スルドの声(反響) segunda rezar

桜のはなびら

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成長する願子 小学校高学年〜中学生

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 小学校高学年にもなると、いつしか「おねえちゃん」とは呼ばれなくなくなっていた。
 私を「祷」と名前で呼ぶ妹の声に、もう甘えるような色はついていなかった。

 願子から私に話しかけることは余程の事情が無い限り無くなった。
 私から話しかければ答えはするが返事のみで、会話のラリーを続ける気は見受けられない。
 明らかに不機嫌な態度を取ったりはしないが、素っ気なく淡々としている。
 
 かわいい。
 
 
 中学生になった願子は、受け入れと諦めに、開き直りを加え、不自由も不満も受け流しながら、多少の我慢をしながらも健気に真面目に生きていた。

 父はあまりこだわっていなかったが、母の意向で私と同じ中学校に入った。願子は地元の公立中学校への入学を望んでいたが一切聞き入れられなかった。
 地域では名門扱いの学校だが、ローカルな世界の中だけでのことで、母が思うほど世間に自慢できる要素にはなっていない。

 
 この頃から、願子は自らを「がんこ」「がんちゃん」と呼ばせるようになった。
 それに倣い、この頃以降の願子のことは、私もがんちゃんと呼ぶことにする。尚、今でも私がそう呼ぶと少し複雑そうな顔をされる。かわいい。

 
 がんちゃんは部活には入らなかった。
 特に興味のある部活が無かったのが大きな理由だが、少しでも私と比較されることを避けたい意向もあったようだ。
 
 友だちは多くも少なくもない。けど、友だちは部活をやっている子が多く放課後は暇そうにしていることが多かった。
 私と同じ塾には通っていたが、私と同じく週三日だ。やることが無かったがんちゃんは、塾の日数を増やしたいと母に希望を出した。
 
 母は娘には一定の水準以上の成績を求めるが、勉強漬けの生活は母の価値観には合わないようだ。
 一般的な感覚からすれば独特で、母の好みに合わせようとするなら微妙な匙加減が求められる。勿論、合わせる必要は無いから気にしなくて良いのだけど。
 私は好きに生きていたら母の好みに合う結果になっていたから問題は無かった。
 
 塾に行きたいという娘に、金銭的な理由もないのに認めない親は稀だろう。
 母は「どうせだったら習い事すれば良いのに」と不満気ながらもがんちゃんの週五の塾通いを許した。
 
 この頃から、がんちゃんは私からなるべく距離を置こうとしているのが分かった。
 
 かわいいなぁ。




 
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