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十五歳 ふたりのルイ

試みは成功?

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 あ、わかるー、とみこともカラーの話に加わってきた。

「ルイが去年作った衣装のカラーはオーダーしたんだよね?
あれ、すごく良いって思ってたんだ。ルイに合ってるって言うか」

 みことは言いながら、「わたしに合う色って何色かなぁ?」と訊いてきた。

 みことも自分のための衣装の発注を考えているらしい。
 いつも心の中で思っていたその人に対応するカラーは、それなりに合致していると思っていた。似合う色でもあるのでは無いだろうか。
 みことはリラだ。実際今着ている淡いパープルのトップスも似合っている。

「あー、うん、確かに好きかも! 衣装リラ色で考えてみようかなぁ」

「うん、みことはリラって感じだよねー。ね、わたしはー?」

 ゆうが訊いて来て、他のみんなもわたしもわたしもと訊いて来た。

 ほんの少し前まで流れていた、少しだけひんやりした空気感なんて、今はどんな感じだったかを思い出すのが難しいと感じるくらいだった。
 衣装のオーダーを考えているなら、わたしの衣装を造ってくれた実里を紹介すると言ったらまた喜んでくれた。

 アキではないが、ドライに捉えるなら、ちょっとしたカラー診断に、衣装制作の匠でありダンサーとしても有名な実里の紹介と言う実利に助けられた側面があるのは否めない。
 が、その流れになる前から既に打ち解けた雰囲気にはなっていた。

 実里の言う気負わない心持ちで、アキの言う会話を心掛けた結果、こんなにもスムーズにいくものなのかと驚いた。

 でも、それだけではないと気付いていた。
 確かにきっかけを作ったのはわたしだ。
 でも、その話題を盛り上げてくれたのはるいぷるではなかったか。
 そして、ともすればわたしの手を離れかけていた話題を、わたしの元へと戻してくれたのもるいぷるだ。
 わたしを中心に、まるで人気者のように盛り上がれたのは、彼女のさり気ない導きがあったから?
 考え過ぎかもしれないが、普段のるいぷるのノリやテンションを考えると、彼女にしては話題に入った後は大人しかったような気がする。

 わたしがひいやみこととギクシャクした時、発端となったのはるいぷると子どもたちが騒いでいたからだ。
 るいぷるのせいではなかったが、わたしの言葉に、彼女は即反応して、まずわたしに謝った。そしてすぐ、みこととひいにも謝った。巻き込んでごめんと。
 次いでえなとゆかりをフォローしつつ、自分が騒いでいたのがいけなかったのだと、その場にいた全員に示すように言っていた。
 これは、わたし対その他という構図から、わたしとるいぷる間のみの出来事に替えようとしたのでは。それをわたしが言葉を発した瞬間に反応して対応したのでは。
 もし、そこまで見極めて動く人なのだとしたら。結果その後、血気と感情に溢れる思春期のわたしたちは、るいぷるが落ち着けようとした着地にはならなかったことにも気付いていて、なんとかしたいと思っていて、さっきのやりとりが千載一遇のチャンスと見て、この計を為したのでは、なんて思ってしまう。いつもの考えすぎだろうか。

「ねー、わたしは何色?」

 相変わらずにこにこと尋ねてくるるいぷるに、わたしは初見で彼女に当てはめたゴールデンオレンジではなく、ナスタチウムオレンジと答えていた。

「ナスのオレンジ? どんなん? でも、オレンジは合う気がする!」
 ナスタチウムオレンジは、人間関係の機微を心得た、協調性の達人だ。
 
「こんにちはー」

 るいぷるの評価をそっと改めていた時、やって来たのはジアンだ。
 普段はバンデイラなど、荷物が多くなりがちなポルタだが、今日はミカはいないため、基礎的な練習をするつもりで来たのだそうだ。

「じあさぁん! 土曜日にも会えるなんて、らっきーぽんきちやで!
『ソルエス』に入って良かったぁ。さっきねぇ、わたしに似合う色るいっち教えてもらったんだぁ!」

 っ‼︎  なにあれっ、大人なのに甘えた感じ出して!
 じあって何? 慈杏はジアンでしょ。勝手に変な呼び方して!

「わたしナスみたいなチタンのオレンジですって! すってきやわぁ。今度オレンジ色の買い物行きましょーよー」

「ナスみたいなオレンジってなに?」ジアンは不思議そうに尋ねるが、いつものことだと言う風でもあった。

 ナスタチウム! あの人、訊いておいて全然覚えてないじゃない。

「良くわかんないけどルイの色のセンスは良いよね。わたしも買い物行きたいって思ってたから一緒に外出して直帰できる時どこか寄ってこうか」

 はん! 良くわかんないとか言われてるじゃん。
 そりゃそうよ。シアンブルーとオレンジは反対色なんだから。噛み合うわけがない。
 それにしても、一緒に外出して、一緒に買い物行くとか……仕事が一緒だとは知ってたけど、そんなにいつも行動を共にしてるのか。
 そして、わたしは気付きたくない事実に気づいてしまった。
 反対色は補色にもなり得るのだと。うまく嵌れば、お互いがお互いを際立たせる、最高の関係になるのだと。
 
 やっぱり、るいぷるのことは気に入らないと思った。
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