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うま

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 わたしの描いたカラカルを散々いじったかよとササ。あと一緒に絵を描いていた小学生のミヤちゃん。

 じゃあ自分らはどうなのよ、との反撃に、亀のように頑なに身を固めたカヨ。
 一同はいつの間にか加わっていた小学生男子のケイくんも一緒になってルカから絵を引き剥がし、漆黒の底から世を睨め付ける魔のような自称「ネコ」の絵を暴いたのだった。

 次はササの番だ。

「やだ、恥ずかしい」と抵抗するササから、絵を引き剥がしたわたしたちだったがーー。


 僅かな違和感。



「ーーえ」

 
 ササは、嫌がっている割に抵抗が少ないように感じたのだ。


 そんな違和感の正体を認識するや否やの瞬間に、カヨの驚愕した声が響き、表情が目に入った。

 
 ササの絵を、無言でわたしたちに見せるルカ。
 

「「「えっ……⁉︎」」」
 
 ササを抑え込んだまま、声が重なる三人。

 
「うまーっ⁉︎」
「すごっ!」
 わたしとミヤちゃんが感嘆の声を上げる。ケイくんは言葉もなく見惚れている。

 
 描かれていたのは鉛筆のみで描かれた馬。ていうかサラブレット?
 つややかな毛並みと、その下にある筋肉の陰影。
 その肉体の内側にある血管や筋繊維、骨格までも。紙の上には描かれていない生命活動の説得力が、その絵からは溢れていた。
 生き物としての形だけではない。
 さして大きくない画用紙からは、跳びださんばかりの迫力と躍動感を纏った馬が、生きているかのように描かれている。エネルギーや勢いといった、目に見えないものが、動くことのない絵から伝わってくる。

 特に絵に詳しいわけではない。
 ことさら絵に興味を持っているわけではない。

 そんなわたしが、鉛筆一本で、ほんの数分で描かれた馬の絵に。
 それも、見て描くデッサンではなく、イメージという曖昧なものを紙に表した絵に。

 心を掴まれ二の句が継げない。
 いや、わたしだけではない。

 たまげるの語源は魂消るらしい。
 文字通り、この場の全員が魂を一瞬止められてしまったようだ。


 一拍置いて、みんなの魂が蘇る。
 
「おまえっ……⁉︎ おまえぇ……っ!」
「なにが『やだ、恥ずかしい』だっ……はかりやがったな……! だじゃれみたいなリアクションしちゃったじゃんか!」
 
 わたしたちの抗議を涼しい顔で受け流しながら、「時間足りなくて線だけで終わっちゃった。恥ずかしい」などとのたまっている。

 この期に及んでまだ言うか⁉︎

 
「随分とにぎやかだね」と様子を見に来た美術部の先輩が、ササの絵を見て驚きの表情をつくり、そのままササの勧誘を始めていた。
 
 
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