スルドの声(共鳴) terceira esperança

桜のはなびら

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深掘り

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(渡会 類)

「自分を語る、表す。ならば、好きなものを語って表現したいもの。それが前向きでよろしい」
 
 ふむ。まあそう思う。
 それにしても、急に語り口変わるなぁ。
 
「でも、嫌いなものから目を背けず、露にすることだって必要だと思うの。そんなある意味弱いところも見せて、初めて自分を理解してもらえると思うの」
 
 
「なるほど……?」
 真理ではある、のかな……?

 るいぷるとの問答にはところどころにこういうところがあるから油断できない。勝手に深掘りして深読みしてるだけかもしれないけれど。

 それはそれとして、なんだろうかこの自信満々の笑顔は。なんか腹立つ。
 
 
「のんてぃが苦手なものも教えちゃお? みんな、秘密だよ? 皆がのんてぃの秘密、共有すんのかぁ。わっくわくすんねー!」
 
 
 また急にテンションがかわる。
 しかし、苦手なものか。
 苦手なもの……うーん、なんだろう?

 
「別に秘密にしてるものは無いけど……んー、何が苦手だろ……あ、クワガタ苦手かも」
 
 特に気にしないで言われるがまま苦手なものを答えちゃったけど、これってことによっては弱点を明かしているってことだよね。
 そこまで理解が及んでも尚、別にるいぷるへの警戒心は無く、弱点を言わされたとしても嫌な気はしない。
 るいぷるって、詐欺師とかにも向いてるんじゃ……?
 
「マジでっ⁉︎ 小二男子の宝物クワガタが⁉︎ 実際五十万円くらいするやつもいるという、ひと財産築けるお宝が⁉︎」

 そんな驚く?
 確かに高額な値段がついている個体もいるかもしれないけど、苦手という人がいてもそこまで不思議な対象ではないと思うのだけれど。
 
 
「うん――あれ、なんか怖い。理由は何なんだろ……」


 考えたことなかったな。
 
 
「堅そうだから? 鋭い感じがするから、かなぁ?」
 
「そこがかっけぇと思うんだけどなぁ」
 きっとそれが、小二男子のセンスなんじゃないの? るいぷる小学生男子みたいだし。

 自己紹介の本体部分はあまり広げなかったるいぷる。クワガタ話は広げるに値すると思ったのか。
 
「まあガンダムと一緒か。あれ格好良いって思う人多いけど、なんか全部三角と四角で構成されていてなんか怖い、って見方をしたら、そういう風にも見えるしねぇ」

 これまた独特というか、よくわからない評価だな。
 ものの見方、捉え方。ってことかな。
 
「ほーかぁ、のんてぃはクワガタが怖い、と。……ほんで?」
 
「ほんで?」
 急にモードが戻ったと思ったら、「ほんで?」
 
「せや。ほんで? や」
 
 え、え、どうすれば良いんだろう?
 クワガタの話を深堀すれば良いのか? いや、「ほんで?」は「それで?」だよね。「それでどうした」とか、その話題を展開させる接続語……でも、さすがに明確な理由もなく、特にそうなったエピソードも思いつかないようなものを深堀も展開もしにくい。「ほかに?」としての意味合いもあるかな? 展開として考えれば違和感は無い?

 こんなに考えてる時点で、わたしは既にるいぷるに振り回されている。
 そしてそれは、るいぷるの手中にあると言っても良いのかもしれない。
 
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