんとタイミングがあったので、途中の駅でがんこをピックアップして、ふたりで行くことにした。
がんこについてバテリアの練習場に入る。
先日の体験でも見かけた顔がちらほら。
がんこが挨拶して話しかけたのは確かテッチャンと呼ばれていたひとだ。
「こんばんは。ハルさん来てますか?
姉が入会するんです」
私が入会することを嬉しそうに話している。私も嬉しい。
「こんばんは、先日は体験でお世話になりました。
入会させていただこうと。改めてよろしくお願いします」
テッチャンが歓迎の言葉を残し、ダンサーの練習場にいるハルさんを呼びに行ってくれた。
「聞いたよ。入会してくれるとか?」
ハルさんが爽やかな笑顔で尋ねた。
「はい。この間の体験楽しかったですし、がんちゃんと一緒にやれたら良いなと思いまして」
ハルさんはなんだかとても満足そうだった。
ホームページからダウンロードして印刷しておいた入会申込書をハルさんに渡した。項目は記載済みだ。もちろん、保護者記載欄は保護者に記載してもらっている。
ハルさんからは入会に関する簡単な説明を受けた。この後の合同練習前のミーティングでみんなに紹介してくれるという。
それまではチカさんが基礎の稽古をつけてくれるそうだ。
「手続き終わったよ。あ、キョウさん、この間はいろいろとありがとうございました」
入会の儀(書類を渡しただけだけど)を終え、がんこの元に戻った。
がんこはキョウさんと話していた。
「オオ、入会すンだってナ。改めてよろしく」
小声で、「あの日のお夕飯、もしかしてがんこご馳走になったんじゃ?」とたずねると、「気にすンな」と軽くかわされてしまった。ご厚意に改めてお礼を言った。
「祷もスルドやるんだよね? キョウさんが教えるの?」
「私の先生はチカさんだって。良かったね」
がんこはキョウさんに尋ねたようだが、答えを知っているのは私だから答えておいた。
「おりゃーヨ、がんこ、オメーで手一杯だかンな」
がんちゃん気付いてるかな?
自分が嬉しそうな顔してることに。
「だって? 良かったじゃない」
がんちゃんが嬉しそうだと、私も嬉しくなる。
「がんこは来月のイベントデビュー目指して頑張ってンけどヨ、祷はどーすンよ?」
イベントか。がんちゃんもデビューすると言うし、一緒にデビューするのは心踊る。
出てみたいと思うが、この前の体験で聴いた打楽器だけのアンサンブル。なかなかに奥が深そうだと思った。
もし私が出ることになったら。
少し前までなら、私に追いつかれたと言う思いを燻らせ、がんちゃんはイベント当日を迎えたことだろう。
そして少し前の私は、がんちゃんに憂えのない環境にするか、敢えて負荷を与えるか。
このカードをがんちゃんのために、適切な切り方をしたはずだ。私の気持ちは差し置いて。
でも今は、私の気持ちで決めようと思う。
出たい気持ちはあるが、しっかりと技術を修めて自信を持って出たいという気持ちの方が強い。
「初心者ですから、ちょっと難しいなと思っています。
もし皆さんのご迷惑にならない状況になれてたら出てみたいです」
「なーに、すべては『気持ち』次第ヨ。出たい気持ちがあンならなんとかならぁ。
チカとよく話してヨ、出るつもりで練習したらイイ。
がんこも負けてらンねーな? 早速練習すっか」
「うん!」
笑顔で答えた私に、キョウさんも良い笑顔で前向きな答えをくれた。
その後促されたがんちゃんも眩しい笑顔で頷き、ふたりで練習に入った。
私はチカさんに改めて挨拶し、師事させてもらうことをお願いした。
チカさんと準備をしていたら、がんちゃんが鳴らす音が聞こえて来た。
この前の体験で実際に叩いてみて、その後の合同練習でバテリアの演奏を聴いたから、少しはわかる。
がんちゃん、かなり上手なんじゃない?
がんこについてバテリアの練習場に入る。
先日の体験でも見かけた顔がちらほら。
がんこが挨拶して話しかけたのは確かテッチャンと呼ばれていたひとだ。
「こんばんは。ハルさん来てますか?
姉が入会するんです」
私が入会することを嬉しそうに話している。私も嬉しい。
「こんばんは、先日は体験でお世話になりました。
入会させていただこうと。改めてよろしくお願いします」
テッチャンが歓迎の言葉を残し、ダンサーの練習場にいるハルさんを呼びに行ってくれた。
「聞いたよ。入会してくれるとか?」
ハルさんが爽やかな笑顔で尋ねた。
「はい。この間の体験楽しかったですし、がんちゃんと一緒にやれたら良いなと思いまして」
ハルさんはなんだかとても満足そうだった。
ホームページからダウンロードして印刷しておいた入会申込書をハルさんに渡した。項目は記載済みだ。もちろん、保護者記載欄は保護者に記載してもらっている。
ハルさんからは入会に関する簡単な説明を受けた。この後の合同練習前のミーティングでみんなに紹介してくれるという。
それまではチカさんが基礎の稽古をつけてくれるそうだ。
「手続き終わったよ。あ、キョウさん、この間はいろいろとありがとうございました」
入会の儀(書類を渡しただけだけど)を終え、がんこの元に戻った。
がんこはキョウさんと話していた。
「オオ、入会すンだってナ。改めてよろしく」
小声で、「あの日のお夕飯、もしかしてがんこご馳走になったんじゃ?」とたずねると、「気にすンな」と軽くかわされてしまった。ご厚意に改めてお礼を言った。
「祷もスルドやるんだよね? キョウさんが教えるの?」
「私の先生はチカさんだって。良かったね」
がんこはキョウさんに尋ねたようだが、答えを知っているのは私だから答えておいた。
「おりゃーヨ、がんこ、オメーで手一杯だかンな」
がんちゃん気付いてるかな?
自分が嬉しそうな顔してることに。
「だって? 良かったじゃない」
がんちゃんが嬉しそうだと、私も嬉しくなる。
「がんこは来月のイベントデビュー目指して頑張ってンけどヨ、祷はどーすンよ?」
イベントか。がんちゃんもデビューすると言うし、一緒にデビューするのは心踊る。
出てみたいと思うが、この前の体験で聴いた打楽器だけのアンサンブル。なかなかに奥が深そうだと思った。
もし私が出ることになったら。
少し前までなら、私に追いつかれたと言う思いを燻らせ、がんちゃんはイベント当日を迎えたことだろう。
そして少し前の私は、がんちゃんに憂えのない環境にするか、敢えて負荷を与えるか。
このカードをがんちゃんのために、適切な切り方をしたはずだ。私の気持ちは差し置いて。
でも今は、私の気持ちで決めようと思う。
出たい気持ちはあるが、しっかりと技術を修めて自信を持って出たいという気持ちの方が強い。
「初心者ですから、ちょっと難しいなと思っています。
もし皆さんのご迷惑にならない状況になれてたら出てみたいです」
「なーに、すべては『気持ち』次第ヨ。出たい気持ちがあンならなんとかならぁ。
チカとよく話してヨ、出るつもりで練習したらイイ。
がんこも負けてらンねーな? 早速練習すっか」
「うん!」
笑顔で答えた私に、キョウさんも良い笑顔で前向きな答えをくれた。
その後促されたがんちゃんも眩しい笑顔で頷き、ふたりで練習に入った。
私はチカさんに改めて挨拶し、師事させてもらうことをお願いした。
チカさんと準備をしていたら、がんちゃんが鳴らす音が聞こえて来た。
この前の体験で実際に叩いてみて、その後の合同練習でバテリアの演奏を聴いたから、少しはわかる。
がんちゃん、かなり上手なんじゃない?
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説

ポエヂア・ヂ・マランドロ 風の中の篝火
桜のはなびら
現代文学
マランドロはジェントルマンである!
サンバといえば、華やかな羽飾りのついたビキニのような露出度の高い衣装の女性ダンサーのイメージが一般的だろう。
サンバには男性のダンサーもいる。
男性ダンサーの中でも、パナマハットを粋に被り、白いスーツとシューズでキメた伊達男スタイルのダンサーを『マランドロ』と言う。
サンバチーム『ソール・エ・エストレーラ』には、三人のマランドロがいた。
マランドロのフィロソフィーを体現すべく、ダンスだけでなく、マランドロのイズムをその身に宿して日常を送る三人は、一人の少年と出会う。
少年が抱えているもの。
放課後子供教室を運営する女性の過去。
暗躍する裏社会の住人。
マランドロたちは、マランドラージェンを駆使して艱難辛苦に立ち向かう。
その時、彼らは何を得て何を失うのか。
※表紙はaiで作成しました。

ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

サンバ大辞典
桜のはなびら
エッセイ・ノンフィクション
サンバチーム『ソール・エ・エストレーラ』の案内係、ジルによるサンバの解説。
サンバ。なんとなくのイメージはあるけど実態はよく知られていないサンバ。
誤解や誤って伝わっている色々なイメージは、実際のサンバとは程遠いものも多い。
本当のサンバや、サンバの奥深さなど、用語の解説を中心にお伝えします!

スルドの声(嚶鳴) terceira homenagem
桜のはなびら
現代文学
大学生となった誉。
慣れないひとり暮らしは想像以上に大変で。
想像もできなかったこともあったりして。
周囲に助けられながら、どうにか新生活が軌道に乗り始めて。
誉は受験以降休んでいたスルドを再開したいと思った。
スルド。
それはサンバで使用する打楽器のひとつ。
嘗て。
何も。その手には何も無いと思い知った時。
何もかもを諦め。
無為な日々を送っていた誉は、ある日偶然サンバパレードを目にした。
唯一でも随一でなくても。
主役なんかでなくても。
多数の中の一人に過ぎなかったとしても。
それでも、パレードの演者ひとりひとりが欠かせない存在に見えた。
気づけば誉は、サンバ隊の一員としてスルドという大太鼓を演奏していた。
スルドを再開しようと決めた誉は、近隣でスルドを演奏できる場を探していた。そこで、ひとりのスルド奏者の存在を知る。
配信動画の中でスルドを演奏していた彼女は、打楽器隊の中にあっては多数のパーツの中のひとつであるスルド奏者でありながら、脇役や添え物などとは思えない輝きを放っていた。
過去、身を置いていた世界にて、将来を嘱望されるトップランナーでありながら、終ぞ栄光を掴むことのなかった誉。
自分には必要ないと思っていた。
それは。届かないという現実をもう見たくないがための言い訳だったのかもしれない。
誉という名を持ちながら、縁のなかった栄光や栄誉。
もう一度。
今度はこの世界でもう一度。
誉はもう一度、栄光を追求する道に足を踏み入れる決意をする。
果てなく終わりのないスルドの道は、誉に何をもたらすのだろうか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる