28 / 215
拒否反応(LINK:primeira desejo42)
しおりを挟む
楽器奏者たちが、こちらを多少気にしつつ、準備したり音を出したりしている。
まだそれほど人数が多いわけではなかったが、何種類もの楽器があって多彩だ。また、見たこともない楽器で興味深い。
会話の流れで、そのようなことを言い、軽く体験についても触れてみる。
体験をするには事前の予約が必要との記載があったが、手続きや準備のためというよりも、受付に関するオペレーション上の兼ね合いだろう。
今のわたしのように、既に身元が知れていて、ある意味受付が終わっているような状態の場合はどうだろうか。杓子定規に原則NGとされてしまうだろうか。
「ハル坊、別に構わねーだろ? ちょっとやってみるか?」
キョウさんの言葉にハルさんも嬉しそうに頷いている。
「どうせならがんちゃんと同じ楽器やりたいですね。体験だけじゃなくて、一緒に演奏できたら楽しいだろうなぁ」
思った通り、それほど厳粛ではなく、体験はさせてもらえそうだった。
興味を持ったのも体験してみたいのも、ついでに言えばがんこと同じ楽器をやってみたいというのも、本音だ。
但し、それをわざわざ今この場で口にしてもたらされる波及効果はある程度想定してある。事態が起こりうることを理解していながらも、手を打ったのには意図がある。
「やだ! なんで⁉︎
祷、他になんでもあるじゃん‼︎ なんでっ......なんでわたしのっ......!」
私の言葉に、強い拒絶反応を示すがんこ。
反応は予定通り。その強さはやや想定を上回っているか。
そうであるなら、なおさら必要なことだ。
このサークルの人たちと少し話をして、練習風景などの雰囲気を見て、良いサークルなのだろうと思った。
がんこを任せて問題ないと思う。大人も多く、同世代のみで構成されている学校や部活では体験できない学びの機会を得るだろう。
がんこ自身が、気に入っているように見えたのも嬉しい。
あんなになにも続かなかったがんちゃんが、夢中になれる何かを見つけたのだ。
この強い拒絶からも、がんちゃんがスルドという楽器の演奏、というよりも、このサークルに対して愛着を持っているのが良くわかる。或いは、執着か。
強く興味を持てる何かを見つけたがんちゃん。
そんながんちゃんにこそ、超えて欲しいことがあった。
いつか、どこかで、超えて欲しいと思っていたこと。
その機会は、今日、ここでなのだと思った。
まだそれほど人数が多いわけではなかったが、何種類もの楽器があって多彩だ。また、見たこともない楽器で興味深い。
会話の流れで、そのようなことを言い、軽く体験についても触れてみる。
体験をするには事前の予約が必要との記載があったが、手続きや準備のためというよりも、受付に関するオペレーション上の兼ね合いだろう。
今のわたしのように、既に身元が知れていて、ある意味受付が終わっているような状態の場合はどうだろうか。杓子定規に原則NGとされてしまうだろうか。
「ハル坊、別に構わねーだろ? ちょっとやってみるか?」
キョウさんの言葉にハルさんも嬉しそうに頷いている。
「どうせならがんちゃんと同じ楽器やりたいですね。体験だけじゃなくて、一緒に演奏できたら楽しいだろうなぁ」
思った通り、それほど厳粛ではなく、体験はさせてもらえそうだった。
興味を持ったのも体験してみたいのも、ついでに言えばがんこと同じ楽器をやってみたいというのも、本音だ。
但し、それをわざわざ今この場で口にしてもたらされる波及効果はある程度想定してある。事態が起こりうることを理解していながらも、手を打ったのには意図がある。
「やだ! なんで⁉︎
祷、他になんでもあるじゃん‼︎ なんでっ......なんでわたしのっ......!」
私の言葉に、強い拒絶反応を示すがんこ。
反応は予定通り。その強さはやや想定を上回っているか。
そうであるなら、なおさら必要なことだ。
このサークルの人たちと少し話をして、練習風景などの雰囲気を見て、良いサークルなのだろうと思った。
がんこを任せて問題ないと思う。大人も多く、同世代のみで構成されている学校や部活では体験できない学びの機会を得るだろう。
がんこ自身が、気に入っているように見えたのも嬉しい。
あんなになにも続かなかったがんちゃんが、夢中になれる何かを見つけたのだ。
この強い拒絶からも、がんちゃんがスルドという楽器の演奏、というよりも、このサークルに対して愛着を持っているのが良くわかる。或いは、執着か。
強く興味を持てる何かを見つけたがんちゃん。
そんながんちゃんにこそ、超えて欲しいことがあった。
いつか、どこかで、超えて欲しいと思っていたこと。
その機会は、今日、ここでなのだと思った。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説

ポエヂア・ヂ・マランドロ 風の中の篝火
桜のはなびら
現代文学
マランドロはジェントルマンである!
サンバといえば、華やかな羽飾りのついたビキニのような露出度の高い衣装の女性ダンサーのイメージが一般的だろう。
サンバには男性のダンサーもいる。
男性ダンサーの中でも、パナマハットを粋に被り、白いスーツとシューズでキメた伊達男スタイルのダンサーを『マランドロ』と言う。
サンバチーム『ソール・エ・エストレーラ』には、三人のマランドロがいた。
マランドロのフィロソフィーを体現すべく、ダンスだけでなく、マランドロのイズムをその身に宿して日常を送る三人は、一人の少年と出会う。
少年が抱えているもの。
放課後子供教室を運営する女性の過去。
暗躍する裏社会の住人。
マランドロたちは、マランドラージェンを駆使して艱難辛苦に立ち向かう。
その時、彼らは何を得て何を失うのか。
※表紙はaiで作成しました。

ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

サンバ大辞典
桜のはなびら
エッセイ・ノンフィクション
サンバチーム『ソール・エ・エストレーラ』の案内係、ジルによるサンバの解説。
サンバ。なんとなくのイメージはあるけど実態はよく知られていないサンバ。
誤解や誤って伝わっている色々なイメージは、実際のサンバとは程遠いものも多い。
本当のサンバや、サンバの奥深さなど、用語の解説を中心にお伝えします!

スルドの声(嚶鳴) terceira homenagem
桜のはなびら
現代文学
大学生となった誉。
慣れないひとり暮らしは想像以上に大変で。
想像もできなかったこともあったりして。
周囲に助けられながら、どうにか新生活が軌道に乗り始めて。
誉は受験以降休んでいたスルドを再開したいと思った。
スルド。
それはサンバで使用する打楽器のひとつ。
嘗て。
何も。その手には何も無いと思い知った時。
何もかもを諦め。
無為な日々を送っていた誉は、ある日偶然サンバパレードを目にした。
唯一でも随一でなくても。
主役なんかでなくても。
多数の中の一人に過ぎなかったとしても。
それでも、パレードの演者ひとりひとりが欠かせない存在に見えた。
気づけば誉は、サンバ隊の一員としてスルドという大太鼓を演奏していた。
スルドを再開しようと決めた誉は、近隣でスルドを演奏できる場を探していた。そこで、ひとりのスルド奏者の存在を知る。
配信動画の中でスルドを演奏していた彼女は、打楽器隊の中にあっては多数のパーツの中のひとつであるスルド奏者でありながら、脇役や添え物などとは思えない輝きを放っていた。
過去、身を置いていた世界にて、将来を嘱望されるトップランナーでありながら、終ぞ栄光を掴むことのなかった誉。
自分には必要ないと思っていた。
それは。届かないという現実をもう見たくないがための言い訳だったのかもしれない。
誉という名を持ちながら、縁のなかった栄光や栄誉。
もう一度。
今度はこの世界でもう一度。
誉はもう一度、栄光を追求する道に足を踏み入れる決意をする。
果てなく終わりのないスルドの道は、誉に何をもたらすのだろうか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる