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コラボ案件
しおりを挟む(柳沢 望)
ちらりとスマホを見る。メッセージは落ち着いていた。
≪双子の姉がさ、なんかでコラボしたいって≫
メッセージと併せてマレの動画アカウントのURLを送る。
ほんの少しの停滞。
ぽぼっとつく既読の文字。見た人数を表す数字がすぐにニになる。
その瞬間。
≪ちょっとっ! これ、MAREじゃん‼︎≫
驚いた様子のメッセージが届いた。
ふたりからの、文字でもわかる驚きと興奮を伴ったメッセージ。
メッセージによると,なんでも、動画撮ろうと言った話をしていた時、参考として同世代っぽいアカウントを片っ端からみていたふたり。
投稿者の情報をどこまで載せているかは投稿者次第だが、どうせならと近しいエリアの投稿者を当たっていたふたりは、もちろん誰もが知るような有名なユーチューバーのものも見ていたが、あまり強大なものを見ていても参考にならない。
素人で有名人ではないのに、結構な登録者数を集めていて、いつブレイクしても不思議ではないようなアカウントに特に注目していた。
地元や近隣エリアなら、ワンチャン知り合いや知り合いの知り合いがいるかもしれないなんて思惑もあったようだ。
いのりちゃんの動画を知っていたのもその経緯でだ。しかし、マレの動画にも目をつけていたとは思わなかった。
結果を見れば、カヨとササの企ては奏功したと言える。
≪まじで⁉︎ コラボ⁉︎ 絶対やるじゃんそんなの!≫
≪のんてぃー、なんなん⁉︎ INORIと幼馴染で? MAREの妹? 前世で有名人のマネージャーかなんかやってた?≫
すごいことのように囃し立てられているが、わたしがすごいわけではない。
誇らしさは無くは無いけれど、なんだかちょっと情けない気持ちにもなった。
≪じゃあ、マレにはおっけーって言っちゃうよ。コラボする前に少しくらい投稿しとかないとね。なんか企画考えてよ?≫
≪よしゃ、気合入ってきた!≫
≪よしゃ、更なるやる気が出て来たぞぉ!≫
更なるって。
やろうやろうと言いながら、やる気無くしてたじゃない。わたしも同じだから何も言えないけれど。
メッセージを打ちながらのマレとの会話。ちょっと失礼だったかな。マレは気にしてないようだが。
「ねぇぇ~、マレのチャンネル、クラスの子知ってたよ。やっぱすごい有名なんじゃん!」
なんとなく嬉しくて。友達に対する話し方のように話しかけた。
「え、ほんと⁉︎ それは偶然でしょー。いうほど有名ってレベルでは無いよ。何とか収益化できてきてるってくらいかな」
収益化できてるだけで充分すごいんだけど!
クラスの友だちが絶対コラボするって騒いでるよと言ったら、マレは笑っていた。少なくとも嫌な気持ちにはなっていないようだ。
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