スルドの声(反響) segunda rezar

桜のはなびら

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 そうと決め、さっそく次の練習日を確認する。次の日曜日だ。
 日曜日だから楽器を持っていけると踏んで、このタイミングに限ってがんこは楽器を持ち帰ったのだろうと思うと、より確信が持てた。

 練習は日曜の十六時から二十時までの四時間。
 私の予定は全く問題ない。少し前に現地入りしよう。練習場の住所をスマホで撮影しておいた。



 練習日当日。
 がんこはまだ部屋でのんびりしているようだ。今出発すればかなり先行して現地入りできるだろう。

 免許取得のお祝いに父が買ってくれた日産ノートを起動させる。ハイブリッドモデルのコンパクトカーだ。


 生活上自動車は無くても困らず、あれば雨の日や重いものを買う時の日常使いに重宝する程度だから、軽自動車でも良いと思っていたが、母が万が一の時に軽自動車よりも頑丈な普通車にするよう勧められ、どうせならエコな方が良いかなとハイブリッドカーを選んだ。
 ノートはガソリンでエンジンを回して発電し、発電した電気で走行するので静かだ。単なる道具のひとつと思っていたが、深みのあるブルーも綺麗だし、使ってみると愛着が湧いた。

 スマホの画面に先日撮影した練習場住所画面の画像を出し、カーナビに入れ、車を出す。
 車は静かに走り出した。
 

 
 練習場は、思っているよりも大きなホールだった。
 ライブなどのイベントなども行われる規模の大きな施設だ。

 大勢の観客を収容できる大ホールの他、練習やリハーサル用の小さなホールがあり、そこで練習しているようだ。他にスタジオも同じ団体名で押さえてあることが、ロビーの電光掲示板に記されていた。

 
 少し早く到着したが、予約時間ぴったりにならないと開かないようだ。
 がんちゃんよりも早く来て、済ませておきたいことがあったのだけど目論見を誤ったか。

 四時間は練習時間としては長い。
 少し早いとはいえ、もうすぐ開始時間だが、団体が待っている様子はない。これは、四時間の中で少しずつメンバーが集まってくるといった構成なのかもしれない。
 がっつり練習プログラムが時間内で組まれているのではなく、わりとフリーな時間の使い方をする感じなのかも。

 先生なのか、代表なのか、とにかく主催の方に挨拶をしておきたい。
 その方が早く来るとは限らないのは誤算だった。

 まあ、がんこよりも先に来ていることが重要なのだから、その辺は状況で修正しながら対応しようか。
 とにかく時間になれば練習は開始されるのだ。始まっているのを確認したら、まずはそこにいる方に挨拶をしよう。
 
 
 ロビーのベンチに座っていると、ぽつぽつと入ってくる人が増えてきた。

 練習場はふた部屋とも地下にある。階段を降りていく人はサンバ団体の方だろうか。
 地下にはもうひと部屋練習場があり、そこは和太鼓の団体が押さえていた。見ただけではどちらかわからない。
 今ロビー内で確認できるひとたちは楽器を持っているようには見えない。サンバにはダンサーもいるはずだから、ダンサーかもしれない。

 と、そこで思い至った。
 私は地上の駐車場に車を停め、正面入り口から入ったが、地下にも駐車場があったはずだ。
 練習場が地下なら、楽器など重い荷物を持っていて、車で来る人たちは地下から直接練習場入りしているのかもしれない。

 
 練習の開始時間から十分程度過ぎていた。
 がんこは電車で来るから、正面から入ってくるだろう。先に入っていることに意味があるのだが、ロビーで鉢合わせでは効果が無い。

 がんちゃんはまじめだから、もういつ来てもおかしくなかった。

 
 そろそろ誰かしらかは居るだろう。
 練習着に着替えるとしたら、今行ってもみんな更衣室で誰もいないなんてこともあり得るし、音響の準備中などで邪魔になるかもしれないが、この際仕方がない。
 
 階段を降りてまず目に入ったのは小ホール。スタジオは少し奥まったところにあるようだ。
 小ホールの扉の向こうからは、まだ楽器の音などは聞こえないが、人の気配があった。
 
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