スルドの声(共鳴) terceira esperança

桜のはなびら

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ドッジボール

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(柳沢 望)

 絵のワークではお手伝い程度しかできなかったわたしたちは、後半のドッヂボールこそ本懐だとばかりに、美術部の子たちよりも率先してボールを積極的に獲りに行った。


 ドッジボールは小学生相手に本気になってしまったが、それでも多分わたしの方がボールをたくさんぶつけられたと思う。

 弾丸のような威力の強力なヒットも何回かあった。
 ボールを当てられた太ももはさっき確かめたときは赤かったが、そのうち痣になりそうだった。

 
(もー、脚出す格好できないじゃん)

 
 なんて思ってみても、実際はたいして気にしていない。
 運動部で脚に生傷をつくりながらも、制服のスカートを短くして堂々と脚を出している子だって何人もいる。

 そりゃあ見た目は気になるけど、人に見せるためだけに服を選んだり着こなしを考えたりしているわけではない。
 自分が気に入った格好をして、気持ちが高まるからやっているのだ。委縮して変に隠すより、多少程度なら気になられたとしても好きな格好をした方が良い。どうせ言うほど痣の有無なんて見られていない。

 それに、後悔なんて微塵もない。
 それほどまでに熱く、やり切った戦いだった。

 
 
 
「――――‼︎‼︎‼︎‼︎」
 何やら必殺技のような叫びをあげ、走りながら投じられた球を、わたしは正面で受け止める。

 渾身のボールを受けられた男の子が悔しそうに顔を歪めた。
 わたしは不敵な笑みを漏らしーー
 
「――おぉおああらぁあっ‼︎」
 まるで主人公に割と早めにやっつけられるパワータイプの悪役のような雄たけびを上げ、ハンドボールのシュートのように助走からジャンプしてボールを放った。
 この瞬間、子どもたちのヘイトはわたしに集まったようだ。

 
 良いだろう。まとめて掛かってきなさい。
 
 なお悪役の様なわたし。
 

 
 結果、ぼこぼこにされたのだが、楽しかった。
 わたしに執拗にボールをぶつけてきた生意気そうな小学生男子たちの顔が思い浮かぶ。こちらも負けじと大騒ぎしながらボールをぶつけ合った場面を思い出して、少し笑ってしまった。
 
 
 こんなに身体中に傷をつくりながら遊んだのはいつ以来だろう。

 いのりちゃんと遊んでいた頃は結構無茶をしていた気がするが、小学校高学年頃は妙に大人ぶっていて身体に傷が付くような遊び方はしなくなっていた。
 それはそれで正しいのだろうけど、たまにはこういう痛みを伴う激しい遊びで童心に帰るのも良いと思う。
 
 
 そんなわけで、心は充足しながらも身はややぼろぼろになりながら辿り着いたエンサイオでは、ご褒美が待っていた。

 予期せぬ、と言えばウソになる。以前いのりちゃんから予告はされていたのだから。
 でも、今日とは思っていなかったから、嬉しいサプライズではあった。
 
 
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