スルドの声(共鳴) terceira esperança

桜のはなびら

文字の大きさ
上 下
121 / 218

待ち合わせ

しおりを挟む


(望と希)

 駅に着くと、既にほまれちゃんとみことさん、入船姉妹が改札を出たところで集まっていた。
 
「こんにちはっ」
「はじめましてー」
 
 マレはわたしとほまれちゃん以外の『ソルエス』メンバーとは初対面だ。
 お互い話題に出ていて認識し合っているであろういのりちゃんとも、直接会ったことは無い。

 
「おー、のんちゃんのおねえさん!」
「わぁ。ほんとに双子だねぇ。そっくり。かわいー!!」

「マレです。仲間に入れてくれてありがとうございます! よろしくお願いします」

 
 初対面の三人とつつがなく挨拶を交わすマレの様子を、ほまれちゃんが微笑みながら見ていた。
 
 
 入船穂積と柊のダンサー姉妹。
『ソルエス』の登録名は本名をひらがなにしたもの。いのりちゃんやほまれちゃんと同じパターンだ。
 ほづみさんはいのりちゃんと、ひいらぎさんはめがみちゃんと、それぞれ同い年ということもあり姉妹同士で仲が良い。特にひいらぎさんとめがみちゃんは学校で同じクラス。

 めがみちゃんがサンバを始めたきっかけとなったのがひいらぎさんに誘われたイベントだ。
 めがみちゃんがサンバを始めたことで、いのりちゃんの入会に繋がり、いのりちゃんとめがみちゃんによってわたしが入会したのだから、ひいらぎさんが祖だ。

 
 入船姉妹は掛け値の無い美人姉妹で、雰囲気もよく似ている。
 細かく見れば、ほづみさんは洗練されていて格好良さの中に愛らしさもある韓国のアイドルや日本の民放のアナウンサーみたいで、ひいらぎさんは少々野性味のあるモデルやアスリートみたい。背も妹のひいらぎさんの方が高い。
 
 
 みことさんもひいらぎさんやめがみちゃんと同い年のダンサーだ。

 彼女も目を引くほどの見た目を有している。
 そしてその魅力を自覚し魅せ方を知っている分、天然素材感のあるひいらぎさんよりも放つ光が強い。
 身長も柊さんと同じくらい高く、ふたりが並んでいると何やら場の格調が高まったような感じになる。

 同世代ダンサーの中では最も歴は浅いものの、持ち前のセンスと魅せるという意識の高さで高レベルのダンサーに食らいついていっている。

 
 
 十八歳未満のサンバダンサーは『クリアンサス』と呼ばれる。花を意味する単語だ。

 
『ソルエス』は強豪エスコーラに較べると規模は格段に落ちる。
 それでも、昔から『ソルエス』のクリアンサスと男性ダンサーの『マランドロ』は他エスコーラからも高い評価を受けていた。

 
 幼い頃からサンバダンサーとして『ソルエス』に所属していた入船姉妹もまた、その評価の一端を担っている。
 しかし、入船姉妹やみことは子どもの頃から大人びていて、今に至っては子どもというカテゴライズには無理があるダンサーたちだ。
 見た目の良さも相俟って頭角を現し、どちらかと言えば次代を担うパシスタとして最近高い評価を得始めたようで、幼い頃は今ほど活発には参加していなかったらしい。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

太陽と星のバンデイラ

桜のはなびら
現代文学
〜メウコラソン〜 心のままに。  新駅の開業が計画されているベッドタウンでのできごと。  新駅の開業予定地周辺には開発の手が入り始め、にわかに騒がしくなる一方、旧駅周辺の商店街は取り残されたような状態で少しずつ衰退していた。  商店街のパン屋の娘である弧峰慈杏(こみねじあん)は、店を畳むという父に代わり、店を継ぐ決意をしていた。それは、やりがいを感じていた広告代理店の仕事を、尊敬していた上司を、かわいがっていたチームメンバーを捨てる選択でもある。  葛藤の中、相談に乗ってくれていた恋人との会話から、父がお店を継続する状況を作り出す案が生まれた。  かつて商店街が振興のために立ち上げたサンバチーム『ソール・エ・エストレーラ』と商店街主催のお祭りを使って、父の翻意を促すことができないか。  慈杏と恋人、仕事のメンバーに父自身を加え、計画を進めていく。  慈杏たちの計画に立ちはだかるのは、都市開発に携わる二人の男だった。二人はこの街に憎しみにも似た感情を持っていた。  二人は新駅周辺の開発を進める傍ら、商店街エリアの衰退を促進させるべく、裏社会とも通じ治安を悪化させる施策を進めていた。 ※表紙はaiで作成しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

スルドの声(交響) primeira desejo

桜のはなびら
現代文学
小柄な体型に地味な見た目。趣味もない。そんな目立たない少女は、心に少しだけ鬱屈した思いを抱えて生きてきた。 高校生になっても始めたのはバイトだけで、それ以外は変わり映えのない日々。 ある日の出会いが、彼女のそんな生活を一変させた。 出会ったのは、スルド。 サンバのパレードで打楽器隊が使用する打楽器の中でも特に大きな音を轟かせる大太鼓。 姉のこと。 両親のこと。 自分の名前。 生まれた時から自分と共にあったそれらへの想いを、少女はスルドの音に乗せて解き放つ。 ※表紙はaiで作成しました。イメージです。実際のスルドはもっと高さのある大太鼓です。

四代目 豊臣秀勝

克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。 読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。 史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。 秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。 小牧長久手で秀吉は勝てるのか? 朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか? 朝鮮征伐は行われるのか? 秀頼は生まれるのか。 秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?

スルドの声(嚶鳴) terceira homenagem

桜のはなびら
現代文学
 大学生となった誉。  慣れないひとり暮らしは想像以上に大変で。  想像もできなかったこともあったりして。  周囲に助けられながら、どうにか新生活が軌道に乗り始めて。  誉は受験以降休んでいたスルドを再開したいと思った。  スルド。  それはサンバで使用する打楽器のひとつ。  嘗て。  何も。その手には何も無いと思い知った時。  何もかもを諦め。  無為な日々を送っていた誉は、ある日偶然サンバパレードを目にした。  唯一でも随一でなくても。  主役なんかでなくても。  多数の中の一人に過ぎなかったとしても。  それでも、パレードの演者ひとりひとりが欠かせない存在に見えた。  気づけば誉は、サンバ隊の一員としてスルドという大太鼓を演奏していた。    スルドを再開しようと決めた誉は、近隣でスルドを演奏できる場を探していた。そこで、ひとりのスルド奏者の存在を知る。  配信動画の中でスルドを演奏していた彼女は、打楽器隊の中にあっては多数のパーツの中のひとつであるスルド奏者でありながら、脇役や添え物などとは思えない輝きを放っていた。  過去、身を置いていた世界にて、将来を嘱望されるトップランナーでありながら、終ぞ栄光を掴むことのなかった誉。  自分には必要ないと思っていた。  それは。届かないという現実をもう見たくないがための言い訳だったのかもしれない。  誉という名を持ちながら、縁のなかった栄光や栄誉。  もう一度。  今度はこの世界でもう一度。  誉はもう一度、栄光を追求する道に足を踏み入れる決意をする。  果てなく終わりのないスルドの道は、誉に何をもたらすのだろうか。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...