スルドの声(共鳴) terceira esperança

桜のはなびら

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ほまれちゃんの計画

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(色部 誉)

 エスコーラとは別の場所で出会っていた大人(ほまれちゃんはまだ十代だけど、大人っぽいから大人ってことで)の男女の約束事。
 そんな感じのことを、「あれ」とか「あのこと」とか、本人達だけがわかる言い方で話しているふたり。

 なにやら意味あり気でドキドキするぅ‼︎

 るいぷるも当然そんな様子を見逃すわけもなく、「おいおいおいおい、ラブコメおっぱじまったぞー!」的な感じで騒いでいて、わたしとめがみちゃんもついつい乗せられてわーきゃー囃し立ててしまった。

 多分ちゃんとした話しっぽいからあまり茶化しちゃだめかなーなんて思っていたら、アキが情けない顔で「そろそろやめて」って感じを出してきたので、るいぷるも勘弁してあげることにしたようだった。

 
 ほまれちゃんに依れば、彼女が考えているサンバの企画があるのだそうで、それの実現のために、元地場の都市開発の会社に勤めていて、今は広告代理店勤務でもあるアキに相談したいこと、もっと言えば手伝ってもらいたいことがあったという。
 尚、アキが今勤めている会社は、るいぷると同じらしい。るいぷるはポルタのジアンの職場の後輩でタンボリン奏者のアイジと同僚だそうだ。

 
「できることは手伝わせてよ」と好意的な返事をしているアキの言葉にうなずきながら、何故かるいぷるが「俊傑怪傑集いし精鋭集団。最強パワーエリートのうちらがついとるけぇ、箱舟に乗ったも同然よ!」と息巻いていた。
 何の自信とテンションだろう。あと箱舟って?  本来なら大舟だろうし、ボケなら泥舟とかだよね。この世界、滅びるん?
 そんなある意味難易度の高いボケがばら撒かれているのだ。いつの間にか勝手にほまれちゃんの相談事の当事者になっていることに関してなんて、いちいち突っ込むなんてもはや野暮なのかもしれない。

「のんてぃとガンディもお肉で良いよね?」え、めがみちゃんガンディって呼ばれてんの? なんかつよそ。

 
 るいぷるはその勢いで打ち合わせのためにのお店を予約しようとしていた。
 るいぷるが操作しているスマホの画面上には、グルメサイトでは焼き肉屋が表示されている。すごいなこの人。

 いのりちゃんや、アキの親友で以前は仕事上でも相棒だった同じマランドロのウリなど、誰の予定も訊かずに勝手に参加人数に加えて予約の操作を進めている。


 いのりちゃんは企画や運営に長けていて、直近でもチーム内では新人でありながら企画をプレゼンして企業案件をもぎ取ってきた辣腕さと剛腕さを併せ持っている。
 ウリはいのりちゃんが入っている起業系のインカレサークルの立ち上げメンバーらしく、実際起業していて現在は小規模ながら行政の案件なんかも受注しているシステムコンサルティング会社の代表をしている。
 企画を形にするという意味では適した職能の持ち主たちだ。

 
 さすがに日程くらいは合わせろとアキに言われたるいぷるは、「グループつくるー」と手際よくトークグループが組まれた。
 ここにいるメンバーや先ほど名前が挙がったメンバー以外も何名か招待されている。
 グループ名は「ほまち焼き肉打合せ軍団」わけがわからない。

「よし! これでおっけー」と、特に説明も発信せずに画面を閉じてにこにこしているるいぷる。

 多分あまり「よし!」ではない。
 事情の説明、なにもされてなくない?
 多分それ、ほまれちゃんがすることになるんだろうなぁ。

 ほまれちゃんはまだ『ソルエス』に所属したばかりで馴れてないだろうし、招待されているメンバーの全員が全員親しくなっているわけでもないだろう。
 過酷なことさせる、と思う一方、ほまれちゃんの計画はこれで一気に進む可能性が高まった。その勢い、人を巻き込む引力は、きっとほまれちゃんの助けになったとも思う。

 るいぷるのような存在は、実は結構貴重なのかもしれない。


 休憩は終わりの雰囲気になってきて、みんなそれぞれのポジションに戻りつつある。
「ふんふふーん♪ いーぬ、いーぬ、はしるいーぬー、およぐさーかなー、ささるうーにー、うーにぃぃぃいいーーー♪  ......」
 なんか変な歌を歌いながら戻っていくるいぷるを見送りながら、ほまれちゃんとめがみちゃん、わたしのスルド組も楽器を置いた場所へと戻っていった。
 
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