スルドの声(反響) segunda rezar

桜のはなびら

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同じ道で  (LINK:primeira desejo60)

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 エンサイオにはそれぞれで向かうことにしていたが、今日はたまたまがんちゃんとタイミングがあったので、途中の駅でがんこをピックアップして、ふたりで行くことにした。

 がんこについてバテリアの練習場に入る。
 先日の体験でも見かけた顔がちらほら。
 がんこが挨拶して話しかけたのは確かテッチャンと呼ばれていたひとだ。

「こんばんは。ハルさん来てますか?
姉が入会するんです」

 私が入会することを嬉しそうに話している。私も嬉しい。

「こんばんは、先日は体験でお世話になりました。
入会させていただこうと。改めてよろしくお願いします」

 テッチャンが歓迎の言葉を残し、ダンサーの練習場にいるハルさんを呼びに行ってくれた。



「聞いたよ。入会してくれるとか?」

 ハルさんが爽やかな笑顔で尋ねた。

「はい。この間の体験楽しかったですし、がんちゃんと一緒にやれたら良いなと思いまして」

 ハルさんはなんだかとても満足そうだった。

 ホームページからダウンロードして印刷しておいた入会申込書をハルさんに渡した。項目は記載済みだ。もちろん、保護者記載欄は保護者に記載してもらっている。

 ハルさんからは入会に関する簡単な説明を受けた。この後の合同練習前のミーティングでみんなに紹介してくれるという。
 それまではチカさんが基礎の稽古をつけてくれるそうだ。



「手続き終わったよ。あ、キョウさん、この間はいろいろとありがとうございました」

 入会の儀(書類を渡しただけだけど)を終え、がんこの元に戻った。
 がんこはキョウさんと話していた。

「オオ、入会すンだってナ。改めてよろしく」

 小声で、「あの日のお夕飯、もしかしてがんこご馳走になったんじゃ?」とたずねると、「気にすンな」と軽くかわされてしまった。ご厚意に改めてお礼を言った。


「祷もスルドやるんだよね? キョウさんが教えるの?」

「私の先生はチカさんだって。良かったね」

 がんこはキョウさんに尋ねたようだが、答えを知っているのは私だから答えておいた。


「おりゃーヨ、がんこ、オメーで手一杯だかンな」

 がんちゃん気付いてるかな?
 自分が嬉しそうな顔してることに。

「だって? 良かったじゃない」

 がんちゃんが嬉しそうだと、私も嬉しくなる。


「がんこは来月のイベントデビュー目指して頑張ってンけどヨ、祷はどーすンよ?」


 イベントか。がんちゃんもデビューすると言うし、一緒にデビューするのは心踊る。

 出てみたいと思うが、この前の体験で聴いた打楽器だけのアンサンブル。なかなかに奥が深そうだと思った。

 もし私が出ることになったら。
 少し前までなら、私に追いつかれたと言う思いを燻らせ、がんちゃんはイベント当日を迎えたことだろう。
 そして少し前の私は、がんちゃんに憂えのない環境にするか、敢えて負荷を与えるか。
 このカードをがんちゃんのために、適切な切り方をしたはずだ。私の気持ちは差し置いて。

 でも今は、私の気持ちで決めようと思う。
 出たい気持ちはあるが、しっかりと技術を修めて自信を持って出たいという気持ちの方が強い。

「初心者ですから、ちょっと難しいなと思っています。
もし皆さんのご迷惑にならない状況になれてたら出てみたいです」

「なーに、すべては『気持ち』次第ヨ。出たい気持ちがあンならなんとかならぁ。
チカとよく話してヨ、出るつもりで練習したらイイ。
がんこも負けてらンねーな? 早速練習すっか」

「うん!」

 笑顔で答えた私に、キョウさんも良い笑顔で前向きな答えをくれた。
 その後促されたがんちゃんも眩しい笑顔で頷き、ふたりで練習に入った。


 私はチカさんに改めて挨拶し、師事させてもらうことをお願いした。
 チカさんと準備をしていたら、がんちゃんが鳴らす音が聞こえて来た。

 この前の体験で実際に叩いてみて、その後の合同練習でバテリアの演奏を聴いたから、少しはわかる。
 がんちゃん、かなり上手なんじゃない?

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