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決裂
しおりを挟む(上杉 要)
落ち着きは取り戻しつつ、静かな闘志を湛えた表情のしょーちゃん。
「しかし彼女にはしなやかな芯の強さと、揺るぎの少ない心の強さがあります。確かに映とは性質的に異なる部分も多々ありますが、引力と呼べるような人を惹きつける魅力は物語の主人公に匹敵するものを持っている傑物です!」
それは言い過ぎっ……!
「そうかぁ? それなりに人を見てきたつもりだぞ、俺もよ。物事を成す人物ってのは多かれ少なかれ覇気を纏ってるもんだ。覇気ある奴ってなぁ『足引っ張らないように頑張る』なんて弱腰の保険打つような言葉なんざ吐かねえもんだろ」
しょーちゃんの言葉で、反目の立場ではありながら対話の態勢にはなった監督。
これなら、言葉を交わし続ければ着地点は見つけられるかもしれない。と思ったのだが。
「いい加減にしなさいよ! 社会人ならして当たり前のちょっとした謙遜でしょうが! 監督ってのは社会人としての配慮や常識とは無関係でやれるものなんですか? クリエイター気取りか知りませんけど、クリエイターだって社会の中で物事を構成する要素のひとつのはずです。社会の中で役割を担っている者が、社会におけるスムースな連動を意図した挙動や配慮を否定するなんて、自意識過剰なガキはどっちよ!」
要さんがやり返してしまった。
「吠えるじゃねえかクソガキコラ! それがそっちの金髪ねーちゃんが言ってた学術的どうこうってやつか? ガッコのおべんきょーでどうにかなるなら苦労ねーぞコノヤロウ。そこのうすらひょろいメスガキが物の役に立つのかどうか心配してんだこっちは! 予算も納期も限られた中で納得のいく作品を創る? 上等だ、望むところよ。だからこそ、走り始めたらやっぱ変えるなんてこたぁできねえんだよ! 始まったらよ、紙の橋だって走り抜ける覚悟はしてるさ。今しかねえんだ。石橋をたたくのは!」
うそでしょ、もう完全に悪口だよね⁉︎
ただ、まあ、意外だ。破天荒で無茶苦茶。と思いきや、慎重になるべきところはなるのか。まあ、それはそうだよな。
その慎重さを発揮する対象が、私なのは甚だ申し訳ないが、私は今ここで、何をどう証明すれば良いのだろう。そして、それを考えて実行する前に、私を差し置いて場は熱を帯びながら転がっていってしまっている。それをどうすれば良いのだろう。
「誉のどこがうすらひょろいのよっ! 結構スタイル良いんだからね!」
要さんは何を言っているのっ⁉︎
「知るかよ! ミドリムシ程にも興味沸いてこねえぞ⁉︎ だったらそのご自慢のくそボディで男に媚びたグラビアでも撮ってやがれビッチがよぉ」
さすがにひどすぎるっ! 今時まだいるの? こんな人っ!
「ちょっと、それはグラビアを仕事にしている人に失礼でしょう?」思わず参戦する芸能プロダクション社員の保科さん。
「ああん⁉︎ ちょっと誉! 話になんない、帰るよ! 祥子、無理だわこれ!」完全に切れちゃった要さん。
でも、まあ。
私も無理かなって思う。こんなにひどいこと言われながら、一緒に仕事できるとは思えない。
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