スルドの声(共鳴) terceira esperança

桜のはなびら

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みことさん

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 みことさんはルイさん、ひいらぎさんと同年齢のダンサー。

 十八歳以下のサンバダンサーを、『クリアンサス』という。
 ポルトガル語でそのまま『子どもたち』という意味の言葉だ。同じ言葉を使った花もあって、なんとなく華やかで可愛らしい語感だなと思っている。

 
 他のエスコーラやブロコやフリーのサンビスタたちが『ソルエス』を評する際、クリアンサスのレベルの高さが取り沙汰されることが多い。
 既に十八を超えたほづみさんも含め、現クリアンサスたちのほとんどが幼少期から『ソルエス』に所属し、早くからチームのパフォーマンスに彩を添える存在として注目されていた。

 幼少期から取り組んでいた歴もさることながら、全員が優れたセンスと見た目を備え、損なわれることなく成長していく彼女たちは、年長組が小学生の高学年になる頃から、外部でも個々の名前が認識されるくらいの存在となっていった。
 年長組と同等のポテンシャルで、下の世代にも有力なダンサーたちが頭角を現している『ソルエス』。今尚ハイレベルな『クリアンサス』は、チームの特徴のひとつと言えた。
 

 しかしながら、そうは言っても小学生から中学生、高校生と環境が変わるごとに、クリアンサスはその人数を減らしていた。
 
 部活や受験、進学先の距離。バイト。新たな興味。彼氏ができたなんて事情なんかもあったかもしれない。
 そんな中で残った精鋭が、ルイさん、ひいらぎさん、みことさんの三人だ。
 ただ、その中で小学生の高学年からサンバを始めたみことさんは、『ソルエス』のクリアンサスの中では歴が短い。

 みことさんは卓越したセンスと身体能力で同年齢の先達に食らいつき、持ち前の美貌で、観客を魅了するという点で先達二人と引けを取らないダンサーとなっている。
 
 それでも、抜きんでた技術を持ち、ダンサーとしての魅せ方を熟知しているルイさん、圧倒的な体力と身体能力を、ルイさんに次ぐサンバ歴に加え姉のほづみさんと一緒に外部のワークショップにも積極的に参加して磨いているひいらぎさんと比較して、ダンスの技能でまだ届いていないという思いを抱えているのか、日常会話では強めな発言が目立つみことさんも、サンバの取り組み内にあっては、やや控え目な立ち位置を取ろうとする、実力が最優先のアスリート的な価値観を持っているようだった。
 
 練習やイベントでは、まだ見られないみことさんのリーダーシップを、垣間見せてくれるこの場は、なかなか貴重だ。

 あっさりしていてさっぱりとした考え方と、決断の速さ。勝手ながら、わたしの価値観と近いなと思っていて、少し憧れがあった。
 みことさんがその資質を発揮している姿が見られるのが、なんだか嬉しかった。まだあまりしゃべったこと無いけれど、この機会に仲良くなれたら良いな。
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