スルドの声(共鳴) terceira esperança

桜のはなびら

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姉妹と暮らす

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(望と希)


 少しの気負いはあった。
 でも、双子の姉との生活は、始まってしまえば意外となんてことはなかった。
 

「うわー、でかー」

 
 初めて来たというマレは外観から窺い知れる広さに驚いていた。

 
「直線距離は近いのかもしれないけど、こっちって意外と来にくいよね。わたしも来たのは久しぶり」

 
 わたしたちは県下最大級の大型ショッピングモールに来ていた。
 マレの生活に必要そうなものを買うのが目的だが、せっかくなのでショッピングを楽しもうという魂胆だ。


 
「普段買い物ってどうしてたの?」


 キョロキョロしているマレに尋ねた。
 わたしは留学前のマレの生活をあまり把握していない。

 
「ほとんどネット。あとは駅前か千葉か稲毛かな。だいたいそれで事足りたし」

 
 バレエにほとんどの時間を費やしていたマレ。買い物の時間を捻出するのも難しかったのかもしれない。

 
「チャコットもこっちにあるし」

 
『チャコット』はマレが良く利用していたバレエ用品の専門店らしい。
 マレにとっての買い物とは、必要なものを購入するという、タスクとしての要素しかなかった。
 買い物を手段ではなく目的とし、買い物そのものを楽しむと言った時間を、マレは自分の人生の中から除いていた。

 
 駅からショッピングモールへの入口へは人の流れができている。
 わたしたちはそれに乗り吸い込まれるように巨大施設に入っていった。

 
「へええええ……これ全部お店かぁ」
 

 中に入ってまた感嘆の声を上げるマレ。

 千葉にも百貨店やファッションビルはあるが、敷地がこれだけ広いショッピングモールはマレに未体験の感動を与えたようだ。
 広大なショッピングモールは来場者に「広い」という印象とともに、吞み込まれたような感覚と圧倒的な物量にて、歩き、観て、回るという、これから始まる買い物に「期待に胸を膨らませる」効果を与えるのかもしれない。


 なんとなくクールな印象の双子の姉だけど、入ってすぐのところにあった店舗の通路側に置かれたハンガースタンドに掛けて陳列されているサコッシュを、もの珍しそうに手にして「かわいー」と言っている姿が微笑ましくて、彼女が留学前に一緒に生活していた頃も、少しくらい時間見つけて、こんな時間を過ごせていたら良かったと、過ぎてしまった過去を惜しんだ。
 これからの生活で、そういう時間は増やせるだろうか。

 
 わたしが通うことになった『ソルエス』の近隣にも、ここと同じショッピングモールや、少し先にここを大きく超える首都圏最大規模のショッピングモールもある。
 いつかそっちにも連れてってみよう。

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