上 下
152 / 170

マレ自己紹介終わり

しおりを挟む
 マレの本質を全員に強烈に知らしめ。

 マレの肩さと遠慮をたちどころにほぐす。

 
 もたらされたそんな効果を、端から意図して組まれていたのだとしたら、るいぷるもにーなさんも凄すぎる。どんなにふざけていても、さすが大人と言うところだろうか。

 いや、ただ大人と言うだけでそんな風になれるとは思えない。これまでに出会った先生などの大人たちの中で、あまり密に関わったことの無い相手を、これだけ深く理解し、本人や周囲の心に作用する発信ができる人なんて、居たとしてもごく一握りなのではないかと思えた。

 そう評価をし直すと、るいぷるとにーなさんが別の意味でとんでもないなと思った。
 わたしたちから見れば大人である彼女たちだって、世間から見れば社会に出て数年足らずの若者だ。世の中の二十代は、これほどまでに人の心理を読み、配慮などできるものなのだろうか。少なくともわたしはものの数年でそんな風になれるとは思えない。いや、数十年費やしたってできるものだろうか。

 正直言って、それなりの歳を重ねている大人でも、子どもじみているというか、くだらないなと思わされることもなくは無い。バイト先の客や移動中に見かける人たち、学校の一部の先生。
 わたしが見た場面なんてその人の人生の一瞬の一場面だということはわかる。
 子どもに何がわかるのかと言われれば、大人の苦労なんてわかりはしない。

 それでも、子どもにそのように思わせてしまうだけで、大人としての及第点は与えられるものなのだろうかと思う。
 翻って、ならば自分がそういう年齢になった時にどうかと言われれば、今偉そうなことを思えば思うほど、大きな石を過去のわたしから投げ返されることになりそうで怖い。

 有言実行が怖いからと、不言に逃げるのは卑怯か。
 今のわたしの感性で、良いと思ったものを目指し、悪しと思ったものにはきちんとNOを突きつけて、それをするに値する自分として生きるのだ。

 賢く素敵で面倒見の良いいのりちゃんやほまれちゃんやほづみさんはもちろん。
 ふざけているようで、傍若無人なようで、実は配慮深いのかもしれないるいぷるやにーなさん。
 この素敵な先輩たちは、指針にしよう。

 そして。
 ずっと挑み続けている、同い年、同じ遺伝子を持つ、マレ。
 さっきだって、変に躱したりせず正面から応えたマレ。

 今、一時帰国しているけど。
 それは逃げなどではなく。
 きっと、高く飛ぶための反動を溜めるための動作。
 
 マレもまた、わたしにとって最も身近な指針となる。
 その生き方を見せてもらいながら、憧れるとか嫉妬するとかではなく、わたしはわたしの人生をどう生きるのか、太く強い芯を通そう。


 
「バレエとサンバ、どう融合できるか楽しみです! じゃあ、次はのぞみだね。この流れ継がないとダメなんだからね?」


 え?

 
 少し汗をにじませながらも、涼しい顔で言ってのけるマレ。
 わたしへとつなげるその言葉を言うマレには、いたずらっ子のような笑みが浮かんでいる。

 
 えぇ……? ひどくない? わたしはマレががさつな目に合わされそうになってるんじゃと心配したりしていたのに!
 
 そして、無茶振りを超えたマレに感動すら覚えて、自分の人生を考えるくらいのことを思っていたのに!


 大仰に膨らんだ人生哲学のようなものは、無茶振りの連鎖という現実の前に早くも萎んでしまいそうだ。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。 でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。 けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。 同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。 そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

私の夫と義妹が不倫していた。義弟と四人で話し合った結果…。

ほったげな
恋愛
私の夫はイケメンで侯爵である。そんな夫が自身の弟の妻と不倫していた。四人で話し合ったところ…。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

【完結】私の小さな復讐~愛し合う幼馴染みを婚約させてあげましょう~

山葵
恋愛
突然、幼馴染みのハリーとシルビアが屋敷を訪ねて来た。 2人とは距離を取っていたから、こうして会うのは久し振りだ。 「先触れも無く、突然訪問してくるなんて、そんなに急用なの?」 相変わらずベッタリとくっ付きソファに座る2人を見ても早急な用事が有るとは思えない。 「キャロル。俺達、良い事を思い付いたんだよ!お前にも悪い話ではない事だ」 ハリーの思い付いた事で私に良かった事なんて合ったかしら? もう悪い話にしか思えないけれど、取り合えずハリーの話を聞いてみる事にした。

夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします

希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。 国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。 隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。 「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

処理中です...