スルドの声(反響) segunda rezar

桜のはなびら

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仕掛けるとしたら (LINK:primeira desejo42)

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「ハルさん、すみません。先ほどお伝えした通り、出先から直接伺ったもので......がんこにも言いましたが、ついでがあって、思い立ってお伺いしたものですから、がんこには連絡せずにきてしまったのです」

 嘘では無い。出かけていたのは事実だ。
 挨拶の際にお渡しする手土産を購入するための外出だから、ここに来ることをついでと言うには無理がある気がしないでもないが。

 とにかく家族間での連絡の不備に起因するこの事態を詫びる。連絡不備が意図的だったかどうかは関係がない。事態勃発によって迷惑が生じたのだから、真摯に詫びるのは当然だ。

 もちろん、ハルさんたちはこの件に対して懸念や疑念などは持っていない。ちょっとした姉妹のすれ違いで起こった軽いアクシデントに過ぎないのだから。
 ハルさんは困ったような笑顔を浮かべて頷いている。私も表情を笑顔に戻した。

「急に私が居たものだからがんこ、驚いてしまったようで。向かう前に連絡くらい入れておくべきでした」

 ごめんね? がんこ。と、妹にも謝る。
 もうがんこが恐れていた、家族に黙って入会していた事実が露呈する状況は無くなった。が、まだ表情が硬いか?
 がんこにも会話に混ざってもらい、解きほぐそうと思ったが、ヒトミさんとキョウさんが、子どもの頃学校に母親が忘れ物を届けに来てくれたエピソードでひともりあがりしてしまった。
 これはこれで、と思い私も会話に加わる。
 和気藹々とした会話によって、空気はより軽くなってきている。あとは、タイミングを見てがんこを会話に加えるだけなのだが......。

 ここ、なのだと思った。



 わたしは、がんこには笑顔でいてほしい。
 好きなことややりたいことをみつけて、日々を燃やすように熱く、駆けるように激しく、生きてもらえたら良い。

 好きなことをやるための資格を自ら勝ち取り、やりたいことをやるための適切な努力を惜しまない。

 それはきっと、がんこの人生の糧と彩りになるはずだから。



 だから、ここ、なのだ。

 やりたいことを、堂々とやれるがんこになるために。
 好きなことを、思いっきり楽しめるがんこになるために。
 がんこには得るべきものがある。


「サンバって、奥が深いんですね。打楽器だけでこんなに種類があるなんて知りませんでした。体験って、事前に予約をしてないとできないのでしたっけ?」

 私は質問をした。ある意図を持って。

 
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