スルドの声(反響) segunda rezar

桜のはなびら

文字の大きさ
上 下
16 / 215

助け舟 (LINK:primeira desejo39)

しおりを挟む
 母は待つということを知らない。
 問えば即回答が得られて然るべきだと思っているのだ。押し黙っているがんちゃんに、明らかに苛立ちを募らせていた。

 それでも次の言葉が出ないがんちゃん。
 きっと頭の中は高速で回転しているに違いない。けれども、妙案は出てこないようだ。
 段々とがんちゃんの顔色が青褪めてきている。
 
 可哀そうに。
 あと可愛い。
 
 
 しかし、これ以上は破滅の道だ。母もがんこも、その道は進んではいけない。
 幸い、私の登場で母の注意は私にも向いている。且つ、私は問いかける形で声をかけた。
 母はがんこを見据えたままではあったが、私に回答をしようとしていた。
 
 手を打つなら、この瞬間だろう。
 
「めがみ、荷物重そうだよ。一旦部屋に行かせたら?」
 
 相手に答えさせようとしておきながら、答えようとした相手よりも先に別の質問を重ねる。
 母の意識が私に割かれた。がんこから母の目線が外れた。この隙は突かせてもらう。
 がんこには目で部屋に行くよう促す。
 
 後の先は言い方を変えればカウンターだ。
 初動からペースを握るなら先の先も悪くないが、既に事態が進行しているなら、うまく嵌ればより強力なカウンターの方が主導権を握りやすい。
 相手にはターンなど与えなくて良く、与える時は、意図した行動を相手自らにさせる時だ。
 母の意識は分散している。
 私に答えようとこちらを向いたが、部屋に行こうとしているがんこも気にしていて、何か言おうとしている。
 
 母のターンなどない。私はもう一手打つ。

 
「あ、もうこんな時間。めがみ、早くお風呂入って寝ちゃいなね。私もそろそろ寝ないと。お母さんも最近疲れてない? 今日は休もう」
 
 これで母のやり取りの対象は私に変わった。
 さて、後顧の憂いを無くすための仕上げだ。
 要は母の懸念がすべてに於いて払拭されさえすれば良いのだ。
 
 私は母に、めがみとは私が話しとくよと伝えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サンバ大辞典

桜のはなびら
エッセイ・ノンフィクション
サンバチーム『ソール・エ・エストレーラ』の案内係、ジルによるサンバの解説。 サンバ。なんとなくのイメージはあるけど実態はよく知られていないサンバ。 誤解や誤って伝わっている色々なイメージは、実際のサンバとは程遠いものも多い。 本当のサンバや、サンバの奥深さなど、用語の解説を中心にお伝えします!

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

将棋部の眼鏡美少女を抱いた

junk
青春
将棋部の青春恋愛ストーリーです

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

借金した女(SМ小説です)

浅野浩二
現代文学
ヤミ金融に借金した女のSМ小説です。

ポエヂア・ヂ・マランドロ 風の中の篝火

桜のはなびら
現代文学
 マランドロはジェントルマンである!  サンバといえば、華やかな羽飾りのついたビキニのような露出度の高い衣装の女性ダンサーのイメージが一般的だろう。  サンバには男性のダンサーもいる。  男性ダンサーの中でも、パナマハットを粋に被り、白いスーツとシューズでキメた伊達男スタイルのダンサーを『マランドロ』と言う。  サンバチーム『ソール・エ・エストレーラ』には、三人のマランドロがいた。  マランドロのフィロソフィーを体現すべく、ダンスだけでなく、マランドロのイズムをその身に宿して日常を送る三人は、一人の少年と出会う。  少年が抱えているもの。  放課後子供教室を運営する女性の過去。  暗躍する裏社会の住人。  マランドロたちは、マランドラージェンを駆使して艱難辛苦に立ち向かう。  その時、彼らは何を得て何を失うのか。 ※表紙はaiで作成しました。

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々

yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

処理中です...