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本章

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「がんちゃん、今週末って何か予定入ってる?」

 ある日、柊が唐突に訊いてきた。
 部活漬けの夏休みを経てこんがりと焼けていた柊の肌の色はいまだに黒いままだ。
 
 週末はバイトの予定はなかった。つまり、何の予定もないということだ。
 柊も部活はないのだろうか? 遊びの誘いなら嬉しい。柊と出かけるのも久しぶりだ。

 訊いてきた柊に、特に何もないと伝えると、柊はA4サイズのリーフレットを出してきた。
 
「これ、うちの地元でやるお祭りなんだけど、観に来ない?」
 
 一瞬期待したような、一緒にお祭りを回るというお誘いではなかった。
 お祭りの中で行われる催しに、柊がパフォーマーとして出るのだそうだ。それを観に来ないかというお誘いだった。
 
 確か、ダンスのサークルに入ってるって言ってたっけな。
 と思いながら、リーフレットを眺めた。パフォーマンスの時間などが書かれている。
 
「うそでしょっ⁉︎」
 
 それを見たとき、思わず大声を出してしまった。

 リーフレットには、パレードに出場するサークル名と種類が記載されていた。
 マーチングバンドやチアなどの馴染みやすいものから、鎧武者のパレードというよくわからないものに混ざって、サンバチームの名前が記載されていた。
 どうやらこのお祭りのメインらしく、かなり大きく取り上げられている。

 ダンスサークルとして該当していそうなのは、このサンバのチームだけだ。
 まさかと思って紹介写真をよく見ると、チームの集合写真の右端の方に、派手な羽根を背負って満面の笑顔で写っている柊を見つけた。
 集合写真なのでひとりひとりは小さいが、柊は笑顔になると少しクシャっとした感じになって大人びた顔が途端に無邪気さを帯びる。
 舞台メイクのような濃いメイクでも、笑顔で写っているその女性が柊だとすぐに分かった。
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