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なにかしたい

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 マレはドラマの画面を観ながら、穏やかに語った。帰国してすぐ会いに行ったと言う人の話を。その人は,マレのバレエスクールの先輩に当たる人らしい。


「久しぶりに会って、楽しかった。いろいろ話して、気持ちが軽くなったよ」

 
 マレの心を軽やかに、晴れ晴れとさせたのは、おばあちゃんの提案だけでは無かったということだ。
 そういう人が日本に、マレの周りにいたということは嬉しかったし安心できた。

 当たり前だが、マレにはマレの人間関係がある。
 双子であっても、わたしとマレはある時期から別たれた道を進んでいるのだ。もうマレのことではわたしの与り知らないことの方が多いのかもしれない。
 それは少し寂しかった。
 マレの心を癒せるのがわたしではないことも、少し切なかった。

 わたしもわたしでマレの知らない世界で、マレの知らない人間関係の中生きているのだからお互い様だし、そもそもマレが帰国するまではむしろ疎遠な関係性だったのだ。
 例えば逆の立場なら、わたしはルカやササや、中学の時の友達と会い、そこで楽しさや安らぎを得ていたことだろう。


 マレがたまたま戻ってきた。

 特に意図していなかったとはいえ,お互いが自覚なく自分のことだけを考えた暮らしを積み重ねた結果,同じ家にいながらにして希薄になった関係性のまま、物理的にも疎遠となった双子の姉妹。

 そんな双子が,期せずして一時一緒に暮らすことになった。

 双方蟠りや鬱屈する思いを抱えてはいたけれど、環境や状況のお陰もあって今は普通の姉妹のように過ごせている。
 このことの方が偶然の産物なのに、わたしは随分と欲張りでエゴが強い。せっかくの双子。たったふたりだけの姉妹。どうせならお互い大事な存在になれたらなどと思ってしまっている。
 けれど、どうせエゴイストなら、そんな自分も肯定してみよう。

 今、たまたま良い関係性であるなら、それを当たり前のものとなるように、わたしにとってマレが、マレにとってわたしが、心を救う、または満たす存在のひとりになれるように、努力するのは良いことのはずだ。
 
「せっかくふたり揃ってるんだし、双子でなんかやりたいよね」

「そうだねぇ」
 
 チャラくてアクティブな人が言う「いつか面白いことやりましょう!」みたいな言い方になってしまった。実際、具体的に何か計画や案があるわけではない。

 でも、言葉にすることが大事なんだと思った。
 思っているだけでは実現しないことも、口にすることで意外と現実になったりするものだから。
 
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