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本章

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 控室では、直前までのパフォーマンスの熱気を引き摺り、興奮冷めやらぬなか、それぞれ着替えなど撤収の準備を進めていた。
 区切りの良いタイミングで一旦締めとなる。

 代表のハルさんからは簡単な総評と、主催者からの評価が伝えられた。
 かなり満足されていて、来年もぜひにと早々に『ソルエス』の予定を押さえてくださったそうだ。

 メンバーからは歓声と拍手が上がった。

 控え室の使用時間が完全撤収期限となるので、その時間が伝えられ、打ち上げ会場と開始時間が告げられ、打ち上げ参加は任意だが、できれば参加してほしいとの言葉で締めは終わった。

 撤収期限まで時間はあるので、少しクールダウンしながらゆっくり準備する者、着替えを終えて、少し早いが打ち上げ会場に向かう者、打ち上げ開始までお祭りを楽しんでから向かう者、一部はこの後用があったり明日の仕事に備えたいなどの理由で帰宅する者、などメンバーは自由に過ごす。

 わたしは祷と打ち上げに参加することにしていた。
 はじまるまでは穂積さん、柊姉妹と一緒にお祭りを回る予定だ。
 スタッフだったわたしたちは着替えを終えているので、早速あがっている今日のイベントの動画を観たり、ほかにも上がっていないか探したりしながら、ふたりが支度を終えるのを待っていた。

「お待たせー」

 穂積さんと柊がキャリーバッグを引いている。「一緒に回って良い?」と、みこととゆうちゃんも一緒だ。

「もちろん!」

 祷が答えながら、ゆうちゃんに足の様子を尋ねている。少し痛みはあるようだが、歩くのに影響はあまり無いらしく、色々なお店を回る気満々でいるようだ。

 ゆうちゃんかわいいな。
 でも、知り合って数ヶ月も経っていないのに、初見の印象よりも大きく見える。
 これが中学生の成長速度か。次気が付いたら身長抜かれていそうだ。
 わたしは今の身長で止まってしまったのだろうか。高身長になりたいわけではないし、今の身長にさほど不満があるわけでもないけれど、もう少しだけ高くても良いかな、とは思っていた。


 六人ではしゃぎながら屋台を巡っている姿は、どこにでもいる女子学生のグループだが、屋台の売り手の方の中には、穂積さんたちがさっきのパレードやステージのサンバダンサーと気付いて、興奮気味に話しかけてくれたり、「祭りを盛り上げてくれてありがとう」と、フライドポテトを増量してくれたりした。

 そうこうしているうちに日が翳ってきた。
 日中は強い日差しで暑さを感じる場面もあったが、日の短さが今は秋の終わりであることを思い知らせてくれる。
 夜になると暑さの余韻は無く、風が吹けば肌寒さを感じるのも、今の季節を表していた。

 みんな打ち上げには出るつもりだ。
 早く室内に入ろうと、わたしたちは打ち上げ会場に向かった。




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