スルドの声(反響) segunda rezar

桜のはなびら

文字の大きさ
上 下
14 / 215

願子との薄い会話 (LINK:primeira desejo36)

しおりを挟む
 私に大学が楽しいかを問うがんこ。

 出会ってしまって気まずい、ではなく、気まずい思いをしてでも出会いに来た。
 それならば、目的があるはずだ。
 訊きたいことや言いたいこと、お願いごとなんかがあるならあり得る行動だ。
 
 しかしその質問は、どうしても言いたいことでも訊きたいことでもない内容だった。
 情報を得るための手段としての質問ではなく、質問すること自体が目的となっている質問。
 
 それが意図していることは。
 とにかく何でも良いから話しかける必要があったということだろうか。

 何でもいいから話しかけたい、ではなさそうだ。それなら表情はもう少し前のめりというか、勢いがあるはずだ。

 気まずい表情は、どちらかと言えば後ろに下がりがちなものを背を押されて前に出てきてしまったという印象だ。だから、必要があったという由来の方が可能性は高いだろう。
 
 
 質問の内容は薄い。
 自然、交わされるやり取りは溶けて消える空気のようなもの。目に見えて何かが残るようなものではない。
 
 本来、姉妹のやり取りなんてそんなもので良いのだ。目に見えて何かを残して等いなくても。


 ひとは空気が無くては生きていけない。
 無意識な呼吸のように交わされる会話が、本当は大切なのだ。

 
 
 薄い内容。
 もともと無理をしていたがんちゃん。

 貴重なおしゃべりの時間はすぐに終わってしまう。

 私のトーク力でこの得難い時間を延ばすことはできる。
 でも、この時間はがんちゃんが作り、がんちゃんが終わらせるから貴重なのだ。

 物足りないくらいで終わる。
 それがごちそうの味わい方というものだろう。

 
 
「ありがとう。ココアもごちそうさま」
 がんちゃんは食器を片付け、自室へと戻っていった。
 

 
 私に話しかけたい、ではなく、話しかけた方が良いと思うなにかがあったのか。

 がんちゃんは今日、学校でできた友だちの家に呼ばれ、遊びに行っていたようだ。

 友だちの自宅にお邪魔したのだから、ご家族ともお会いしたのかもしれない。そこで何か思うところができたのだろうか。
 
 がんちゃんにそんな風に思わせた友だち、またはその家族。
 少なくとも、がんちゃんに悪い遊びを覚えさせるようなタイプではないと思えた。
 

 
 がんこはがんこの人生を、自ら選び、切り拓き、進んで往って欲しい。

 それが自らの手で選んだものなら、悪い結果さえも自分の人生の一部だ。

 それでも肉親の情としては、より善く在って欲しい、幸せで在って欲しいと思う。

 がんこは周囲に負の要素が少ない、健全な生き方をしているようで安心した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

ポエヂア・ヂ・マランドロ 風の中の篝火

桜のはなびら
現代文学
 マランドロはジェントルマンである!  サンバといえば、華やかな羽飾りのついたビキニのような露出度の高い衣装の女性ダンサーのイメージが一般的だろう。  サンバには男性のダンサーもいる。  男性ダンサーの中でも、パナマハットを粋に被り、白いスーツとシューズでキメた伊達男スタイルのダンサーを『マランドロ』と言う。  サンバチーム『ソール・エ・エストレーラ』には、三人のマランドロがいた。  マランドロのフィロソフィーを体現すべく、ダンスだけでなく、マランドロのイズムをその身に宿して日常を送る三人は、一人の少年と出会う。  少年が抱えているもの。  放課後子供教室を運営する女性の過去。  暗躍する裏社会の住人。  マランドロたちは、マランドラージェンを駆使して艱難辛苦に立ち向かう。  その時、彼らは何を得て何を失うのか。 ※表紙はaiで作成しました。

ナースコール

wawabubu
青春
腹膜炎で緊急手術になったおれ。若い看護師さんに剃毛されるが…

バレー部入部物語〜それぞれの断髪

S.H.L
青春
バレーボール強豪校に入学した女の子たちの断髪物語

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

太陽と星のバンデイラ

桜のはなびら
現代文学
〜メウコラソン〜 心のままに。  新駅の開業が計画されているベッドタウンでのできごと。  新駅の開業予定地周辺には開発の手が入り始め、にわかに騒がしくなる一方、旧駅周辺の商店街は取り残されたような状態で少しずつ衰退していた。  商店街のパン屋の娘である弧峰慈杏(こみねじあん)は、店を畳むという父に代わり、店を継ぐ決意をしていた。それは、やりがいを感じていた広告代理店の仕事を、尊敬していた上司を、かわいがっていたチームメンバーを捨てる選択でもある。  葛藤の中、相談に乗ってくれていた恋人との会話から、父がお店を継続する状況を作り出す案が生まれた。  かつて商店街が振興のために立ち上げたサンバチーム『ソール・エ・エストレーラ』と商店街主催のお祭りを使って、父の翻意を促すことができないか。  慈杏と恋人、仕事のメンバーに父自身を加え、計画を進めていく。  慈杏たちの計画に立ちはだかるのは、都市開発に携わる二人の男だった。二人はこの街に憎しみにも似た感情を持っていた。  二人は新駅周辺の開発を進める傍ら、商店街エリアの衰退を促進させるべく、裏社会とも通じ治安を悪化させる施策を進めていた。 ※表紙はaiで作成しました。

処理中です...